ブックタイトル未来につなぐ人類の技16 近代文化遺産の保存理念と修復理念

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概要

未来につなぐ人類の技16 近代文化遺産の保存理念と修復理念

近代洋風建築・近代化遺産の現状・課題-修復(調査・設計・施工・監理)の取組から見る-木村勉長岡造形大学名誉教授はじめに本報告は平成25年度から科学研究費補助金の採択を受けて実施した研究「近代建築昭和期修復の歴史?豊平館再修復を機会とする修復技術の理念と手法の研究? 1」と、これに連携させて長岡造形大学特別研究費助成を得ておこなった一連の研究をふまえておこなうものである。本研究会テーマ「近代文化化遺産の保存理念と修復理念」にしたがい、とくに重要文化財を主とした近代洋風建築(以下、「近代建築」と略す)・近代化遺産を対象に、その現状・課題を修復(調査・設計・施工・監理)への取り組みからとりあげる。1.伝統建築から近代建築・近代化遺産へ多様化する修復の対象まず、重要文化財の修復物件の推移を把握して近代建築・近代化遺産の動向を明らかにしておきたい。公益財団法人文化財建造物保存技術協会のホームページ2から重要文化財の修復物件を拾い、いくつかの要素により図1から図5までに整理する。同協会は、昭和46年(1971)に発足し、この時点から滋賀県、京都府、奈良県、和歌山県を除く全国の大半の重要文化財建造物の修復の設計監理に携わっている。よって、その実績がおおよそ全国の実態を示すものと見ることができる。図1は、修復物件の建築年代を近世以前と近代との区別で割合をみる。昭和46年時点ではすべてが近世以前であった。まもなく近代の物件が対象に加わり、近年になると近代以降の物件がおよそ30%から25%を占めるまでに至る。図2は、木造と非木造の構造別の修復物件の推移を見る。むろん図1にあるように、昭和46年次は近世以前の建築であって、すべてが木造であるが、やがて近代の物件が加わることにより、煉瓦造や石造、さらに鉄筋コンクリート造や鉄骨造が対象となってきたことを語る。非木造は、近年では10%から15%を占める。重要文化財修理の推移(建築年代)■近世以前■近世以降*文化財保存技術紹介のホームページから整理平成26年平成23年平成22年平成13年平成3年昭和56年昭和46年0%25%50%75%100%図1修理の推移(建築年代)近代洋風建築・近代遺産の現状・課題-修復(調査・設計・施工・監理)の取組から見る-37