ブックタイトル未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復

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概要

未来につなぐ人類の技15 洋紙の保存と修復

写真5 大谷大学図書館ブックキーパーで脱酸性化された書籍(左)と簡易補修(右)て対象外の材質は別置し、処理後に綴じ直すといった工程が必要となる。公文書では、ページのしわ、綴じ穴の破れ、ホチキスやクリップの腐食といった劣化や損傷を呈するものが多く、このような資料に対しては簡易補修作業が有効である。さらに、綴じや紙質が脆弱で変形しやすい簿冊や冊子の場合は、簡易補修および脱酸性化処理の後にたとうやホルダを製作することで、今後の破損や変形などを予防することができる(写真6)。11-3 株式会社乃村工藝社乃村工藝社は、明治以降に開催された国内外の博覧会の公式記録、パンフレット、ポスター、入場券などの18,000点を超える紙資料を収蔵している。当社では、同コレクションの脱酸性化処理、並びに簡易補修処置、保存容器の製作といった一連の作業に取り組んでいる。博覧会関係資料の場合は、書籍、雑誌、毎葉資料、大型資料といった多種多様な形状の紙資料が含まれている。資料によっては物理的な損傷を呈しており、簡易補修を必要とする資料が多い。したがって、補修作業の見積り、ならびに脱酸性化処理の可否を確認するための事前点検作業の必要性が高い資料群といえる。また、処理後の保管方法についての工夫、改善も同コレクションの保存には重要な事柄と考え、引き続き検討を重ねている(写真7)。これまでに行った点検作業において、一部の資料が厚紙で手作りされたケースに収められていた点が特記できる。これらのケースは必ずしも保存に適した材質ではないものの、いずれも以前の所蔵者によって施されたもので、このような手製の箱が外的な影響を弱め、資料の保存を助けてきたことが推測できる。24