ブックタイトル「鉄構造物の保存と修復」日本語版

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概要

「鉄構造物の保存と修復」日本語版

4.2.リベット技術の継承に向けた展望リベット接合橋の維持管理のためには、リベット技術の継承は重要である。また、リベット接合は高力ボルト接合に比べて維持管理上のメリットが多いので継承すべき技術である。一方で、施工環境等の課題や施工者が限られる等、解決すべき課題も多い。技術継承するための展望は以下のとおりである。(1)適用範囲の整理リベット接合に比べて高力ボルト接合の方が、施工は容易であり、品質も安定しているので、高力ボルト接合をすべてリベット接合に変更していくことは現実的ではない。そのため、高力ボルト接合よりもリベット接合の方が適している箇所(例えば腐食環境が厳しい箇所、リベット孔周辺が摩耗している箇所等)はリベット接合を適用する等、適用範囲を整理しておくことが重要である。(2)産官学の連携リベット接合の技術を継承するためには、それに関する技術者の育成や設備の維持等が必要であり、一つの会社単位では困難である。そのため、国や自治体、設備管理者、施工会社、大学等の連携が不可欠である。(3)技術開発リベット接合が採用されなくなった理由として、現場で加熱炉や高温のリベットを取り扱う等の施工環境や施工時の騒音等の周辺環境の影響が大きい。そのため、これらを改善していく工夫や技術開発が必要である。また、リベットの加熱や施工、除去等、品質が施工者の技能に左右されることや労力がかかっているので、これらを改善できるような技術開発も必要である。(4)示方書の継承、整備近年、リベットが施工されることが少なくなり、リベットの施工に関する加熱温度や施工方法等、示方書等が継承、整備されていないので、過去の資料の整理や統一した示方書を策定する必要がある。(5)技術継承の仕組みづくりリベットの技術は、経験豊富な技術者がほとんどいない状況であるので、技術者養成所の設置や資格者制度等、仕組みづくりが必要である。参考文献1.仁杉巌、廣田良輔、鳥取誠一、宮本征夫、稲葉紀昭、朝倉俊弘:鉄道土木構造物の耐久性、山海堂、20022.飯塚友博、前田静男、中山太士、岡本陽介:鋼鉄道橋継手部のリベットによる補修方法の検討、土木学会年次学術講演会講演概要集、68巻、I-292、2013.93.木村元哉、中山太士、松井繁之:腐食桁におけるリベットの継手強度と高力ボルト置換に関する基礎的研究、構造工学論文集、Vol. 55A、pp.880- 888、2009.34.中山太士、木村元哉、大都亮、今川祐亮、松井繁之:衝突変形および火災等の外力を受けたリベットの材料特性、鋼構造年次論文報告集、第17巻、pp.409-414、2009.115.木村元哉、松井繁之:腐食した鉄桁リベットの接合強度調査、土木学会第57回年次学術講演会概要集第1部、pp.285-286, 2002.96.古寺貞夫:旧余部橋梁の維持管理の歴史、(財)災害科学研究所、旧余部橋梁撤去部材を用いた調査研究に関するシンポジウム概要集、2012.117.関西道路研究会道路橋調査研究委員会:橋を見る・看る、耐久性小委員会報告書、1998.38.中山太士、飯塚友博、細井幹生、松井繁之:腐食した高力ボルトの残存軸力調査、鋼構造年次論文報告集、第22巻、2014.119.高力ボルト摩擦接合継手の設計法に関する調査検討小委員会:鋼構造シリーズ15高力ボルト摩擦接合継手の設計・施工・維持管理指針(案)、土木学会、2006. 1210.中山太士、木村元哉、池田学、相原修司、長嶋文雄、松井繁之:衝突変形を受けた鋼I形リベット桁の残存耐荷力の評価、構造工学論文集Vol. 49A、2008.411.辻英之:鉄けた火災発生時の運転再開に伴う判断基準の作成、鉄道施設協会総合技術講演会、2006.1012.吉田雅彦、中山太士、大都亮、稲富紀行:火災を受けた鋼鉄道橋の健全性評価に関する検討:JSSC鋼構造年次論文報告集、Vol. 16、pp.759-755、2008.1113.火災を受けた鋼橋の診断補修技術に関する研究小委員会:鋼構造シリーズ24火災を受けた鋼橋の診断補修ガイドライン、土木学会、2015.7上記について豊富な実績を持つ施工者は高齢の方が多いので喫緊の課題であり、早期に取り組みをはじめる必要がある。55