ブックタイトル未来につなぐ人類の技16 近代文化遺産の保存理念と修復理念

ページ
20/62

このページは 未来につなぐ人類の技16 近代文化遺産の保存理念と修復理念 の電子ブックに掲載されている20ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

未来につなぐ人類の技16 近代文化遺産の保存理念と修復理念

写真18機械ホールにて議論が行われている様子写真17異なる種類の煉瓦写真19機会ホールのステンドグラスこのような建物の保存と修復はそれほど困難ではないが、解決すべきいくつかの問題がある。デュースブルク製鉄所の事例では、壁と柱に使用痕、意図的な損傷、過去の修理、戦時中の損傷や爆撃後の修理が見られ、鉄骨骨組の枠に合わせて積まれている煉瓦の種類が異なる(写真17)。煉瓦の壁は健全であったため、以前と同様の修理をすることが可能であった。屋根と内部に設置されたクレーンの重量を支える柱は、修理が困難となる。柱はU字型の鋼材を重い鋼の板で連結して構成されたものであり、建物の外部からも見ることができる。鉄骨骨組が組まれてホールが建造された当初、柱にはリベットが使用されていた。時代が不明の過去の修理も見られる。柱のリベットは外され、ネジが代用されていた。今日では多数のリベットを新しく作製することが困難であるため、ネジを使用しているが、我々はネジへの変更に関しては満足している。建物の内部から鋼材や柱を観察すると、ネジを取り外さなければいけない現在の状態がわかるが、鋼材や柱は煉瓦と共に構成されているため、内側の状態を確認することができない。そこで、修復処置の方法の検討のため、小さなテストエリアを設けてテストを行った。結果が良かったものは、建物全体で大規模に使用されることとなった。すでに形が崩れた煉瓦の壁と過去の修理痕をご覧いただいたが、実際の修理では、我々は昔の煉瓦の壁を再現するのではなく、新しい煉瓦を用いて最近修理されたものとわかるように修理を行った。18