ブックタイトル「鉄構造物の保存と修復」日本語版

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概要

「鉄構造物の保存と修復」日本語版

鋼鉄道橋におけるリベット接合の維持管理上のメリットと技術継承について中山太士西日本旅客鉄道株式会社鉄道本部施設部土木課1.はじめにリベットは、蒸気機関車、鉄道車両、鋼鉄道橋等の鉄道分野で多く使用され、日本の鉄道網整備に果たした役割は大きい。リベットは昭和40年頃(1965)までは主要な接合方法であったが、高力ボルト接合や溶接接合が一般的になり、新設のものにリベットが採用されなくなった。鉄道車両は供用期間が40年程度なので、現在は、リベットが採用された鉄道車両を見る機会も少なくなり、他方、鋼鉄道橋は多くのリベットで接合された橋梁(以下、リベット接合橋と称する。)が現存し、適切な維持管理により、現在もなお鉄道輸送に貢献している。本稿では、鉄道分野のうち、鋼鉄道橋で使用されているリベットについて紹介したい。鋼鉄道橋には、明治時代に架設されたものが現存しており、その多くはリベット接合橋である1。リベット接合橋は長期間供用されているものが多く、変状を伴っていることもあるが、高力ボルト接合や溶接接合等と比較して、維持管理上のメリットが多いことが報告されている2。一方、現在ではリベットが施工できないので、既存の鋼鉄道橋のリベット接合に変状が生じた場合には、変状があるリベットのみ高力ボルトに置換されるケースが多く、支圧接合であるリベットと摩擦接合である高力ボルトが混在するという課題を有している3。本稿では、各種損傷を受けたリベット接合の特性を調査した結果を紹介する4、5。また、近年、施工事例が少ないリベット接合を鋼鉄道橋の補修として適用した事例を紹介する。さらに、リベット接合の維持管理技術を継承する取り組みについても紹介する。接合、火災を受けたリベット接合の特性を調査した結果を紹介する。2.1.腐食したリベット接合鋼鉄道橋の宿命と言われる腐食は、疲労き裂に比べて損傷の進行が緩やかであり、既設鋼鉄道橋の腐食対策は、塗装による防食を基本として維持管理されてきた。明治以来、塗装による防食が継続されてきたことにより、経年100年以上の鋼鉄道橋が、現在も問題なく供用されている一方、局所的な腐食が問題となった事例も数多く存在する。腐食したリベット接合の特性を把握するために、腐食したリベット接合を試験体として、断面観察および継手強度の確認試験を実施した。試験体は図1に示す旧余2.各種損傷を受けたリベット接合の特性鋼鉄道橋の損傷は、疲労き裂や腐食、リベットやボルトの弛緩等の経年により生じる環境劣化による損傷と地震、水害等の天災、火災による被災、自動車による衝突等、異常外力により生じる損傷がある。ここでは、腐食したリベット接合、異常外力により変形したリベット図1旧余部橋梁46第4章鋼鉄道橋におけるリベット接合の維持管理上のメリットと技術継承について