ブックタイトル未来につなぐ人類の技16 近代文化遺産の保存理念と修復理念

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概要

未来につなぐ人類の技16 近代文化遺産の保存理念と修復理念

が窓口になって登録申請の手続きをおこなっている。(2)あらたな文化遺産かつての文化財は優品主義で、当初復元が基本だった。しかし産業土木遺産が近代化遺産という範疇で文化財に指定されるようになってからは、文化財の利活用が強調され、最近では産業遺産の修復に際しプロセス復元ということも話題になってきた。さらに近年では、現役施設の文化財も話題になっている。今までにも現役の発電所や橋梁なども国の重要文化財に指定されていたが、これらは現役の土木施設であるのに対し、近年の課題は現役の産業施設といえる。ここでは第二、第三の現役施設という意味で、以下のようなものも文化遺産として考えてよいのではないか、と問題提起をしたい(図2)。昨年(2015年)LIXILの展示会場で、企画展「鉄道遺構再発見」がおこなわれた(大阪:6~8月、銀座:8~11月)。あわせて講演会やトークショーも開催された。この企画に携さわり、コンセプトに掲げたのは「一度は現役を退いたが、またあらたな機能が与えられて現役になったもの」を紹介した企画展であった。一言でいえば、「構造物の第二の人生」。写真14は廃トンネルがワイン倉庫として活用され、隣接したもう一本の廃トンネルは観光歩道として利用されている。これは文化財の利用としてもあり得るが、紹介したいのは「第三の現役人生」といえるものだ。写真15は横浜市にある霞橋で、川崎と横浜の市境にあった操車場の上に架かっていた橋の江ヶ崎跨線橋を再利用したものだ。操車場の跡地が再開発されることになり、橋が不要になった。橋自体は、元々常磐線の隅田川橋梁(1896年)で100年橋梁(センテニアル・ブリッジ)である。いろいろ移転先を探した結果、横浜市が元の橋を縮小して保存した。縮小保存方法がたいへんユニークであった。ふつう縮小保存というと、真ん中部分をカットして突き合わせる方法が考えられるが、霞橋でとっ<今までの文化財>・優品主義、原形復原←産業土木遺産・利活用文化財、プロセス復原図2あらたな文化遺産+<あらたな文化遺産>・現場施設・第二の現場施設(構造物の第二の人生)写真14ワイン倉庫に活用されている深沢トンネル(山梨県)写真15第三の現役人生:霞橋(パンフレット「霞橋生まれ変わり、語り継ぐ」より)32