ブックタイトル未来につなぐ人類の技16 近代文化遺産の保存理念と修復理念

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概要

未来につなぐ人類の技16 近代文化遺産の保存理念と修復理念

て課題となるのは、本体への影響である。設備配管や機器設置のために本体に手をかけることの可否に始まり、設置を可とした際の位置、方法、規模、色彩などの検討がなされることになる。当然これらにも、利便性の追求に先立ち、保存の理念が求められことになる。4.新たな展開を迎えて重要文化財の修復は、そこに国庫補助金が費やされる場合、文化庁が承認する専門家による設計監理のもとにおこなわれる。専門家は「文化財建造物保存修理主任技術者(以下、「主任技術者」と省略)」と呼ばれ11、修復にあたり対象となる物件を修復するための調査研究を行い、その成果にもとづき関係者による保存の方針の策定を経て修復の設計を立て、引き続き施工にあたって監理を務め、最後にそれらの記録を「保存修理工事報告書」としてまとめる。この主任技術者が中心となって修復の理念と手法が実践されることとなるため、彼らの果たす役割は、単なる実務に留まらず、文化財保存の質の確保と方向性をも担う、修復の要となる。昭和40年代以降、修復に近代建築が登場したことにより、さまざまな点で伝統建築の修復とは異なる状況が生み出された。これに対処してきた、この主任技術者の業務をとおして近代建築・近代化遺産の修復の新たな展開を迎えた現状と課題を整理して本稿のまとめとする。主任技術者の役割近代建築・近代化遺産の修復の割合が増えるにしたがい、主任技術者を巡る状況は大きく変化した。新たな構造体、伝統建築にない内外装、耐震対策による特徴ある近代建築・近代化遺産の構造補強、多様となる積極的な活用のための設備の更新・充実、附属施設の新設など、工事種目が格段に増しており、このことはそのまま調査から設計に至る段階の業務が膨大な量に変化したことを示している。諸分野の連携、新たな体制またそれは、主任技術者の役割の範囲が、従来の伝統建築への取り組みで培ってきたノウ歴史的建造物修復関係者の育成・教育制度国(文化庁)の資格主任技術者講習会上級60h承認主任技術者講習会普通120h承認文化財建造物保存技術協会主催文化庁補助金専門家団体文化財建造物修理技術者研修幹部主任中堅初任者600h各県建築士会主催文化庁などからの補助金建築家・設計士地域文化財専門家研修専門家国宝、中世、大型社寺、300m2以上その他の重要文化財主任技術者の補助業務登録有形文化財重要伝統建造物保存地区県・市地域文化財重要文化財の修復職人・施工文選定保存技術化庁保持者の選木工/矩規術定檜皮葺・柿葺と桧皮採取/茅葺補屋根瓦/瓦屋根葺助漆喰塗/古式京壁金建具鋳物畳金唐紙石盤葺彩色選定保存技術保存団体建造物修理建造物木工桧皮葺・柿葺茅葺建造物装飾建造物彩色屋根瓦葺左官建具制作畳制作建物と一体の、その他の分野をどう取り込むことができるか市各地の団体町例:地域の建築家・設計士村の地域の各種職人補設計士+職人助設計士+職人+行政金近代建築・近代化遺産にどう臨むか図7重要文化財の修復関係者を中心とした養成・教育制度近代洋風建築・近代遺産の現状・課題-修復(調査・設計・施工・監理)の取組から見る-45