近代建築に使用されている油性塗料

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近代建築に使用されている油性塗料

26た施工における課題もある。下地調整や塗り重ね時間、温室度管理など、塗料と塗装が一体であった明治・大正時代の職人のノウハウが塗膜の持続性に影響していたと考えられるから、材料の特性を踏まえた実用的な施工方法の検討にも取り組む必要がある。近代の文化財建造物は、明治村の展示建造物のように活用されながら保存される例が多い。こうした場合は、風雨に晒されるなど外部環境に影響を受けるため、保存修理工事においては、実用に耐える仕様や施工方法を検討しなければならない。油性塗料の選択においても、ある程度の柔軟性をもった選択がなされるべきであろう。油性調合塗料は、JIS規格 K5511-1983から概要と種類を知ることができるが、少量でも手に入る生産の確保や、過去の成分表と原材料の公開が望まれる。塗料製造メーカーや塗装業の方々の協力を得ずに、塗装表現の復原は不可能であろう。加えて、塗膜調査や成分分析と並行して、仕様書や創建時の帳簿、塗師らによる記録といった近代の塗装技術に関する史料の調査・研究の進展も望まれるところである。写真31 東京駅巡査派出所外観写真32 カウンター下の塗膜調査