ブックタイトル未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

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概要

未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

5.3.煉瓦差し替えに用いる補足煉瓦などについて【事例1:旧手宮鉄道施設機関車庫】?補修の経緯凍結破砕によって劣化した煉瓦を中心に差し替え、積み直し補修が実施された。差し替えによる壁面の違和感註を軽減させるために、補足煉瓦に工夫が施された27。?工法の説明差し替え、積み直しにあたり補足煉瓦を部位に応じて3種類使い分けた。1古煉瓦:構造補強工事における小屋組などの解体に伴い発生した煉瓦表面破損部分、妻面蛇腹、アーチ迫元欠失部分、正面アーチ積み直し、根積み見切り部分、ピットなどの界壁、註化粧面で使用(写真5-10)28。2再用煉瓦:近郊の煉瓦造建造物から採取された煉瓦小屋組み取合い部に使用。3特注煉瓦:当初の煉瓦に倣って新たに製造した煉瓦アーチ迫持煉瓦部分、アーチ用役物煉瓦(写真5-11)、内部、窓廻り煉瓦、内壁、根積み見切り部分、ピットなどの内部、見え隠れ部分または役物煉瓦に使用。?所見構造補強に伴い取り外された煉瓦を外観部分を中心に使用するなど、差し替えなどによる壁面の違和感を軽減させている。修理工事時に発生した古材を極力再用することは、材料情報の保存の点からも有効な方法と言える。【事例2:山形県旧県会議事堂】?補修の経緯県会議事堂の煉瓦壁面は、後世の改造による人為的な破損と凍結破砕による表面の剥離が見られた。この破損・劣化の状態と範囲に合わせて、異なる補修方法が選択された。?工法の説明補修方法を表5-3に示す。配管孔跡などの補修には、モルタルや煉瓦片を詰めるという方法がとられ、表面の仕上げのみ整えられた。また、既存部との調和を考え、人工煉瓦では煉瓦粉と樹脂剤の混合割合、化粧目地ではモルタルと顔料との配合を補修箇所に応じて微調整した。補足煉瓦については、当初の構造用煉瓦を納品した製造会社が現役であったため、当註初煉瓦の寸法に合わせた特注煉瓦が製造された29。?所見補修工事において、建設当初と同じ製造会社の煉瓦が用いられた例は、他ではほぼ見られず、貴重な事例といえる。また、文化財価値を考慮しながら煉瓦の破損・劣化状態に合わせて補修方法がきめ細かく吟味されている。表5-3破損・劣化煉瓦の補修方法写真5-10古煉瓦で差し替えられた開口部アーチ(白枠内)写真5-11車両出入口のアーチ積みを特注煉瓦で積み直す94第6章煉瓦造建造物の保存と修復に関する事例集