文化遺産の保護に関する決定
(1993年2月10日採択)
 
 
―条文目次―
前文
第I編 総則(第1〜4条)
第II編 特別規定
第1章 カンボジア国家遺産保護機関(第5〜7条)
第2章 不動産文化財群保護特別措置(第8〜13条)
第3章 目録(第14〜17条)
第4章 選定(第18〜34条)
第4章A クメールの考古学的文化財の所有権(第34条A〜34条C)
第5章 先買権及び収用権(第34条D〜37条)
第6章 文化財の商取引(第37条A〜43条)
第7章 偶然の発見(第44〜46条)
第8章 考古学上の発掘調査(第47〜57条)
第9章 文化財の輸出(第58〜64条)
第10章 文化財の輸入(第65〜68条)
第11章 法的保護及び刑罰規定(第69〜72条)
第III編 最終規定(第73〜76条)
 
 
 
カンボジア主権の受託機関である最高国民評議会は、以下の内容の決定を審議、採択し、最高国民評議会議長はこれを公布する。
 
 
第I編:総則
 
第1条【目的】
本決定は、文化財を滅失、変更、変形、発掘、譲渡及び不法な輸出入から保護することを目的とする。
 
第2条【適用範囲】
1. 本決定は、公有であれ私有であれ、その保護が公益となる、動産及び不動産から成る文化財に適用される。
2. 本決定に別段の定めがない限り、本決定は、国家文化遺産に属する文化財のみに適用される。
 
第3条【国家文化遺産】
国家文化遺産に属するのは、次の通りである。
a. 国内で創作又は発見された文化財
b. 当該文化財の元の帰属国の管轄当局の同意を得て、無償で受け取ったか又は合法的に取得した文化財
 
第4条【文化財】
本決定において文化財とは、文明又は自然の発達のある段階を明らかにする科学的・歴史的・芸術的・宗教的性格を有し、その保護が公益となる全ての人間の所産及び全ての自然の産物を意味する。
 
 
第II編:特別規定
 
第1章 カンボジア国家遺産保護機関
 
第5条【カンボジア国家遺産保護機関】
本決定を管理する管轄当局は、パリ条約によって定められた手続の結果として生まれたカンボジア憲法によって定められたカンボジア国家遺産保護機関(「機関」)又はその他の全ての管轄当局である。
 
第6条【権限】
「機関」は、特に次の権限を有する。
 a. 文化財保護の為に必要な決定
 b. 目録への記載又は選定の提案に関する意見の表明
 c. 本決定によって定められた全ての許可申請に関する意見の表明
 d. 全般的な本決定の確実な実施
 
第7条【構成及び組織】
「機関」の構成及び組織は、最高国民評議会の決定によって定められる。
 
 
第2章 不動産文化財群保護特別措置
 
第8条【保護区域】
1. 寺院、その他の史跡又は遺跡を含む保護区域は、その境界を画定することができる。
2. 保護区域の境界は、「機関」の意見聴取後、最高国民評議会によって画定される。
 
第9条【所有権及び選定】
1. 保護区域は国有財産に属する。
2. 保護区域内にある全ての文化財は、職権によって選定される。
3. 保護区域は、本決定の第24条及び第26条乃至33条に基づく選定の全ての効果に従う。
 
第10条【建築禁止】
1. 全ての保護区域境界内に新しい建造物を建築することは、禁止されている。
2. 例外的に「機関」は、文化財群の維持及び保護に必要な建物の建設を許可することができる。
 
第11条【自動車交通の制限】
保護区域内の自動車交通は厳しく制限される。「機関」は、その為に必要な執行措置を講じる。「機関」は、文化財保護に必要であることが明らかになった場合には、保護区域内の交通を禁止することができる。
 
第12条【保護区域の見学】
1. 保護区域の見学が許可される場合は、「機関」によって定められた入場料の支払い、又は「機関」によって決定された免除を条件とする。
2.「機関」は、前納により一定期間、国内の全ての保護区域に何回でも入場する権利を与える入場料を導入することができる。
 
