ブックタイトル「鉄構造物の保存と修復」日本語版

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概要

「鉄構造物の保存と修復」日本語版

全度調査のために、内部をレーダー探査によるスキャンが2018年5月に実施の予定である。13. 1512年に建設されたケンブリッジ大学のキングスカレッジのチャペルは、天井が扇形ヴォルト構造で、この上に木造の屋根が載っている。ビクトリア期になって、小屋裏に、補強の目的で40ft(12m)の壁の間に引張部材の錬鉄ロッドが追加された。しかし後にこの補強は、構造的に意味がないことが確認されたが、当時の判断を示す証拠としてそのまま保存されている(附写真1、2)。14.クリフトン吊橋の維持、運営の組織については、主体である政府認可団体の「Clifton Suspension Bridge Trust」のホームページに記述がある。https://www.cliftonbridge.org.uk/15. Conservation Plan for the Great Western Steamship CompanyDockyard and the ss Great Britain, Jan.1999, Vol.1-3http://www.ssgreatbritain.org/brunel-institute/research-articlespapers16. Desiccated storage of chloride-contaminated iron: A study of theeffects of loss of environmental controlhttp://www.ssgreatbritain.org/brunel-institute/research-articlespapers17.乾燥空気により防錆をする方法は、橋梁で密閉空間のはる箱桁内部に実績があり、国内では、しまなみ海道の新尾道大橋(1999年完成、箱桁斜張橋)の箱桁内面の防錆処理に、塗装に代わり乾燥空気を循環させる除湿システムが最初に採用された。この他、明石大橋の主ケーブルでは、密閉ラッピングされたケーブル内部のワイヤー素線間の空隙に乾燥空気を圧入する送気乾燥システムが採用されている。近年では、重文の勝鬨橋の補修工事の計画で、旧稼働用機械装置などが残置されている機械室で適用が検討された(密閉化が難しく不採用)。海外では1997年完成のデンマーク、グレイトベルトリンク東橋の吊橋補剛箱桁内部に乾燥空気を循環させるシステムが採用された(附写真3)。18. Civil Engineering Heritage London and the Themes Valley, p.169-170, ICE, Thomas Telford, 2001.19. Civil Engineering Heritage London and the Themes Valley, p.175-176, ICE, Thomas Telford, 200120.「A. Lansley, et.al., The Transformation of St Pancras Station, pp.64-71, Lowrence King Publishing, Ltd, 2008」で、トレインシェッドの天井板の葺き替えでHeritage Minimum Requirementsに基づいて実施することが記述されている。法律的根拠をもつ文化財登録建造物に、やはり法律的根拠をもって認定された新幹線の鉄道改修工事を実施すると、相互に矛盾が出ることへの対処として、追加的にメモランダムが設定された。(High Speed Rail (London-WestMidlands) Environmental Minimum Requirements, Annex3 HeritageMemorandum)新幹線は今後、ロンドンからさらにイギリス内陸部へ延伸する予定で、同様の手法が鉄道(HS1)、道路(HS2)に採用される。21.フォース鉄道橋の塗装については、最新の2002年開始については、Forth Bridge Restoration Icon, Network Rail, Balfour Beatty, p.19-20,2012に示されている。それ以前の塗装については、フォース橋の100年(土木学会1992刊、100 years of the Forth Bridge, RolandPaxton, 1990. ICE刊の翻訳)p.77-79に記述がある。もともとの塗装系は鉛丹錆止めによる鉛系塗料が使われていた。2002年に開始された塗装工事のブラスト処理はファーストクラス、またはニァーホワイトクラスで、ISO Sa2 1/2相当の処理である。塗装系は、北海の石油産業に由来し、3層の塗膜で日本国内の重防食塗装系のエポキシ、ウレタン系仕様に近い。上塗り塗装には「フォース橋レッド」と称される1890年のオリジナルの上塗りの色彩の塗料を提供したクレイグ&ローズ社のウレタン塗料が採用されており50ミクロンの膜厚で上塗りされた。附写真1ケンブリッジ大学キングスカレッジのチャペル外観附写真3ブロック地組立時の補剛箱桁内部。桁断面内部のトラスの対傾構斜材に沿って乾燥空気供給の配管がされた。(1994年)附写真2キングスカレッジのチャペルの小屋裏両壁面の頂部から、天井の扇形ヴォルトの直上に沿って水平に引張部材錬鉄ロッドが追加された。34第2章イギリスにおける鉄構造物の保存修復からの教訓