ブックタイトル「鉄構造物の保存と修復」日本語版

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概要

「鉄構造物の保存と修復」日本語版

ここでは、展示施設に引き取られた経緯や保存展示環境および腐食の発生状況などが異なる5例(表1)を修復の実施順に挙げ、個々の機体の来歴、および金属部品の腐食状況や修復内容などを紹介する。なお、航空機に関しては、「修理」という言葉は「不具合に手を入れて再び飛べるようにする」という意味で使われることが多いため、それとは区別するために、本稿では「修復」という言葉を使用した。2.1.海軍特殊攻撃機「晴嵐」28号機(1)来歴昭和19年(1944)末から昭和20年(1945)の初めにかけて製造されたとされる「晴嵐」28号機は、戦後アメリカ本土に送られ、昭和37年(1962)にスミソニアン航空宇宙博物館の修復保存施設ガーバーファシリティに送られるまで、カリフォルニア州のアラメダ海軍基地で屋外展示されていた。ガーバーファシリティでは、昭和49年(1974)に屋内の保管スペースに空きができるまで、翼などを取り外した状態で屋外に保管されていた。平成元年(1989)に始められた修復は平成12年(2000)に終了し、現在は同博物館のスティーブン・Fウドバー・ハジーセンターで展示されている(写真1)。(2)金属部品の腐食状況屋外での展示保管期間が長かったために、雨水などのたまりやすい胴体やフロート、方向舵などの下部や異種金属が接触する箇所、および高強度のアルミニウム合金を使用した主翼の桁などに腐食が発生していた(写真2、3、4、5)。また、アルミニウム合金製の風防枠には、鉄製のネジやナットおよび取り付け金具などが組み込ま写真1修復を終えスティーブン・Fウドバー・ハジーセンターに展示される晴嵐(2017年3月撮影)写真2修復を終え機体に組み付けられた方向舵(1999年10月撮影)写真3修復前の方向舵骨格(1990~93年、Robert McLean撮影)59