第13条【特別基金】
1. 入場料は国家文化遺産の保存・維持措置の資金に充てられる特別基金に払い込まれる。
2. 特別基金の管理は、その規約に基づき「機関」に帰属する。
 
 
第3章 目録
 
第14条【目的】
目録への記載は、直ちに選定する必要はないが、科学的・歴史的・芸術的・宗教的観点から一定の重要性を有する公有又は私有の文化財の登録を構成する。
 
第15条【決定】
目録への記載は「機関」の決定によって告示され、「機関」は、これを当該文化財の所有者又は所持者に通知する。
 
第16条【目録の効果】
1. 目録への記載は当該文化財の所有者又は所持者に対し、当該文化財の譲渡、移動、滅失、変更、変形、修理又は修復を目的とする全ての活動に着手する1ヵ月前に、「機関」に通知する義務を生じる。
2. 「機関」は、選定手続を開始している場合のみ、その活動に異議を申し立てることができる。
 
第17条【失効】
目録への記載は、通知後6ヵ月以内に選定提案が続かない場合、失効する。
 
 
第4章 選定
 
第18条【目的】
選定とは、「機関」がその保護が科学的・歴史的・芸術的・宗教的観点から公益になり、目録に記載された公有又は私有の文化財を登録する行為である。
 
第19条【選定提案】
選定提案は「機関」によって行なわれ、「機関」はこれを所有者又は所持者に通知する。
 
第20条【失効】
選定提案は、通知後12ヵ月以内に選定が続かない場合、失効する。
 
第21条【選定の決定】
1. 選定は「機関」の決定によって告示される。
2. 「機関」は所有者又は所持者の意見聴取後、占有から3ヵ月以内に決定を下さなければならない。
 
第22条【通知】
選定は、所有者又は所持者、及び必要があれば土地保全局(不動産台帳の管理を担当する局)に通知される。
 
第23条【職権による選定】
所有者の同意がない場合、選定は職権によって告示される。
 
第24条【補償】
1. 選定はその結果が生じる前に、損害賠償としての補償金の支払いにつながることがある。
2. 申請書は、選定の決定通知の日から3ヵ月以内に提出されなければならない。
3. 補償金は「機関」によって定められる。
4. 原則又は補償額に対する異議申立ては管轄司法当局に持ち出される。
 
第25条【選定文化財目録】
1.「機関」は一年の間に選定された文化財目録を作成する。
2. 本目録は有効な手段によって、特に官報又はその他の政府刊行物によって公表され、州によって作成され、特に以下の項目を示す。
a. 選定文化財の性質
b. 設置場所
c. 所有者の氏名
d. 選定日
 
第26条【時効取得の不能】
選定文化財は時効取得不能である。
 
第27条【公有文化財の譲渡不能】
公共団体又は公法人に属する全ての選定文化財は譲渡不能である。
 
第28条【選定文化財の譲渡条件】
選定提案又は選定がなされた文化財を譲渡する者は、違反すれば譲渡行為無効の罰を受ける条件で、以下の義務を負う。
a. 譲渡行為の実行前に当該文化財の状態を取得者に知らせること
b. 当該文化財の譲渡行為後1ヵ月以内に「機関」に通知し、取得者の氏名及び住所と譲渡日を知らせること
 
第29条【材料又は断片の譲渡】
1. 選定提案又は選定がなされた文化財から不法に取り外した資料又は断片の譲渡、並びに当該資料又は断片の占有又は保持を第三者に譲渡することを目的とする全ての行為は、絶対的に無効である。
2. 引き渡された資料又は断片を元に戻すことに所有者と共に連帯責任を負う第三者は、公共団体側からの補償金を請求することはできない。
 
第30条【作業実行に対する許可】
選定提案又は選定がなされた文化財は、「機関」の許可なしに移動、滅失、変更、変形、又は修理・修復作業に付すことはできず、「機関」はその条件を定めてその実行を監督する。
 
