ブックタイトル「鉄構造物の保存と修復」日本語版

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概要

「鉄構造物の保存と修復」日本語版

し、交換されている(写真4-60)。そのため、取替られている部品は少なくない。ただし、昇降に関する部品(駆動装置は除く)は既存の部品に合わせて製作され、可動システムは保存されている。部品類の保守点検の他に、昇降時の可動桁の動きも定期的(年2回)に確認、調整されている。可動システム上、可動桁をほぼ水平に昇降させる必要があるため、ワイヤーでバランスを取っている。この調整作業は、地元の機械工が担当しているが、こうした作業を実施できる職人も減少しているため、安全な可動を継続させるためには、こうした職人の育成も課題となっている。(4)可動橋の維持管理方法-まとめ-重要文化財に指定されている3橋の可動橋のうち、駆動装置(モーターなどは除く)の部品まで当初の部品が継続使用されているのは、末広橋梁のみである。他2橋では、機械室内の部品の多くは取替られている。ただし、どちらの橋梁でも、取替られた当初の部品の価値が認められ保存されている。3橋のうち、現在保存修理工事が実施されている末広橋梁では、専門家による詳細な劣化調査が行われた。従来のグリスをより粘性の高いものへの変更や自動給油装置の設置など、歯車の磨耗を軽減させるための維持管理方法が検討されている。いずれの橋梁でも、継続的な可動と部品の長期的な使用を両立させるため、維持管理に取り組まれている。付録-リベット技術の現状(1)株式会社サッパボイラサッパボイラは、大正7年(1918)に創業(当初は颯波鐵工所)し、昭和62年(1987)に東日本旅客鉄道からの依頼で蒸気機関車のボイラの復元工事を引き受け、それ以降、鉄道各社の動態保存される蒸気機関車のボイラの修理、検査を担当している(表付録-1)。ボイラの修理の他には、一部建造物での実績がある。蒸気機関車のボイラで用いられているリベット径はφ19、22、25mmの3種類の丸鋲である。リベットガンも1種類のみを用いて実施し、3種類のリベットを鉸鋲する際には、同圧力の空気圧で施工される。ボイラの検査は、ボイラ内部にボイラ使用時の最高圧力の1.5倍以上の圧力を負荷させて、リベットや板と板の接合部分からの漏水の有無を確認する検査方法が取られている。リベット技術の継承は、若手従業員も修理作業に加わっているため、仕事を通して技術継承が行われている。(2)成和工業株式会社成和工業は、昭和32年(1957)から橋梁架設、諸機械据付工事を専業に実績を重ね、昭和42年(1967)に成和工業を設立させた。成和工業では、新規の橋梁架設、諸機械据付工事以外にダムの水門や歴史的な橋梁などのリベット修理工事を実施している(表付録-2)。保有工具は、φ1 3~φ25mmまでのリベット径に対応し、道路橋で用いられるφ19、22、25mmの規格、鉄道橋で用いられるφ13、16、19、22、25mmの規格に対応できるだけの設備が整っている。治具を製作すれば建築物に用いられているφ10mmの熱間成形リベットも施工できる可能性は高いとのことだった。ただし、船や大型機械品で用いられていたφ40mmのリベットは、成和工業で保有している機械では、施工が難しいと判断されている。JISで定められたリベットの規格は、φ10、12、13、14、表付録-1株式会社サッパボイラ鉸鋲実績(1987(昭和62)年以降)(提供:株式会社サッパボイラ)完成年内容(蒸気機関車)サイズ(φmm)本数1987復元19,22321993復元192901998復元193801998全般検査特殊102006全般検査22682006全般検査19802009大改修19,222902009復元19,225542010全般検査22,253382011修繕22182011全般検査22762012全般検査19482013復元221162016全般検査(更新)22120表付録-2成和工業株式会社鉸鋲実績(1989(平成元)年以降)(提供:成和工業株式会社)完成年内容サイズ(φmm)本数1989ダム228701993機械161001996ダム記載なし6,4801996ダム223,1761996工場試験22一式1997ダム224,8001997ダム18,226801998工場試験22321998ダム25(皿鋲)9,5281998工場試験記載なし一式1998ダム25(半皿鋲)5,4001999ダム22,252,5202000ダム22,2511,2642001ダム22,255,8122005ダム223,3802008ダム抜き替え2門2002010橋梁19,221082011工場設備丸鋲4502012橋梁19,223362013供試体記載なし122013工場設備丸鋲562014供試体記載なし一式2016工場設備皿鋲962016橋梁13 ? 19832017工場設備19(皿鋲)962017供試体19702018~工場設備22(予定)1162018~ダム22(予定)136102第6章鉄構造物の保存と修復に関する事例集