ブックタイトル「鉄構造物の保存と修復」日本語版

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概要

「鉄構造物の保存と修復」日本語版

カウンタウェイトバランスビーム平衝桁塔リンク輪転ギヤ操作リンク跳開桁トラ二オン図4-9:長浜大橋の可動装置の名称当初の駆動装置は、長浜ふれあい会館内で保存展示されている(写真4-55)。跳開桁の開閉は、跳開桁と輪転ギアを操作リンクで繋ぎ、輪転ギアを回転させることで開閉させ、バランスビームと中央カウンターウエイトを設置することで、開閉時の力を軽減させている(図4-9)。駆動装置以外の部品は当初の部品が継続使用されている。本橋は、日本最古の現役の道路可動橋であり、交通量も多いことから、普段は閉じた状態であるが、観光と検査を兼ねて毎週日曜日に1回開閉されている。定期点検は、月1回と半年ごとに実施される点検の2種類がある。月1回の点検では、機械室内の動力装置、輪転ギアへのグリスの注入を行っている。半年に1回実施されている維持管理では、輪転ギヤの歯車部分へのグリスの塗付を実施している。半年点検時には、跳開桁を90度まで跳開させるが、機械・部材への負担が大きいため、普段の定期可動時には跳開させる角度を60度ほどに留めている(写真4-56)。また、足場などを設置せずに維持管理点検を実施しているため、跳開桁とバランスビームを繋ぐリンクの上部の支点や塔上部とバランスビームの支点などに油の注入は実施されていない。本橋では、開閉回数に関する調査が実施され、竣工した昭和10(1935)年から平成24(2012)年までに累計で約9万9千回に達している。昭和10年から昭和38(1963)年まで(空襲により開通不能になった昭和20(1945)年から23年までを除く(橋の修理は昭和21年に完了))毎年1000回以上も開閉されていた。昭和50年代後半からは、開閉回数が200回を下回るようになった。通行船舶数も最盛期の昭和12(1937)年には11,000艘を超えていたが、昭和39年からは1,000艘を上回る年はなくなる。平成12年以降は、10艘にも達しない年が10年ある。このような状況ではあるが、可動橋として維持され続けてきたことに大きな価値がある。写真4-57:旧筑後川橋梁の可動部写真4-58:旧筑後川橋梁機械室内部写真4-59:取替られた機械類の保管状況(3)旧筑後川橋梁(筑後川昇開橋)【維持管理状況】本橋の駆動装置(写真4-57,58)は、平成5年から7年度(1993.10-1996.3)にかけて実施された整備工事で取替られている(写真4-59)。また、平成28年に発生した熊本地震によって、可動桁の動きを制御するカウンターガイドローラーの破損や可動桁の下に設置される車軸、テンションロッドなどが損傷写真4-60:地震などにより破損した部品の保管状況(今回の災害復旧工事とは関連しない部品が一部含まれている)101