ブックタイトル未来につなぐ人類の技16 近代文化遺産の保存理念と修復理念

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概要

未来につなぐ人類の技16 近代文化遺産の保存理念と修復理念

質疑応答より以下は、平成28年(2016)年1月15日に開催された研究会での質疑応答と意見を、抜粋及び編集したものです。●ドイツにおける安全対策と稼働遺産についてたくさんの例を見せていただきましたが、日本人は文化財を綺麗にしないと落ち着かないというところがあると思います。それが今の時代はかえって価値を損なうこともありますが、日本は安全対策として常に補強をしなければいけないという面もあります。震災や台風なども勿論ですが、見学者が怪我をしないように手すりや柵を作らなければ公開はできません。そのあたりが日本とドイツでは違うと思われるのですが、いかがでしょうか。また、ドイツには稼働遺産というものはあるのかどうかお伺いしたいです。安全に関しては、ドイツも日本も考え方は基本的に同じだと思います。日本では地震が非常に多いですが、ドイツでも昨年二度、非常に小さなものでしたが、地震を経験しました。見学者や労働者の安全の確保の問題は、ドイツでも日本でもそれほど差はないと思います。ドイツに限った話ではなく、EU諸国どこでも同じだと思いますが、度合いの差というものはあるかもしれません。例えば南の方は若干ルーズで、北の方はかなり厳しいというような差です。しかし勿論、基本的には同じように安全に注意を払っています。稼働遺産とはどういったものを考えていらっしゃるのでしょうか。飛行機でしょうか。汽車、船、車でしょうか。現在も営業していたり、使用されている工場やドッグなどを指します。鉱山などですと今はある程度見に行くことができますが、基本的には2018年までには鉱山は全て閉山になります。稼働している工場などで見学できるところはほとんどありませんが、例えばフェルクリンゲン製鉄所は見学することは可能です。30年ほど前に閉鎖された当時の状態を復原しており、機械も稼働しています。フェンスで囲まれ、あまり近づくことが出来ないようになっていますが、あれはもちろん見学者の安全対策のためです。繊維関係で同じようなことをやっているところもありますが、鉄やスティールでは危険すぎるので不可能だと思います。(ロルフ・フーマン)質疑応答より55