歴史・自然国家遺産の保存に関するラオス人民民主共和国大統領令
 
 
―条文目次―
第1章 総則
第1条 大統領令の目的
第2条 国家遺産
第3条 国家遺産の分類
第4条 国家遺産保存のための民事義務
第2章 国家遺産の分類
第5条 国家遺産の分類
第6条 不動産国家遺産
第7条 動産国家遺産
第8条 自然国家遺産
第3章 国家遺産の管理
第9条 国家遺産管理担当当局
第10条 国家遺産管理担当当局の権限及び権能
第11条 財産目録
第12条 国家遺産目録
第13条 移動
第14条 維持及び修理
第15条 国家遺産の滅失禁止
第16条 国家遺産を構成する遺物の商取引
第17条 国家遺産保存基金
第4章 遺物の発見及び発掘
第18条 遺物の発見
第19条 発掘
第20条 遺物調査の申請
第21条 発掘手続
第22条 発見物の所有権
第23条 国家遺産目録の遺物の取消
第24条 発掘許可の取消
第25条 発掘中に被った損失に対する損害賠償
第26条 情報文化省の権限
第27条 発掘区域の修復
第5章 補償及び制裁
第28条 補償
第29条 制裁
第6章 最終規定
第30条 適用
第31条 効力
 
 
 
 
ラオス人民民主共和国憲法第17条、第19条及び第53条2項に基づき、
1996年10月11日付の森林法No. 01-96/ANに基づき、
1996年10月11日付の水質・水資源法No. 20-96/ANに基づき、
文化・歴史・自然国家遺産に関する1997年6月12日付の国会常設委員会要求No. 19/CPANに基づき、
ラオス人民民主共和国大統領は以下の通り命じる。
 
 
第1章 総則
 
第1条(大統領令の目的)
文化・歴史・自然国家遺産の保存に関する大統領令は、愛国心、人民民主主義体制及びラオスの国民的或いは民族的な良き伝統を一層高める為、国家遺産を構成する文化的・歴史的・自然的価値を有する不動産及び動産からなる国家遺産の管理、保存及び使用に関する原則、規則及び措置を決定することを目的とする。
 
第2条(国家遺産)
文化・歴史・自然国家遺産は、文化的価値又は歴史的重要性を有し、ラオスのアイデンティティ、その祖先及びラオス国憲法に明定される公共財産、共有財産又は個人財産を含み、50年以上前の時代の歴史的・芸術的価値の大きい全ての遺物、及び本大統領令の定義に基づく国家遺産である自然景勝地を含む。
 
第3条(国家遺産の分類)
政府は、優れた国民的或いは民族的文化の管理、保存、開発政策を実施し、ラオスの歴史的痕跡である遺物及び遺跡を修復する。
 
第4条(国家遺産保存の為の民事義務)
全ての個人及び法人は、国家アイデンティティを実証する国家遺産の存在とその歴史的・芸術的・文化的価値を確保する為、国家遺産の管理、保存及び修復に貢献する義務を有する。
 
 
第2章 国家遺産の分類
 
第5条(国家遺産の分類)
文化・歴史・自然国家遺産は、以下の三区分に分類される。
− 不動産国家遺産
− 動産国家遺産
− 自然国家遺産
 
第6条(不動産国家遺産)
不動産国家遺産は、ビエンチャンのタート・ルアン寺院の仏塔、パケオ・パゴダ、ルアンプラバンのキエントン・パゴダ、ジャール平原等、動かせない遺物、遺跡、史跡を含む。
 
第7条(動産国家遺産)
動産国家遺産は、古代の仏像、青銅製太鼓、槍、剣、腕輪、土器等、動かせる遺物を含む。
 
第8条(自然国家遺産)
自然国家遺産は、コン・パペン、クアングシの滝、ルアンプラバンのディン洞窟等、国家遺産として保護されるべき歴史的・芸術的・文化的・科学的・技術的・民族的・環境的価値の大きい不動産である自然景観等、美しい環境を含む。
 
 
第3章 国家遺産の管理
 
第9条(国家遺産管理担当当局)
1.国家遺産管理担当当局は、情報文化省、省、市及び特別区レベルの情報文化局、郡レベルの情報文化部、村レベルの行政当局を含む。
2.国家遺産の有効な管理及び保存を確保する為、活動に関する助言及び意見を与える法人を設置することができる。
 
