ブックタイトル未来につなぐ人類の技16 近代文化遺産の保存理念と修復理念

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概要

未来につなぐ人類の技16 近代文化遺産の保存理念と修復理念

では、どうすべきなのであろうか。いずれも、漠然とした事例しか紹介していないが、残すべき文化財としての個々の価値を見極めた上で何を残すべきなのかを決める必要があろう。その上でそれを実現するための方策を考えるという手順ではなかろうか。どうも、こう書くとタイトルにしている保存理念と修復理念とは少しずれた物言いになっているかもしれない。理念とは不変であり、変えてはいけないものであるのは当然だが、現実問題として、近代文化遺産の場合、100%それを満足させるのは難しいのも事実だと思っている。そこはもう、運用の問題なのかもしれない。みなさんの中にはこれまで述べた事柄について、「そんなことは重々承知している」とおっしゃる方々もたくさんおられると思う。何を今更という気が自分でもするが、今回、保存理念と修復理念という基本的なところに立ち返って考えてみると、これまで現場で「どうしたら良いのだろう」と悩んでおられる皆さんと主に考えながら、なかなか不変的に思える結論が出せないまま、それぞれの事例ついて手探りの状態ながらも進んできた。その中で、本当にこれで良かったのか、他にもっと良い案があったのではないか?と思いながら皆さん進めてこられたと思う。私自身もそういうように思いながら、「あゝあそこはこんなことをしたのか」とか「え!こんなことをしたの?」というような事例もあったりする。そのように思いながらも「これが正解です」と言えない自分がいることも確かであり、今回この研究会を開き、改めて文化財の保存と修復について考える良いきっかけになったと思っている。10