ブックタイトル「鉄構造物の保存と修復」日本語版

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概要

「鉄構造物の保存と修復」日本語版

約20mに位置し、塩害の影響を大きく受ける開床式下路プレートガーダ(支間23.5m、昭和59年(1984)改造、リベット接合桁)である。対象橋梁を図18に示す。リベットによる補修を行ったのは2連目の下路プレートガーダであり、起終点左右の端補剛材、起点左支点部の上フランジを施工した。なお、起点左支点部の上フランジおよび起点左の端補剛材は部材の交換も行っている。リベットによる補修にあわせて、比較のために高力ボルトによる補修も行っている。施工数量はリベットが264本、高力ボルトが101本である。なお、実橋梁での試行のリベット長はリベット径、孔径および板厚(グリップ長)の関係より、算出式を適用し算出した。(2)試行結果リベット施工後に緩み、リベット頭の仕上がり不良、その他不完全なものにならないように施工することが定められている。リベット接合の緩みの確認は検鋲により行った。検鋲とは、施工したリベットの一端をハンマーで叩き、触手によりその他端に伝わる僅かな振動を感じとることでリベットの弛緩を判定する試験方法である。リベット頭の仕上がり不良の判定は、外観検査により行った。外観検査、検鋲を実施したが、不良箇所はほとんどなく、一定の品質確保を達成することができた。しかし、実施工では僅かなリベット長の違いから図19に示すようにリベット長が長い場合に施工不良となる「ハチマキ頭」、およびリベット長が短い場合に不良となる「ダンゴ頭」が生じ、リベット長の微調整が必要となった。「ハチマキ頭」ではハチマキの部分が角ばり、塗装が薄くなることで防食上の弱点となり、また「ダンゴ頭」ではリベットの幹が充実されない恐れがある。リベット形状に差異が生じたのは既設リベット孔の径が呼び径と僅かに異なることなどが考えられる。リベットによる補修において、リベット長が品質管理上重要な要因の一つとなると考えられた。(3)試行を踏まえた課題横向きにリベットを施工した箇所において、図20に示すように、リベットハンマー側のリベット頭と固定側のリベット頭にずれが生じている箇所があった。これは、リベット施工時にハンマーの重み等でハンマーが下がったままの状態でリベットを打設したことにより生じたものと考えられる。そのため、横向きにリベットを施工する際は注意が必要であることがわかった。表1施工時間(3本の平均値)および騒音測定結果接合方法施工時間(秒)騒音(dB)リベット(SV材)4285.3リベット(SS材)4587.0打込み式高力ボルト55 85.3高力ボルト(トルシア)15 64.0(a)リベット(SV材)(b)リベット(SS材)図18対象橋梁(c)打込み式高力ボルト図17(d)高力ボルト各継手の断面観察(a)ハチマキ頭図19リベット形状施工不良例(b)ダンゴ頭53