第31条【計画書及び予定表を提出する義務】
選定提案又は選定がなされた文化財を変形、修理又は修復する為の許可を申請する所有者は、全ての計画書、予定表及び有用文書を「機関」に提出しなければならない。
 
第32条【保護及び費用】
1. 選定文化財の所有者は、それを確実に保護しなければならない。
2. 当該文化財の修復、修理又は維持によって生じた費用は、所有者がこれを負担する。公共団体は、その費用の一部又は全部を負担することができる。
 
第33条【緊急復原作業】
1. 「機関」は、自らの費用で選定文化財の緊急修復・修理作業を行なう。
2. 当該文化財の所有者は、その作業の実行に異議を申し立てることはできない。
 
第34条【選定の効果】
1. 選定の効果は、選定提案の通知日から正当な権利として適用される。
2. その効果は、所有者の変更後も当該文化財に付随する。
 
 
第4章A クメールの考古学的文化財の所有権
 
第34条A【公有財産】
地下であれ、偶然見つかったものであれ、合法的又は不法な発掘時であれ、本決定日以後カンボジア領土から出土した全ての考古学的文化財は公有財産に属する。
 
第34条B【私有財産】
1. 本決定日に私有であるカンボジア領土から出土した全ての考古学的文化財は、所有者によって「機関」に通知され、「機関」によって目録に記載されなければならない。
2. 目録に記載された私有の考古学的文化財は、先買権及び収用権に従わなければならない(第34条D乃至37条)。
 
第34条C【通知の欠如】
本決定日後1年以内に「機関」に通知されず本決定日に私有であるカンボジア領土から出土した全ての考古学的文化財は、公有財産に属する。
 
 
第5章 先買権及び収用権
 
第34条D【譲渡不能文化財の除外】
本章の規定は、第27条及び第34条Aに基づき譲渡不能公有文化財を構成するクメールの考古学的文化財には適用されない。
 
第35条【先買権】
1. 「機関」は、選定提案又は選定がなされた目録記載のその他の文化財、及びいかなる場合も100年以上前の古文化財の全ての売買に関して先買権を行使することができる。
2. 前項に示された文化財を売買しようとする者は、1ヵ月前に「機関」に通知しなければならない。
 
第36条【先買権の行使方法】
1. 第35条2項に規定された通知の受領日から1ヵ月以内に「機関」は、売買を提案された文化財を定められた条件及び価格で購入するか又は取得を断念するかについての決定を所有者に通知しなければならない。
2. 前項に示されている1ヵ月間の満了時に回答がない場合は、先買権の行使断念に相当する。
 
第37条【収用権】
公共団体は公用収用に関する法律によって規定された形で、選定提案又は選定がなされた目録記載の不動産文化財を収用することができる。
 
 
第6章 文化財の商取引
 
第37条A【商取引を認められない文化財】
本編の規定は、第27条及び第34条Aに基づき譲渡不能公有文化財を構成するクメールの考古学的文化財には適用されない。
 
第38条【承認】
本決定に基づき譲渡不能であるもの以外の文化財の商取引は、本決定に規定された条件に基づいて承認によって許可される。承認は「機関」によって与えられる。
 
第39条【承認の内容】
承認は、商人の氏名及び住所、商人が商取引を行なうことを希望する店舗の正確な表示、並びに「機関」の同意への言及を含まなければならない。
 
第40条【商人の義務】
許可された全ての商人は、次の義務を守らなければならない。
a. 文化財の商取引承認の保持者であることを示す告示を店舗の入口に掲示する
b. 活動を行なうことを許可されている店舗の外に販売用の文化財を置かない
c. 所有する文化財、日々の売買活動を詳細に記入する帳簿を維持する
d. 要請があり次第、前文に示された帳簿を監督官に提示する
e. 文化財の輸出に関する本決定の規定を店舗の目立つ場所に掲示する
f. 検査の場合には、所有する全ての文化財を監督官に見せる
g. 検査の場合には、監督官の要求に応じその仕事を簡便ならしめる
h. 検査の場合には、監督官を手助けしその仕事を簡便ならしめる
i. 店舗を移動する場合には、「機関」に通知する。
 
