ブックタイトル「鉄構造物の保存と修復」日本語版

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概要

「鉄構造物の保存と修復」日本語版

(3)修復および保存処置知覧特攻平和会館に展示されるまでの間に複数回修復が実施され、古い修復としては、雨水や結露などにより腐食が進んだ後部胴体下部の外板が張り替えられている(写真26)。また他にも張り替えられている外板があるが、腐食によるものか損傷によるものかは不明である。川崎重工業による修復の際に見つかった、前述の主翼両翼端内部のアルミニウム合金のリブに発生した著しい腐食は、今後も博物館内の環境で展示保管されるため腐食の進行はないと判断され、腐食箇所の修復は基本的に行わないこととした。同じく確認された第1風防の正面中央に組み込まれた風防ガラスを機体内側から押さえるためのアルミニウム合金の部品については、新たに組み込む風防ガラスを保持するには十分な強度がないと判断され、例外的にオリジナル部品を別置保管したうえでレプリカに置き換えられた。上部エンジンパネルおよび排気管カバーは、オリジナルの部品が失われ真正性に欠けたレプリカ部品が組み込まれていたため、修理の際にオリジナルの仕様を再現した新たな部品を組み込んだが、修復の考え方から塗装を行わなかったこともあり、修理終了後の収蔵庫での展示の際にレプリカの鉄製部品に錆が発生した(写真27、28)。部品に発生した錆の形状が指先の形であることから、手油により錆が誘発されたことが判ったため、無水エタノールで部品に付着した手油をふき取り、防錆油を塗布した。錆発生の原因となる結露を防ぐために、博物館の協力を得て飛燕周辺の温湿度を常にモニターしている。2.5. T-1ジェット練習機試作1号機(1)来歴当該機は昭和33年(1958)2月に戦後初の国産ジェット機として初飛行を行い、約4年間の運用の後、昭和37年(1962)1月に用途廃止となった。翌昭和38年(1963)3月から5月まで二子玉川園で開催された「春の航空博」で屋外展示された後、昭和51年(1976)までの間に福岡県に所在する航空自衛隊芦屋基地に移設され、平成13年(2001)まで屋外展示された(写真29)。平成14年(2002)にかかみがはら航空宇宙博物館に移設され、平成30年(2018)6月の現時点では、胴体および翼などの部位ごとに分解された状態で屋内保写真29芦屋基地に屋外展示されていたT-1ジェット練習機(2001年3月撮影)写真31矢印が主翼下面から地面に張られたアース線に繋がるワイヤー(2001年3月撮影)写真30かかみがはら航空宇宙科学博物館の収蔵庫で分解された状態で保管されるT-1ジェット練習機(2018年2月撮影)66第5章航空機における金属部品の腐食とその対応について