ブックタイトル「鉄構造物の保存と修復」日本語版

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概要

「鉄構造物の保存と修復」日本語版

千鳥配置のうち外側のリベット列をB、内側をDと名づけた。断面確認用のリベットを全て橋軸に対して垂直な面に切断して断面を観察した。試験体B・Dの変形状態を図8に示す。図中の数値が変形量、すなわちリベット位置におけるフランジ端の鉛直変形量を示している。試験体の切断面の写真を図9に示す。試験体B3は試験体のなかで最も大きな変形を受けたもの、試験体B2はB3のとなりのリベットで今回採取したリベットでは中程度の変形である。試験体D1は変形が小さく、試験体A4は変形を受けていないリベットである。図9からわかるように、試験体B3ではリベット頭部が大きく変形し、母材との間や板と板の間にも大きな隙間が出るほどの大きな変形にも関わらず、わずかにき裂が認められるものの破断していない。試験体B2、D1についてはき裂が認められず、リベットは延性があり、大きな変形を受けても破断には至りにくいことがわかった。2.3.火災を受けたリベット接合鉄道橋の橋梁下は河川や道路等が横断していることや店舗等として利用されていることが多い。そのため、橋梁下の火災により、鉄道橋が被災することも少なくな図10燃焼試験用試験体い。鉄道橋が火災により被災した場合、迂回ルートの多い道路橋が被災した場合に比べて、旅客・公衆に与える影響は大きい。そのため、鉄道橋が火災により被災した場合、迅速に調査を行い、安全性を確保したうえで、早期に運転を再開する必要がある。鋼鉄道橋では、平成15年(2003)4月に発生した11東海道新幹線上中架道橋の桁下の火災による被災事例や平成19年(2007)2月に発生した大阪環状線淀川橋梁の桁下の火災による被災事例12が報告されている程度であり、鋼鉄道橋は、リベットが多く現存していることが特徴であり、火災を受けたリベット接合の特性を把握しておくことは維持管理上非常に重要である。そこで、火災を受けたリベット接合の特性および継手強度について検討した。撤去された鋼鉄道橋(昭和4年(1929)製作、下路プレートガーダの主桁)からリベットを含む主桁ウェブおよび下フランジ(以下;リベット部材と称する)を採取し、燃焼試験を実施した。桁の鋼材はS39A、リベットの材質はSV34(SV330)である。試験に用いた試験体を図10に示す。燃焼試験は、加熱炉を用いてガスバーナー法で試験体を加熱し、リベット部材の温度が目標温度に達するまで加熱し、目標温度を5分間保持した後、急冷した。急冷前後でリベット部材の変形、緩みを目視および打音で確認した。試験体が設置できるように、図11に示すような、耐火レンガを用いて加熱炉を組み立てた。炉内のガスバーナー2本を熱源として、試験体を目標の温度に達するまで加熱した。試験体が目標温度に達してから5分間温度を保持し、火災時の消火活動の急冷を再現するため、水槽内の水に浸漬した。試験体の種類は、受熱温度が200℃、300℃、350℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃、840℃の計9種類とした。なお、840℃は、今回の燃焼試験装置で実施できた最高温度である。最高840℃まで試験体の温度を上昇させ、急冷前および急冷後のリベット部材の変形や緩みを目視および打音検査で確認したが、塗膜の損傷以外の変状は見られなかっ図11加熱炉と温度管理位置49