ブックタイトル未来につなぐ人類の技16 近代文化遺産の保存理念と修復理念

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概要

未来につなぐ人類の技16 近代文化遺産の保存理念と修復理念

写真3旧コークス工場屋上からの俯瞰図写真5石炭貯蔵庫の一部をカットしてつくられた出口写真4石炭貯蔵庫内の周りの階段鑑賞できる動線になっていた。観覧車は、世界遺産の登録後、25年経ったら取り壊すことになっている(写真3)。今年(2016年)はその年にあたるが、現地はどうなっているのだろうか。仮設ではあるが、プールがつくられていた。夏場、子供はプールで泳ぎたいのでツォルフェラインにやってくる。大人もやってこざるをえない。世界遺産であっても人寄せの工夫を垣間みることができる。中の展示も興味深いが、ここでは展示や展示空間の中に遺産をどのように生かしているのかという視点に絞って見ていく。写真4と5は石炭貯蔵庫の内側と外側を示している。四角錐の貯蔵庫の中を先すぼまりに降りて行く空間体験を味わえる。写真5は外側から出口を見たところ。日本の制度にあてはめると、建物全体は重要文化財になるので、石炭貯蔵庫を切り込んで大きな階段室にするような大胆な工夫は、日本の文化財行政では無理である。広い石炭の集積場なので、場所によっては小さな箱が取り出し口に置いてあり、石炭の出し入れが想像できるような雰囲気をスマートに展示している。手を入れすぎたり、ここまで変えるのかと思うようなところもあったが、一般受けするところは十分あるようだ。上記の建物はツォルフェラインで最初のうちに見学した施設であった。それでも大胆な工夫をしていると感じられる改変や展示が多々あった。しかしその後、他の建物や施設でもっと大胆な改変が行われていたのを見ると、先の建物は石炭貯蔵庫の施設や空間を大事にしながらの改変と展示であったことがわかる。一見したところ近代文化遺産の保存理念と修復理念―産業遺産の利活用を通して27