第41条【監督活動】
1. 監督官は、好機と判断したときにはいつでも店舗に立ち入って検査し、そこにある文化財を調査、記録し、帳簿を閲覧することができる。
2. 監督官はまた、与えられた承認に基づき倉庫又は店舗として使用されている場合、商人の住居を検査する権利を有する。
 
第42条【承認の取消】
承認保持者がいずれかの義務の怠慢又は違反していることが明らかになった場合、或いは本決定の規定に対する違反を構成する行為の為に管轄裁判所によって有罪を宣告された場合、「機関」は文化財商取引承認を取り消すことができる。
 
第43条【取消の影響】
1. 前条の規定に基づいて承認が取り消された場合、その商人は文化財の購入を差し控えなければならない。
2. 当該商人は6ヵ月を越えない期間、まだ保有している文化財の販売を許可される。
 
 
第7章 偶然の発見
 
第44条【発掘中止及び届出の義務】
工事又は何らかの行為の結果として、遺跡、遺物、住居跡、古代彫刻、碑銘、又は先史学、歴史学、考古学、民族学、古生物学、若しくは歴史学・人文科学のその他の分野全般にとって重要になりうる財物一般等の文化財が発見された場合には、その文化財の発見者及びそれが発見された土地の所有者は、工事を中止し直ちに地元警察に届け出る義務を負う。地元警察は、これを直ちに州知事に伝達しなければならない。州知事は「機関」に通知し、当該文化財及びその場を確実に保護するために必要な措置を講じる。
 
第45条【工事の一時的停止】
1. 「機関」は、前条に示されている届出日から30日以内に工事の一時的停止、及び講じるべき救済措置を通知しなければならない。
2. その措置の通知が当該期間内に行なわれない場合は、一時的停止の効果は終了する。
3. 「機関」は、偶然に発見された不動産的性格のものに関して講じるべき最終措置を決定する。
 
第46条【発見物の所有権】
1. 偶然に発見された不動産的性格の発見物は公有財産に属する。
2. 「機関」は、三週間以内に合意又は専門家の意見によって決定される対象物の価値の3分の2以上の適切な褒賞を与える。
 
 
第8章 考古学上の発掘調査
 
第47条【許可】
「機関」の許可を前もって得ていない限り、何人も先史学、歴史学、考古学、民族学、古生物学又は歴史科学・人文科学のその他の分野全般にとって重要になる文化財を発見する目的で、陸上又は水中の発掘又は探査を行なってはならない。
 
第48条【許可の受領者】
1. その専門能力が周知されており必要な経験及び資力を有する学術機関のみが、発掘調査を行なう権限を与えられる。
2. 発掘調査の許可を受けた外国の学術機関は、その作業に国内の学術機関を参加させなければならない。
 
第49条【発掘者の義務】
発掘調査許可を有する学術機関は、
a. 発見した文化財を特別記録等に記入し、これを各発掘作業期間の終了時に「機関」に提出する。
b. 発掘現場と発見した文化財を保護し、全ての必要な保存措置を講じる。
c. 発掘作業の続行を「機関」に定期的に知らせる。
d. 各発掘作業期間の終了時に、発見された全ての文化財の写真を含む写真記録を添付した概要報告書を提出する。
e. 各発掘作業期間の終了から1年を越えない期間内に発掘調査結果に関する詳細な学術報告書を提出する。
f. 要請があり次第、発掘を視察しa項に示されている特別記録簿を閲覧することを監督官に認める。
g. 発掘者の学術的所有権を尊重することを条件に関心のある科学研究者に対して発掘現場への立ち入りを認める。
h. 作業終了後五年以内に行われた発掘調査の学術的結果を公表する。
 
