ブックタイトル「鉄構造物の保存と修復」日本語版

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概要

「鉄構造物の保存と修復」日本語版

鉄や石炭・石灰石を川の対岸へ輸送するために使用されていた.現在は歩行者の通行用に利用されている。アイアンブリッジを含む世界遺産の管理は、アイアンブリッジ渓谷博物館、2つの地元行政機関の他、土地、施設所有者と多岐にわたる.実質的な管理の運営グループが設置されてマネジメント計画3に沿って維持管理、利活用運営がされている。マネジメント計画では、アイアンブリッジの構造よりも一般者が接する、その周囲のまち並みにかかわるストリートファニチャや観光客施設などの部分が主体を占めている。運用においてもアイアンブリッジの構造本体の維持保全は、特殊な部分としての扱いの傾向がみられる。これまでのアイアンブリッジ本体の保全については、1784年に最初のクラックが報告されて以来、大規模な補修を含めた保全が継続的に行われている(表2)。アイアンブリッジのある渓谷一帯は、石炭層の不安定な地盤で、最初の大規模な対策は、1783年7月に橋の下流左岸側に長さ30mの護岸を新設して左岸の滑り込みを防止するものであった。1803年に実施された荷重低減のための橋台背面土の除去も、同様にアーチ支点部の河川側への滑りを防ぐものであった。これ以後200年以上にわたり変状の発生とそれに対する保全が延々と行われてきた。現状のアイアンブリッジに残る数々の補修、補強、変状から過去の保全の状況が克明に読み取ることが可能である(写真2、3、4、5、6)。写真1アイアンブリッジ全景(左)(左岸上流側より)(2015年撮影)写真2アーチリブと放射状部材(2015年撮影)アーチリブ間をつなぐ放射状の部材に数多くのクラックの発生が見られる。写真3左岸側スパンドレル上部の部材の面外変形(2015年撮影)橋台の川へのせり出しにより発生したものと思われる。垂直材の上端部には1927年サドルが補強用に追加された。その隣はスパンドレルの円形部材(オージー)。写真4右岸側アプローチスパンのアーチ部材継目のズレ(2015年撮影)橋台の川への移動により発生したずれた継手を変形したままで添接補強されている。19