ブックタイトル「鉄構造物の保存と修復」日本語版

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概要

「鉄構造物の保存と修復」日本語版

16、18、19、20、22、24、25、27、28、30、32、33、36、40mmに一応限られるため、フィートやインチのリベットが用いられている場合には、ミリから換算して施工することになる。リベットやスナップを製作すれば規格にとらわれず、どのサイズでも施工できると判断されている。また、成和工業で用いられているリベットハンマーは、トリガーを押し込む加減で圧縮空気圧を調整できるため、ほぼ一種類のリベットハンマーで施工が可能である。ただし、径の小さいリベットを打つ時は60番と呼ばれる小型のリベットガンが使用され、φ19mmもしくはφ22mmくらいから上は80番のリベットガンが使用される。板厚が厚ければ裏当てをジャムリベットハンマーで受けるなど、サイズや厚みで機械工具も変えている。リベット自体の金型等は、まだ市場に残っており、市場にない道具は製作するなどで対応している。ただし、リベット用圧延鋼材のSV材は非常に少なくなっているためSS材で代用することが多いのが現状である。リベット技術の継承については、リベットを用いる現場が限られているため、毎年社内研修を実施し、技術の継承を行っている。そのため、社員の多くは鉸鋲作業を経験している。現在、継続的にリベット施工する現場が無いため、各現場作業完了後には、リベットガンなどは防錆のため機械油に漬けて保管している。そのため、設備の維持管理だけでもかなりの負担になっている。口鐡工(現在は廃業)の協力を得て、リベットの燃焼や鉸鋲時等のポイント等の指導を受けている。JR西日本では、この取り組みにあわせて、鋼鉄道橋に多く使用されているリベットへの理解を深めるため、社員に対する鋼鉄道橋のリベット技術の継承に取り組んでいる。具体的な内容は、リベット除去、鉸鋲を見学させたうえで、リベットの鉸鋲を体験させ、維持管理していくうえで必要なリベット技術についての知見を得ている。ここでは、平成30年(2018)6月7日に実施された講習会で得た情報をもとにリベットの取替技術について紹介する。講習会では、除去された旧余部橋梁の桁を使用してリベットの除去、鉸鋲作業のトレーニングを受けた株式会社フルテック所属の職工が担当した。リベットの除去作業は、はじめに片側のリベットの頭部を除去した後に削孔式または溶解式で除去する.リベット頭部の除去は,ガスで加熱し溶かし落とす方法とグラインダー等で除去する方法がある.今回は職工の技術力が高いのでガスによる方法がとられていた。削孔式は、アトラエースなどの削孔機を軸に合わせ軸外周部を削り取り、リベットの支圧力を低下させ、ハンマーで除去する方法である。削り取る深さは接合させている板の厚みによって異なるが、今回はリベットの軸の長さで1/4ほど削り取られていた(写真付録-1)。一方のガスによる溶解式の除去方法は、ガスでリベットの軸の断面中心部に削孔し,さらに断面を十字(3)西日本旅客鉄道株式会社・㈱ビーエムシー-西日本旅客鉄道株式会社(以下、JR西日本とする。)は、国鉄時代からの鉄道構造物を引き継いで維持管理している。国鉄時代に架設された鋼鉄道橋の多くはリベットで接合されたものであるため、鋼鉄道橋を維持管理していくうえで、リベットに関する技術は欠かせないものである。これまでの鋼鉄道橋の維持管理を通じて、リベットの維持管理上のメリットが多いことがわかったため、鋼鉄道橋のリベットに関する見識が高い㈱ビーエムシーと共同で鋼鉄道橋の補修へのリベット接合の適用を目指した取り組みを開始している。㈱ビーエムシーは,高度な維持管理技術と知識を途絶えることなく次世代に継承し、現場に活かしていくことを最大の思いとして、国鉄構造物設計事務所出身の鉄道橋の専門技術者が中心となり昭和62年(1987)に創業した鋼橋維持管理の専門会社である。そのため,鋼鉄道橋のリベットに関する高い見識を有している。JR西日本および㈱ビーエムシーによる取り組みは平成21年(2009)頃から始まり、実用化に向けた検討を重ね、平成24年(2012)には、供用中の鋼鉄道橋の補修にリベットを適用するに至っている。この取り組みに際し、リベットによる鋼鉄道橋の補修を施工するには、鉸鋲するだけでなく、除去することも必要になるため、リベット除去の技術に優れた職工を選定し、リベット鉸鋲のトレーニングを行っている。トレーニングでは、過去に多くのリベットを施工した経験がある有限会社谷写真付録-1:削孔式で除去されたリベット。頭のない軸側から削られている。写真付録-2:溶解式で除去されたリベット。十字に溶かされた軸。103