第50条【発掘者の権利】
発掘調査許可を有する学術機関は、次の権利を有する。
a. 発見物の学術的所有権
b. 第51条2項に基づいて与えられる文化財の所有権
c. 第49条h号に示されている期間内に公表することを条件として発掘調査の学術的結果の優先的出版権
 
第51条【発掘の産出物の所有権】
1. 学術機関によって発見された文化財は公有財産に属する。
2. 公共団体は、重複している文化財、及び種類、様式、材質、形状、学術的・美術的価値等の点で同じものが公有コレクションの中に既にある為、必要不可欠ではない全ての文化財を学術機関に与えることができる。
 
第52条【監督及び監視】
1. 「機関」は、確実に発掘を監督し、現場を監視する。
2. 「機関」は、発掘されて保存されることになっている現場を保護する為、全ての必要な措置を講じる。
 
第53条【私有地での発掘】
1. 「機関」は、予め所有者に通知後、個人に属する土地での発掘を許可することができる。
2. 土地の公用使用の初期に、対立意見を含む(contradictoire)原状確認書が作成されなければならない。
3. 公用使用は3年間継続し更新できる。
 
第54条【原状回復及び補償】
前条に示されている土地の所有者は、原状回復、享受の喪失、及び場合によっては被った損害に対する補償を受ける権利を有する。
 
第55条【収用】
学術的・歴史的・美術的・宗教的観点からその保護が公益となる不動産文化財が発見された場合、公共団体は公用収用に関する法律に基づいて収用権を行使することができる。
 
第56条【許可の取消】
1. 発掘許可保持者が、第49条に示されている義務のいずれかに違反した場合には、「機関」は許可の取消しを決定することができる。
2. 発掘は許可取消の通知日から中止される。
 
第57条【許可取消の効果】
発掘許可が取り消された場合、その保持者は占有剥奪、又は被った損害に対する補償を請求することはできない。但し、公共団体によって続行される場合には、当該保持者は発掘続行に資し得る作業又は設備の代価の償還を得ることができる。
 
 
第9章 文化財の輸出
 
第58条【許可】
「機関」が特別許可によって許可した場合を除き、カンボジア国外への文化財の輸出は禁止される。
 
第59条【許可付与期間】
「機関」は申請書が輸出者によって税関に提出されてから3ヵ月以内に立場を決めなければならない。
 
第60条【輸出税】
1. 文化財の輸出は税金を課される。
2. 税額は「機関」によって定められる。
3. 税額は第13条に示されている特別基金に払い込まれる。
4. 第62条に挙げられている区分の文化財は全ての税金を免除される。
 
第61条【条件】
輸出許可を付与する前に、「機関」は次の諸点を確認しなければならない。
a. 計画されている輸出が国家文化遺産の弱体化を伴わない。
b. 公有収集が輸出申請されたものに類似した文化財を含んでいる。
c. 輸出される文化財は歴史科学・人文科学全般の特定分野の研究にとって測り知れないほど重要ではない。
 
第62条【例外】
「機関」は以下の文化財の輸出の場合には、許可を与えなければならない。
a. 第51条2項に基づき発掘許可を保持する外国の学術機関に与えられる文化財
b. 博覧会又はその他の学術的目的で外国に一時的に送られる文化財
c. 外国の博物館又はその他の同様の機関からの文化財と交換される文化財
d. カンボジアに合法的に輸入された文化財
但し、本条b号に示されている場合には、輸出ライセンスの付与時に、当該文化財の返還が行われるべき諸条件と、当該文化財の保存にとって適切と判断する全ての保証、特に万一に備えての保証金供託又は全ての保険引受けについて、書面で明示しなければならない。
 
第63条【差押及び没収】
許可なしでの文化財輸出の試みは、公有収集の為の差押及び没収を伴う。
 
第64条【返還請求権】
不正輸出の試みを信憑性のあるものにする重大な状況証拠がある場合、「機関」は公有収集の為に、合意又は専門家の意見によって定められた公正価格の支払いによって、輸出を拒否された全ての文化財の返還を請求することができる。
 
