ブックタイトル「鉄構造物の保存と修復」日本語版

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概要

「鉄構造物の保存と修復」日本語版

た。以上のことより、今回の試験の範囲内では、受熱温度が840℃程度であれば、リベット部材には緩み等の変状は発生しないことがわかった。継手強度の確認試験は圧縮試験により実施した。載荷により中央の板と両側の板との間のずれが急激に増加したときの荷重をすべり荷重とし、受熱温度毎のすべり荷重を評価尺度した。図12に受熱温度とすべり荷重の関係を示す。縦軸にすべり荷重、横軸に受熱温度を示している。この図からわかるように、受熱温度の違いによるすべり荷重に大きな差異は見られなかった。図中にはSV330工場リベットの許容せん断強さ(複せん断)、および許容支圧強さ(t =10mm)を併せて示している。す120べり荷100重80( )kN1801601406040200082.051.8100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000受熱温度(℃)図12リベット(SV330工場)許容せん断強さ(複せん断)鋼板(SS400工場リベット)許容支圧強さ(t=10mm)受熱温度とすべり荷重の関係これから、840℃まで加熱し、急冷しても、設計上の許容耐力を保持していることが分かる。鋼材は、受熱温度が600℃を超えて、急冷されると“焼入れ”効果により、降伏点および引張強度が上昇し、伸び率が低下するが、リベットには、その傾向は見受けられないことが明らかになっている。今回、受熱温度の違いによるリベットの継手強度に大きな変化が見られなかったのは、リベットの材料的な変化が小さいためと推察される。これは、リベットは1,100℃程度まで加熱した後、かしめるためであるためと考えられる。既往の研究より、高力ボルト接合が火災を受けた場合、300℃程度から軸力が低下することが知られている13。そのため、高力ボルト接合に比べて、リベット接合の方が、火災に対して優位な接合方法であることがわかる。3.リベットによる鋼鉄道橋の補修の検討リベット接合は維持管理上のメリットが多いので、リベットによる鋼鉄道橋の補修を検討した。3.1.課題近年、リベットが鋼鉄道橋の新設や補修に採用されなくなった理由として、以下のことが挙げられる。(1)施工者不足…1970年代以降、橋梁工事においてリベット継手が使用されなくなったため、リベットを現場で施工できる現役の熟練工がほとんどいないのが現状である。(2)品質管理…リベット接合は高力ボルト接合に比べて、1リベット燃焼状況2リベット受け取り3リベット設置4リベット頭部固定5リベット打設図13リベットの施工状況50第4章鋼鉄道橋におけるリベット接合の維持管理上のメリットと技術継承について