ブックタイトル「鉄構造物の保存と修復」日本語版

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概要

「鉄構造物の保存と修復」日本語版

駅が開業した時には、世界最大規模のスパンであった(写真35)。この歴史的な鉄道駅にウォーター・ルー駅のユーロスターの発着駅の役割を移設するために大改造が加えられた。パリとロンドンを繋ぐユーロスターは、英仏海峡を渡ってイギリスに入ると、在来線の軌道を通りウォーター・ルー駅に達していた。この在来線に代わり、新たに建設された高速鉄道路線は、時速300kmの運行ができる緩いカーブでロンドンに近づくと地下にもぐり、新たな国際ターミナルのセント・パンクラス駅に到着するようになった。国際ターミナルの開業は、2007年11月である。セント・パンクラス駅の改造計画では、グレードⅠに指定された建造物をいかに扱うかが課題となった。1996年にユーロスターのロンドンターミナルの機能を持たせることが決定したが、このユーロスター建設は、英仏海峡トンネル鉄道リンク法(CTRL法:ChannelTunnel Rail Link Act)に基づいて実施されてきた。この枠組みのみでグレード1に指定されたセント・パンクラス駅を、国際ターミナル発着駅の新たな用途への改造に着手すると、歴史的建造物に相当の変更が必要となることが分かった。このため、別途、覚書(Planning andHeritage Minimum Requirements)が制定された。事業者であるロンドン&コンチネンタル鉄道(LCR)は、CTRL法の鉄道路線事業者の権限のもと、歴史的建造物であるセント・パンクラス駅の改修保全の事業者として任命された20。アーチ構造のスパンドレルの部分は、ラチス構造で、アーチの両端は水平に張られたタイ材(通称「バーロー(設計者)のタイ」)で結ばれ、錬鉄の床組の上に在来線のホームがあった。全部で25本ある錬鉄板のリベット構造とするアーチは、8.92mの間隔で線路と直角方向写真31船尾付近(2017年撮影)スクリュー、および舵は新規製作写真32木製舵の展示状況(2017年撮影)写真33ロンドン、パディントン駅の大屋根のアーチ(2017年撮影)写真34ロンドン、パディントン駅トレインシェッドの鋼柱(2017年撮影)29