ブックタイトル「鉄構造物の保存と修復」日本語版

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概要

「鉄構造物の保存と修復」日本語版

部橋梁の鋼製橋脚からリベット接合を切り出した。旧余部橋梁は明治45年(1912)架設され、全長311m、地上からレール面の高さが約40m、11基の橋脚、23連の桁を持つ鋼製トレッスル橋であり、約100年供用後、平成22年(2010)に撤去された。本橋梁は日本海沿いの腐食環境が非常に厳しい箇所に位置し、「橋守」と呼ばれる橋梁専属の技術者が維持管理にあたっていたこともあり、鋼橋の維持管理の象徴的な存在であった6。各試験では、試験体を1)腐食していないリベット継手、2)リベット頭部が腐食したリベット継手、3)母材が腐食したリベット継手の3種類に分類して調査した。断面観察は、ゆるみの有無を確認したうえで、リベット接合を半裁して、断面を観察し、リベットが腐食した場合のリベット孔と母材の隙間等の有無を確認した。断面観察結果を図2に示す。この図からリベット頭部や軸の一部が腐食しても、リベット孔周辺に隙間がなく、緩みも生じていないことがわかる。図2(c)右の写真のリベットは母材(リベットと接合している鋼板)と連続して一様に腐食しており、母材との一体性が高いことがわかる。継手強度の確認試験は圧縮載荷により行った。図3に腐食程度とすべり荷重の関係を示す。ここに、縦軸にすべり荷重、横軸に腐食程度を示している。図にはSV330現場リベットの許容せん断強さ(複せん断)、および許容支圧強さ(t =15mm)を併せて示している。なお、すべり荷重とは載荷によって中央の板と両側の板との間のずれ量が急激に増加したときの荷重のことであり、継手強度の評価になるものである。図3から、腐食していないものと母材が腐食しているものでは、すべり荷重にばらつきがみられるものの、腐食程度の違いによるすべり荷重に大きな差異は見られなかった。また、リベット頭部や母材が腐食した場合でも、設計上の許容耐力を保持していることがわかる。以上の結果を高力ボルト接合と比較すると、高力ボルト接合は、ボルトのナット部や六角部が腐食すると軸力が低下することが報告されており、リベット接合は高力ボルト接合と比較して腐食に対して優位な接合方法であることがわかる7、8、9。2.2.変形したリベット接合日本の鉄道網は、昭和初期に現在の鉄道網に近い形で整備されたのに対し、道路網は、高度成長期の昭和40年代にその多くが整備されたため、図4に示すような道路が鉄道橋の下を交差する架道橋において、工事用自動車等が鋼鉄道橋に衝撃する事故(以下;橋桁衝撃事故)が多く発生している10。橋桁衝突事故により鋼鉄道橋が甚大な損傷を受けて列車の運転を抑止するケースもあるが、その多くは図5に示すような部材の変形等の軽微な損傷であることが多い10。橋桁衝撃事故が発生した場合、公共輸送の影響を最小限に抑えるため、出来るだけ迅速に安全を確認したうえで、列車の運転を再開させる必要300250すべ200り荷重150( )kN 10050067.1kN61.0kN(a)腐食していないリベット継手(b)リベット頭部が腐食したリベット継手(c)母材が腐食したリベット継手腐食なしリベット腐食母材腐食許容せん断強さ許容支圧強さリベット(SV330現場)許容せん断強さ(複せん断)鋼板(SS400現場)許容支圧強さ(t=15mm)腐リ食ベなッしト腐食図3図2腐食状況調査腐食程度とすべり荷重の関係母材腐食47