第10条(国家遺産管理担当当局の権限及び権能)
国家遺産管理担当当局は、次の権限及び権能を有する。
 (1)文化・歴史・自然国家遺産の管理及び保存に関する動向、計画及び規則の調査
 (2) 国家遺産を構成する不動産、動産及び自然景勝地、或いは国家遺産に含めるのに必要な諸条件を有し、地方遺産、国家遺産又は世界遺産として採択するよう提案される不動産、動産及び自然景勝地の目録作成
 (3) その権限及び権能に関連する全ての問題及び紛争の解決
 (4) 国家遺産の管理及び保存に関連する外部との協力・交流関係の維持
 (5) 国家遺産の管理及び保存の為、国内外の財源の動員
 (6) 法律によって規定されたその他の権限及び権能の実施
 
第11条(財産目録)
財産目録とは、特に所在地、寸法、重量、数量、形状、価値等、国家遺産に関する情報の収集であり、これに基づき目録は五年毎に作成される。
 
第12条(国家遺産目録)
国家遺産目録とは、不動産・動産・自然国家遺産、自然景勝地、国家史跡、及びラオス人民民主共和国領土内の地表、地下又は水中の革命的発見物の登録であり、五年毎に行われる。
 
第13条(移動)
国内又は国外への国家遺産を構成する動産の移動は全て情報文化省によって許可されなければならない。国内への文化財及び遺物の全ての輸入も同様に情報文化省によって許可されなければならない。
 
第14条(維持及び修理)
あらゆる種類の不動産・動産・自然国家遺産の全ての維持、修理又は改築は、情報文化省の許可を得てのみ行なうことができる。
 
第15条(国家遺産の滅失禁止)
1.全ての個人又は法人は、故意であれ過失であれ、不動産・動産・自然国家遺産である遺物、芸術的建造物群に損傷を与えることを禁止される。
2.情報文化省の承認なしに国家遺産を構成する遺跡又は自然景勝地の境界内に建物、食堂又はリクリエーション施設を建設することは禁止される。
3.個人又は法人の財産であり、且つ国家遺産として登録されている不動産・動産・自然国家遺産の使用、修理又は改築は、情報文化省によって許可され情報文化省の規則に基づいて行なわれなければならない。
 
第16条(国家遺産を構成する遺物の商取引)
1.いかなる個人又は法人も、情報文化省の特別許可なしに国家遺産を構成する遺物の商取引又は移転を行なってはならない。
2.自らの財産であり、且つ国家遺産として保護されている遺物の売買又は移転を希望する全ての人又は法人は、情報文化省に予め申請書を提出しなければならない。申請書は、財産の実際の売買又は所有権移転日の1ヵ月前に情報文化省に提出されなければならない。情報文化省はまた、その後3ヵ月以内に売買又は移転について通知されなければならない。
3.当該遺物が重要な歴史的価値を有する場合、政府はそれを妥当な価格で購入する優先権を有する。
4.国家遺産に属さない遺物の商取引は情報文化省の特別規則(reglements spécifiques)に基づいて行われる。
 
第17条(国家遺産保存基金)
国家遺産の有効な管理及び保存を確保する為、政府は国家遺産保存基金を設立する。この国家遺産保存基金は国家予算、個人、団体、社会事業団体及び国際機関の寄付とその他の財源によって賄われる。
 
 
第4章 遺物の発見及び発掘
 
第18条(遺物の発見)
歴史的・文化的・考古学的価値の大きい遺物、遺跡、史跡を発見した全ての個人又は法人は、行政当局、郡の情報文化部、省、市及び関係特別区の情報文化局又は情報文化省に、発見後3日以内に通知しなければならない。
 
第19条(発掘)
1.いかなる個人又は法人も、情報文化省の許可なしに自らの土地又は第三者に属する土地で遺物又は歴史的・美術的・科学的・技術的、考古学的価値のある事物を探す為の発掘を行なってはならない。
2.遺物の探求は、科学的又は歴史的研究に役立てるか又は当該遺物を保存する目的でのみ行なわれなければならない。
 
