ブックタイトル未来につなぐ人類の技16 近代文化遺産の保存理念と修復理念

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概要

未来につなぐ人類の技16 近代文化遺産の保存理念と修復理念

写真3景観公園で遊ぶ子どもたち図1「ルール地方の産業文化の道」写真4フェルクリンゲン写真5ハッティンゲン製鉄所る。1980年代半ば、ドイツでは2つの製鉄所において大規模な保存が始まった。最初に紹介する事例は、ルール地方のデュースブルグ-メイデリッヒにあるデュースブルグ製鉄所(写真2)で、私は1990年から保存・修復事業に携わっている。デュースブルグ製鉄所には、3基の高炉と、製鉄所を構成するのに必要な要素が揃っていたが、高炉は修復処置が必要と判断されていた。デュースブルグでは、製鉄の全工程と製鉄所を構成する要素全てを保存することが最終的に目的とされた。修理と修復の問題については後ほど説明する。我々が高炉を実際に調査した際、クリーニングにメスを使用できないこと、表面に保護のためのコーティング剤を塗布できないことが明らかとなった。そのため、我々はこの広大な面積の製鉄所を維持してゆくために、より確かな修復のアプローチを考案しなければならなかった。見学者が製鉄所の設備や、機械がどのように機能していたかを知るための展示を計画している修復設計計画から、その規模が推察される。25年前、この製鉄所跡地には市民のために大規模な景観公園が整備された。子どもたちはプレートや、見学用に設置された階段と足場のついた高炉に登ることが可能となっている(写真3)。ルール地方にある産業遺産は、デュースブルク製鉄所だけではない。かつて稼働していた多くの工業施設が、見学可能な産業遺産として残されている。現在、それらのいくつかは博物館となり、そのほかはデュースブルクのように公園となっている。図1の赤色の線と点は、「ルール地方の産業文化の道」と呼ばれているもので12