ブックタイトル「鉄構造物の保存と修復」日本語版

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概要

「鉄構造物の保存と修復」日本語版

施工者の技能が品質に大きな影響を与える。そのため、その品質を確保することが課題である。(3)施工性…リベット接合は高力ボルト接合に比べて、施工時間等、施工性が劣ることが懸念される。(4)騒音…施工時にリベッターでリベットをかしめるので、周辺への騒音が課題になる。(5)作業環境…加熱炉でリベットを燃焼させることや高温のリベットを扱う等、作業環境に課題がある。以上の課題について、1施工者不足、2品質管理については、橋梁工事の施工の経験が豊富な熟練工からトレーニングを受けて、必要な技能を習得した。3施工性、4騒音については、撤去された鋼鉄道橋を試験体に、施工試験を実施し確認した。この施工試験では、比較として高力ボルト接合およびリベットと同じ支圧接合である支圧接合高力ボルト(以下、打込み式高力ボルト)も施工している。(2)加熱温度管理の技量確認リベットの施工のなかでも、リベットの加熱温度管理はリベットの品質に大きく影響を与え、かつ作業者の感覚に支配される品質管理項目であるので、修習施工者の加熱温度管理が一定の品質を確保できているかを以下の方法で確認した。リベット施工熟練者1名、修習施工者3名、未経験者3名に加熱炉を用いて実際にリベットを加熱し、赤外線カメラを用いて加熱後のリベットの温度を計測した。測定状況を図14、測定結果を図15に示す。各被験者一人あたり5本のリベットを加熱したが、基準値(900℃~1100℃)を外れたのは、未経験者のみであった。また(平均値)±2σ(σ:標準偏差)の範囲を図中に示したが、修習施工者については全て基準値以内となった。このため加熱温度管理について、修習施工者は一定の品質を確保できていると判断した。3.2.施工者のトレーニング過去に豊富なリベット施工の経験がある熟練者の協力を得て、リベット施工経験のない施工者に対して、リベット施工のトレーニングを行った。ここでは、トレーニングを受けた施工者を修習施工者と呼ぶこととした。(1)トレーニング内容リベット施工のトレーニングの様子を図13に示す。リベット施工は4人編成を基本とし、1リベット燃焼、2リベット受け取り、3リベット設置、4リベット打設があるが、それぞれの役割のポイントについて、熟練工からトレーニングを受けた。この4人のなかでも、職長にあたるのは1リベット燃焼であり、全体の行程を確認しながらリベットの燃焼時間をコントロールする役割も担っている。また、過去には燃焼したリベットを最大30m程度離れたリベット受取者まで火箸を使って投げて渡すことがあったが、今回のトレーニングには含まれていない。なお、リベット熟練工の平均年齢は83歳(平成24年(2012)当時)であった。3.3施工試験施工試験は、リベットおよび打込み式高力ボルト、高力ボルトによる補修を比較検討した。図16に示す撤去された鋼鉄道橋を用いて、垂直補剛材間の1パネル分の上フランジのリベットを撤去後、リベットおよび打込み式高力ボルト、高力ボルトを施工した。なお、リベットはSV材とSS材を検討した。これは、現在ではSV材の入手が困難であり、SS材を採用する事例が多いので、SV材とSS材の違いによる施工性の差異を確認することを目的としている。115011001050±2σ±2σ±2σ1000±2σ±2σ±2σ950±2σ900850リベット施工熟練者修習施工者修習施工者A B C修習施工者未経験者未経験者A B C未経験者加熱したリベットカメラ画面図14赤外線カメラによる加熱温度測定図15リベット加熱温度測定結果51