ブックタイトル未来につなぐ人類の技16 近代文化遺産の保存理念と修復理念

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概要

未来につなぐ人類の技16 近代文化遺産の保存理念と修復理念

写真10カメラを構えると、ポーズをとってくれたヒーロー写真9倉庫群の中に突如出現するフィギュア写真11旧官営八幡製鐵所の遠賀川水源地ポンプ室た。写真9の巨大なフィギュアは港の倉庫街には不向きだが、たまたまアニメ祭(PIER-2 ARTCENTER ANIME FESTIVAL)なので置いてあったのか、または当初からの置物であるのか不明だが、移動しようと思えば移動できる。しかし見る人にある種の驚きと印象を与えることは確かである6。港湾遺産地区でアニメ祭。両者のつながりは今ひとつ読み解けない面があるが、アニメ祭の老若男女の集客力を感じた。さまざまなコスチュームに身を包みアニメのキャラクターになった若者たちがポーズをとり、寸劇をしている。休憩をかねて軽食していた子供が、カメラを構えたらちゃんとポーズをとってくれた(写真10)。サービス精神がすごいと思った。子供もしっかりとヒーローになりきっている。あらゆるものや場所に、さまざまな工夫や楽しい仕掛け、気づきの驚きがあり、読み解くものにもわくわくするような感動を覚える。しかし基本的にはシステムが保存されていることがわかる。やり過ぎという印象をもつかも知れないが、取り外しが可能で、元の形にも復元できる。遺産の利活用で一番大切なのは、素人や専門家にとっても、わくわくして楽しめる雰囲気があることだ。高雄にはそれがあった。またある意味、港湾遺産という廃墟空間とアニメ祭の祝祭空間のギャップが同居している面白さを感じた。以上のような事例もふくめ産業遺産は建築遺産と違って、素人がひと目見て美しいと思えるものは少ない。むしろ汚いとか、油臭いとか、ガラクタ空間というような印象をもつ人もいるようだ。また産業遺産は、動力や機械などがあり、施設の中にはもともと動いていた機械類があった。止まっている施設だと、説明を聞いてもわからない場合が多い。産業遺産には少なくともイン30