ブックタイトル未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

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概要

未来につなぐ人類の技17 煉瓦造建造物の保存と修復

物への遷移が見られないのであれば、現状のまま経過観察を続け、より広範囲で発生するようであれば水圧洗浄註などで除去する方法を検討すべきである11。ただし、これは環境改善を行わない措置であるため、再び地衣類・藻類が発生する可能性もある。そのため、洗浄後にどの程度の期間で洗浄前の状態に戻るか再生周期を観察し、周期に合わせつつ洗浄を行うことが望ましい。また、洗浄時の水圧が高い場合、煉瓦や目地を傷めることがあるため、水圧の調整は慎重に行う必要がある。コケ類、草本類でも同様の指摘ができるが、薬剤による除去・除草は、薬剤を養分にできる生物の発生を誘発させる恐れがあるため注意が必要である。抜根する際に煉瓦・目地を大きく傷める恐れがあるため、ある程度生長してしまった草本類に関しては、根が十分に痩せるまで枯らしてから抜根することで被害を最小限に抑えることができる。また、抜根した場所をそのままの状態で放置しておくと、水の侵入路となり、塩類劣化や凍結破砕などのより深刻な劣化へと発展することがあるため、抜根した箇所を塞ぐ処理が望ましい。写真4-6草本類の繁茂写真4-4地衣類・藻類の発生?コケ類の除去コケ類は、仮根を煉瓦・目地表面に伸ばすため、表面を傷める場合がある(写真4-5)。そのため、発生を確認した場合は除去する必要がある。除去方法としては、手作業による除去が多いが、煉瓦や目地が脆弱な箇所(粉状化・剥離・亀裂)で発生した場合には、煉瓦を大きく傷める恐れがあるため、無理な除去は控えるべきである註12。?蔦類の除去蔦類は、気根とよばれる根を伸ばし壁面に取り付きな註がら生長する(写真4-7)13。小規模の範囲であれば除去も容易であるが、大規模に広がってしまった蔦類の除去は大掛かりな作業を必要とする。そのため、できる限り初期段階で除去することが望ましい。気根は、僅かな亀裂や凹凸などを手がかりに取り付き生長するため、亀裂部分に取り付くと破損範囲を拡げる恐れがある。生長した蔦類を除去する際には、蔦類を完全に枯らした後に、壁面から気根を取り外していく必要がある。また、気根が亀裂部分に入り込んでいる場合には、どの程度気根が入り込んでいるかを確認した上で、作業を進めなければならない。蔦類が壁面全面を覆っている場合には、定期的に剪定註を実施し、生長をコントロールする必要がある14。また、註蔦類は高温多湿の環境下では、褐斑病15などにかかる可能性があるため、専門家に相談することが望ましい。写真4-5コケ類の発生?草本類の除去草本類の繁茂は、煉瓦・目地に亀裂を生じさせる場合があり、できるだけ小さな芽のうちに除去することが望ましい(写真4-6)。壁面の状態を観察する周期によっては、草本類の根が煉瓦・目地内部まで生長してしまい、写真4-7蔦類の繁茂89