 
第10章 文化財の輸入
 
第65条【原則】
元の帰属国の国法に違反して輸出された文化財の輸入は禁止される。
 
第66条【差押及び返還】
不法に輸入された文化財は、差し押さえられ「機関」の保護下に置かれ、相互性を条件として国際的な協定及び基準に基づいて帰属国に返還される。
 
第67条【返還の費用】
返還の費用は申立国の負担とする。
 
第68条【輸入申告】
1. 合法的に輸入される文化財は税関に申告されなければならない。
2. 税関によって保持者に渡される受領書は証拠となり、再輸出の場合に提出されなければならない。
 
 
第11章 法的保護及び刑罰規定
 
第69条【不服申立】
1. 本決定に基づいて行われる決定は管轄司法当局に不服申立できる。
2. 管轄権を有するのは当該不動産又は動産がある管轄区域内の第一審裁判所である。
3. 民事及び行政訴訟手続の一般規定が適用される。
 
第70条【違反及び刑罰】
1. 過失によって以下の行為を行なう者は、6ヵ月から5年までの拘禁刑、及び鑑定人の意見で見積られた当該文化財の価値に相当する罰金、又はこれらの両刑罰のうちの一方のみを課される。
 a. 第16条1項によって課された義務を守ることなく、目録に記載された文化財を譲渡、移動、滅失、変更、変形、修理又は修復すること
 b. 第18条及び第35条2項によって課された義務を守ることなく選定提案又は選定がなされた文化財を譲渡すること
 c. 許可なしに、選定提案又は選定がなされた文化財を移動、滅失、変更、変形、修理又は復原すること(第30条1項)
 d. 所有する選定文化財を確実に保護しないとき(第32条1項)
 e. 許可なしに、第38条及び第47条に基づく許可制度で規制されている活動を実行又は実行しようと試みるとき
 f. 第40条及び第49条に基づいて課される義務を果たさないとき
 g. 作業中の発見を届け出ず、その作業を中止しないとき(第44条)
 h. 第62条2項に示されている一時的輸出の場合、「機関」によって定められた諸条件に従わないとき
 i. 文化財を不法に輸入するとき(第65条)
 j. 文化財の合法的な輸入を税関に申告しないとき(第68条1項)
2. 犯罪者が故意に行なった場合、刑罰は2年から8年までの拘禁刑、及び鑑定人の意見で見積られた当該文化財の価値に相当する罰金、又はこれらの両刑罰のうちの一方のみとなる。
3. 許可なく文化財を輸出又は輸出しようと試みる者は、最高国民評議会が1992年9月10日に採択した「暫定期間中のカンボジアに適用される司法制度、刑法及び刑事手続に関する規定」の第44条に基づいて、6ヵ月から10年までの拘禁刑を課される。更に鑑定人の意見で見積られた当該文化財の価値に相当する罰金が課される場合もある。
4. 再犯の場合、刑罰は本条1乃至3項に定められている最高刑罰の2倍に定められる。
 
第71条【留保】
第28条、第29条、第42条、第56条、第63条及び第66条によって規定された民事上及び行政上の制裁、及び刑法典によって規定された最高刑罰は留保される。
 
第72条【犯罪の確認】
犯罪は、司法警察官、全ての有資格公権力、特に宣誓した税関吏、保存吏と、その為に正式に依頼され、宣誓した公立博物館職員によって作成された調書によって確認される。

 
第III編:最終規定
 
第73条【現行法の廃止】
文言又は精神において最高国民評議会の本決定と相容れない成文又は不成文の全ての法文、全ての規定、全ての規則は廃止される。
 
第74条【公布及び登載】
本決定は現行手続に従って登載・公布され、必要のある全ての場所に通知される。
 
第75条【効力発生】
本決定は最高国民評議会による承認日に効力を生じる。
 
第76条【本決定の修正】
本決定を修正できるのは、暫定期間中は最高国民評議会、その解体後はパリ条約によって定められた手続から生まれたカンボジア憲法によって定められた管轄当局である。