ブックタイトル「鉄構造物の保存と修復」日本語版

ページ
40/120

このページは 「鉄構造物の保存と修復」日本語版 の電子ブックに掲載されている40ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

「鉄構造物の保存と修復」日本語版

考察する。既往の劣化プロセスは参考とするが、そのままあてはめずに周囲環境も含めて原因を考察する。なお、考察には特性要因図(図2)を使うことなどが考えられる。)2.3.鋼構造物の文化財修理において重視すべき観点について破損原因を探ると同時に、どの観点を重視して修理を行うべきなのか、という点についても関係者で議論をするべきである。たとえば破損箇所の取替範囲はどのくらいとするのか、という判断は、文化財として当初の部材をできるだけ残すという観点と、建造物としての安全性を担保するという観点のせめぎ合いとなる。こうした修理の判断は、事業全体の状況から考える必要があり、どの観点を重視するのか、事業関係者で議論する必要がある。では、どのような観点が考えられるのか。以下、鋼構造の文化財修理のあり方について考えられる観点について、事例を織り交ぜながら考察してみたい。(1)材料の保存文化財保存では、材料や工法の保存をどのように実現するか、という点が重要である。ただし、材料や工法を保存させる観点は、先述した安全性や機能性の観点と比べると、関係者が認識するのに時間がかかる。なぜなら、これらは詳細な調査によって明らかになるためである。周囲環境社会開発自然要因要因建造物材料/工法周辺の環境観光建造物の継続的な利用経済的な発展災害要因要因要因原因図1建造物がおかれている状況図2特性要因図写真1旧三河島汚水処分場喞筒場施設全景写真3名古屋市東山植物園温室前館(提供:名古屋市)写真2地下の阻水扉写真4溶接補修の様子38第3章鋼構造物の文化財修理の現状と今後のあり方の考察