ブックタイトル未来につなぐ人類の技16 近代文化遺産の保存理念と修復理念

ページ
10/62

このページは 未来につなぐ人類の技16 近代文化遺産の保存理念と修復理念 の電子ブックに掲載されている10ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

未来につなぐ人類の技16 近代文化遺産の保存理念と修復理念

で、それが連続して起こるとレンガが風化してしまう(写真3)。このように風化してしまったレンガ構造物を修復する場合、どのようにするのが良いのだろうか。これまでは、風化してしまったレンガを取り除き新たなレンガと差し替えることで対処してきた構造物が多くある。ここでも同じレンガを差し替えているのであるから同種同材を使っているとして良いのだろうか。2?4.産業機械次に、産業機械について述べる。産業機械の保存に関しては、つい最近までは、使命を終えた産業機械類は、そのままの状態で博物館などに保存展示されていることが多かった。しかしながら、最近はそのように保存されている機械類を動かして見せるところが出てきている。いわゆる動態保存というものである。これは機械は動いてこそ価値があるという考え方のもと、引退した機械類を手入れし動くようにしたものがほとんどである。確かに動いている機械類を見ているとその機構やメカニズムがよくわかり、なぜその機械がそのような形をしているのか、あるいはどのような点が難しかったのか、当時その機械を製作した人たちがどのようなことを考えて設計したのかというようなことがよくわかるのは確かである。しかしながら、機械を動かせるようにすること自体、オリジナルを守る行為とは一線を画すものであり、文化財行政の一端を担うものとしては受け入れ難いのも事実である。これをどうするのか、同じものが複数台あれば良いが、そうでない場合は、レプリカを作成していただくしかないと思っているし、日頃からみなさんにはそのようにお願いしている。ただ、これもお金のかかる話であり、簡単な話ではないのも確かである。次に機械というと語弊があるかもしれないが、蒸気機関車の話をしてみたい。写真3レンガの劣化8