ブックタイトル「鉄構造物の保存と修復」日本語版

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概要

「鉄構造物の保存と修復」日本語版

見られる17。リベットの多くは腐食で変形しているが、すでに構造機能はないので、補修は多数の腐食で穴の開いた箇所に皿リベットでふさぐ補修がされている。スクリューは新規製作されて追加された(写真31)。オリジナルの舵は木製であったが、鋼製の新規製作された舵が取り付けられ、木製舵は取り外して隣接する修理工場に展示されている(写真32)。(3)パディントン駅Paddington Stationとセント・パンクラス駅St Pancras Stationのトレインシェッド鉄道駅のトレインシェッドは、19世紀の鉄道建設時代に、イギリス各地で建設された。ロンドンから西行きのグレイト・ウェスタン鉄道の発着駅のパディントン駅は、鉄構造物の大屋根のアーチを特徴とし、最初の駅舎は1838年に建設された。当初は3連の錬鉄アーチが装飾のついた鋳鉄の柱でホーム方向に3箇所に1箇所の間隔で支えられていた。20世紀初めに、駅舎の拡幅のために4連目のアーチが追加された時に、合計189本の鋳鉄柱は鋼製柱に取り替えられたが、錬鉄製の大屋根アーチは建設当時のものがそのまま使われている18(写真33、34)。1999年には、ヒースロー国際空港と直結する新線のヒースローエキスプレスの発着駅となった。このため航空会社のチェックインカウンターや、コンコース、待合ロビー、カフェテリアなどの利用客の新たな施設が増設される改造が行われた。駅舎の鉄構造物は、屋外の構造物よりも天井の覆いがあることから腐食による劣化ははるかに少ない。改修の多くは駅の機能の使用条件の変更による。同じくロンドンの鉄道駅のセント・パンクラス駅は、ゴシック調のレンガ建物と、やはり鉄構造物の列車を覆う大屋根を特徴とする19。全ての線路をスッポリと覆う錬鉄製アーチ屋根は、幅が約73mもあり、1868年に写真27湿度管理用のダクト(2017年撮影)写真28湿度管理用のモニター(2017年撮影)写真29船体の継手と孔食の箇所(2017年撮影)湿度管理下では極力破損箇所に手をつけず、そのまま存置している。グレイト・ブリテンの船体は、錬鉄板(最大で10ft×2ft. 9in (303mm×833mm))をダブルリベット配置のラップ継手で連結されている。写真30屋外展示の状況(2017年撮影)28第2章イギリスにおける鉄構造物の保存修復からの教訓