ブックタイトル「鉄構造物の保存と修復」日本語版

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概要

「鉄構造物の保存と修復」日本語版

(1)施工性施工性の確認は、各継手施工時の施工手順や施工時間等を高力ボルトと比較した。各継手の施工はリベットを撤去した後、リーマーでリベット孔を23.5mmに調整したうえで施工した。なお、リベット径、高力ボルト径は22mm、打込み式高力ボルト径は22mmである。表1に各接合方法の施工時間(3本の平均値)を示す。この表の施工時間はリベット孔に各継手を設置してからの1本当たりの施工時間を示している。この表からわかるように、施工時間は高力ボルトが最も短いのに対し、リベットや打込み式高力ボルトは1分以内であったが、高力ボルトの約3倍以上の時間を要している。なお、リベットの施工では、コークスの準備時間に30分程度時間が必要であった。(2)騒音測定施工時の騒音を測定し、他の接合と比較した。騒音測定は施工箇所から12.5m離れた高さ1.2mの位置で測定した。表1に各接合方法の騒音測定結果を示す。この表には各接合方法の騒音測定の最大値を示している。なお、騒音の最大値は、リベットでは打設時、打込み式高力ボルトではボルト打込み時、高力ボルトではナットランナーによる締込み時に計測された。この表からわかるように、高力ボルトが最も小さな値になった。(3)適用性鋼鉄道橋の補修への各接合の適用性を確認するために、施工後、継手部の断面観察を行い、母材との密着性、リベット孔との隙間を確認した。図17 (a)~(d)に各継手の断面観察結果を示す。ここに左から施工前、リベット撤去後、施工後の断面観察図を示す。図17 (a)、(b)の断面図からリベット材は凹凸に追随して充填できていることがわかる。一方、図17 (c)の打込み式高力ボルトは、リベット孔とボルトの間に隙間があることがわかる。また、今回施工した打込み式高力ボルトの多くは打ち込まなくてもボルトが設置できる状態になっており、リベット孔の径と打込み式ボルトのボルト径の調整が困難であるという課題が残った。また、図17 (d)の高力ボルトは、ワッシャと母材の表面に隙間があることがわかる。このことから、今回の試験範囲では、リベットが鋼鉄道橋の補修に最も適用性があることがわかる。3.4.作業環境の改善作業環境の改善として、加熱炉内のコークスを燃焼させ、リベットを加熱する方法について、電気炉による加熱を検討したが、加熱時間が大幅に増加することになり、施工性が低下するので断念した。また、打設時の騒音を低減させるために、現状の空気式リベッターについて、油圧式リベッターに変更を検討したが、リベットを十分にかしめることができなかった。3.5.実橋梁での試行(1)対象橋梁リベットによる補修を試行した橋梁は、海岸線から高力ボルト(STB)打込式高力ボルト(BTB)リベット(SV材)リベット(SS材)図16試験体52第4章鋼鉄道橋におけるリベット接合の維持管理上のメリットと技術継承について