第20条(遺物調査の申請)
発掘又は遺物の調査を希望する全ての個人又は法人は、情報文化省に申請書を提出しなければならない。申請書は当該区域、その重要性及び調査期間を明示しなければならない。発掘が第三者に属する区域で行われる場合には、その区域の所有者側からの同意証明書が申請書に含まれなければならない。
 
第21条(発掘手続)
1.発掘は、情報文化省によって決定される条件及び措置に従って行われる。許可された当事者は、自ら発掘を行なわなければならず発掘に対して全責任を負う。
2.発掘期間中許可された当事者は、情報文化省に定期的に報告書を提出しなければならない。
3.考古学的に重要な遺物又は遺跡の発見毎に調査者は、それを保存し検討と最終的な買入れの為、情報文化省に直ちに全体として引き渡さなければならない。
4.発掘の終了時には結果報告書を作成し、図面、写真、報告書等、その他の文書を添付するものとする。
5.発掘の終了後3年以内に調査者は、発掘の科学的又は歴史的結果を公表しなければならない。発掘結果が公表されることなく3年が経過した場合、情報文化省はそれを公表する権利を有する。
 
第22条(発見物の所有権)
1.発掘中に発見された全ての不動産又は動産は、国家の所有物になる。発掘の終了時に調査者は、発見物及び関連情報全てを情報文化省に提出する。
2.その区域の所有者は、発見物の所有者になることはできないが、国家によって然るべく損害賠償される。
 
第23条(国家遺産目録の遺物の取消)
1.不動産・動産・自然国家遺産は、遺物としての文化的・美術的・文学的・歴史的価値が低下した場合、情報文化省の要請があれば、国家遺産目録からこれを取り消すことができる。
2.地方遺産の場合には、当該地方行政当局との協力・合意に基づき、省、市又は特別区の情報文化局の要請があれば、決定権限は情報文化省に属する。
 
第24条(発掘許可の取消)
1.情報文化大臣は以下の場合、発掘許可を取り消し、発掘の中止を指示する権限を有する。
 (1) 遺物の発掘又は保存が、国家の技術基準又は規則に違反して行われている。
 (2) 発掘を許可された区域が、情報文化省自体が発掘を行なう必要のある非常な重要性を伴っている。
2.情報文化大臣から発掘中止通知を受領次第、調査者は、全ての作業を直ちに中止しなければならない。
 
第25条(発掘中に被った損失に対する損害賠償)
前条に示されている技術基準又は規則に対する違反の為、発掘許可を取り消された人又は法人は、発掘において生じた費用を賠償又は補償されない。情報文化省自体による発掘を必要とするほどその区域が非常に重要である為に許可が取り消された場合、調査者は発掘で生じた費用を補償されるが、損害賠償を請求することはできない。
 
第26条(情報文化省の権限)
1.情報文化大臣は、ラオス人民民主共和国の領土全体に亘って考古学上の発掘調査を行なう権限を有する。
2.発掘調査は、第三者の所有する区域では、その区域の所有者の事前同意を得てのみ行なうことができ、その後5年以内に終了しなければならない。
 
第27条(発掘区域の修復)
考古学上の発掘調査を完了した全ての個人又は法人は、埋め戻し植樹等によってその区域を元の状態に修復しなければならない。
 
 
第5章 補償及び制裁
 
第28条(補償)
文化・歴史・自然国家遺産の管理及び保存において良好な結果を達成した全ての個人又は法人は政府によって褒賞され、政府によって決定されたその他の恩典を受ける。
 
第29条(制裁)
本大統領令に違反した全ての個人又は法人は違反の性質に従い、法規及び規則に基づいて警告されるか、教示されるか、罰金を課されるか、又は処罰される。
 
 
第6章 最終規定
 
第30条(適用)
ラオス人民民主共和国政府は本大統領令を適用する。
 
第31条(効力)
1.本大統領令は、ラオス人民民主共和国大統領による署名日を以って効力を生じる。
2.本大統領令に違反する全ての規則は廃止される。
 
 
ビエンチャン、1997年6月20日
       
                          共和国大統領
 
                           署名及び印影:
 
Nouhak Phoumsavan