国の歴史的芸術的遺産の保護に関する1937年11月30日付政令第25号
=目次=
第1条【歴史的芸術的遺産】
第2条【適用】
第3条【国外の作品】
第4条【国立歴史芸術遺産局による登録】
第5条【局長命令による登録】
第6条【私法上の財産の登録】
第7条【所有者の要請による登録】
第8条【強制登録】
第9条【強制登録の為の手続】
第10条【暫定及び最終登録】
第11条【許される移転】
第12条【譲渡可能性の制限】
第13条【最終登録手続】
第14条【国外への持ち出し】
第15条【没収】
第16条【紛失及び窃盗の届け出】
第17条【損壊等】
第18条【外観に対する罰金】
第19条【資金不足】
第20条【検査】
第21条【国家遺産に対する違反】
第22条【連邦等による先買】
第23条【行政官による調整】
第24条【国内の博物館】
第25条【各種協力】
第26条【取扱業者の登録】
第27条【競売人】
第28条【真正証明】
第29条【特別請求権】
第30条【破棄】
ブラジル連邦共和国大統領は、憲法第180条に基づき授けられた権限を行使し、以下に布告する。
第一章 国の歴史的芸術的遺産
国の歴史的芸術的遺産は、国内に存在するすべての動産及び不動産財産を以て構成され、その保護はブラジルの歴史における記念すべき出来事との関連により、又はその顕著な考古学上、民族学上、書誌学上あるいは美術学上の価値により、公共の利益である。
第1項 本条における財産とは、本法第4条に掲げる四つの登録の一つに単体で又は複合であっても、当該財産の登録時点において国の歴史的芸術的に必要不可欠なものとして扱われる物のみである。
第2項 自然又は人為(human agency)により与えられた顕著な特徴を有することによって保存及び保護の価値のある自然遺産及び区域、景観は、本法の対象として分類され、登録しなければならない。
本法は、私法及び国内公法の下での私人及び法人の属する財産に適用する。
国の歴史的芸術的遺産は、以下に掲げる外国製の作品は含まない。
(1)国内に派遣された大使又は領事の所有する財産
(2)国内において取引を行う外国企業に属する装飾された乗り物(decorating
vehicles)
(3)民法典序章第10条に規定される財産及び所有者に適用される民事法に基づく財産
(4)歴史的芸術的財産を扱う会社に属する財産
(5)記念、教育及び取引用展示の為に国内に運び込まれた財産
(6)家屋(premises)を装飾する為の明確な目的を持つ外国企業によって輸入された財産
第1項 国立歴史芸術遺産局(The National Historical and Artistic Heritage Department)は、前掲(4)及び(5)に基いて扱われる物品の自由な移動に関して許可を付与しなければならない。
第二章 登録
国立歴史芸術遺産局は、本法第1条に規定される財産の登録に対して、以下の四つの登録事項を記載しなければならない。
(1)考古学的、民族学的及び景観の遺産の登録には、第1条2項の列挙と同様、考古学、民俗学、先住民族又は慣習に分類される財産に関連する登録を含まなければならない。
(2)歴史登録には、歴史的財産及び歴史的性質を有する美術作品財産に関連する登録を含まなければならない。
(3)美術品登録簿(Fine Arts
Register)は、国内又は国外の美術品として分類される作品に関連する登録を含まなければならない。
(4)工芸登録簿(Applied Arts)には、国内又は国外の工芸作品として分類される作品に関する登録を含まなければならない。
第1項 それぞれの登録簿は、数巻で構成され得る。
第2項 本条第1号、第2号、第3号及び第4号に掲げた分類表に含まれる財産は、本法の施行に伴い、その適用を明確かつ正確にしなければならない。
連邦、州及び地方自治体に属する財産は、当然のことながら国立歴史芸術遺産局の局長(Director)の命令によって登録されなければならない。しかし登録は、必要な効果を生じさせる目的で、その財産を所有する者(the body)又は手入れをする者に通知しなければならない。
私法上の私人又は法人(corporate bodies)に属する財産の登録は、任意又は強制によって履行される。
所有者が要請した場合はいつでも、国立歴史芸術遺産局顧問委員会の提言(opinion)に基づいて、登録は任意規定により履行されなければならない。これは、財産が国の歴史的芸術的遺産において欠かせない財産として分類が要求された時、あるいは所有者が、登録財産の一つとして財産の登録を要求する通知に同意した場合に限られる。
強制登録は、所有者が財産の登録に対して拒絶した場合に履行されなければならない。
強制登録は、以下の手続きに従い、履行される。
(1)正当な代理人を通じて、国立歴史芸術遺産局は、所有者に十五日以内に登録の同意を求め、或いは所有者が反対する場合、同期間内に反対する理由を言明する通知を行う。
(2)前述の期間内に反対が示されない場合、いかなる状況下であっても、国立歴史芸術遺産局局長は、財産が適正な登録が行われる旨の命令を下すことができる。
(3)前述の期間内に反対がなされた場合、いかなる状況下であっても十五日以内を超えずに、登録の手続きに着手することを所有者に対して通知しなければならない。この場合、かかる費用に関して、国立歴史芸術遺産局顧問委員会は言及することなく、改めて六十日以内に受領について決定を下さなければならない。本決定は撤回不可能とする。
本法第6条に規定される財産の登録は、手続きが通知によって開始されたか又は先の財産が適切な登録簿に登録されて終結したかに応じて、暫定的又は最終的とみなされる。
第1項 本法第13条の規定を除くすべての目的に対して、暫定登録は、最終登録と同等の価値を有するものでなければならない。
第三章 登録の効果
連邦、州又は地方自治体の属する登録財産は、本来譲渡不可能であるが、前述の諸関係者(entities)の一つから別の者へのみ移転することはできる。
第1項 財産の移転に伴い、占有することになった当事者は、国立歴史芸術遺産局へ速やかに報告を届け出なければならない。
私法上の私人又は法人によって所有される登録された歴史的及び芸術的作品の譲渡可能性は、本法の規定に従い制限される。
私的に所有される財産の最終登録は、国立歴史芸術遺産局の担当者の下で(at the instance
of the competent agency)、財産登録官によって管理され且つ所有権記録の添え書きされた登録簿に、すべての適正目的の為に、記入されなければならない。
第1項 本条に規定される財産の所有権移転において、裁判所命令又は死亡によって(causa mortis)による場合であっても、新所有者は、財産価値の10%に等しい罰金の支払を条件に、三十日以内に登録が履行されることを確認しなければならない。
第2項 当該財産の場所の変更に際して、所有者は同期間内に同罰金を支払い、財産を移転した場所の登録を申告しなければならない。
第3項 国立歴史芸術遺産局に対して、同期間及び同罰則を条件として、いかなる移転も受領者によって通知されるべきであり、いかなる場所の変更も所有者によって通知されなければならない。
登録財産は、短期間を除き、国立歴史芸術遺産局顧問委員会の裁量に基づいて、文化交流目的の為に所有権を移転することなく、国内から持ち出すことはできない。
前条に掲げる条件以外において、国内から登録財産を持ち出そうとするいかなる計画も、財産の所在する連邦又は州により財産の没収を以て罰せられる。
第1項 責任が所有者にある場合、所有者は財産価値の50%に相当する罰金を負わなければならず、保証の手段として、支払われるまで財産は留保されなければならない。
第2項 違反が繰り返された場合、罰金は二倍とする。
第3項 前項に規定する罰金に加えて、国内から登録財産の移転を計画する者はすべて、刑法中の密輸罪として罰せられる。
所有者は、五日以内に国立歴史芸術遺産局へ登録財産のすべての種目に対する紛失及び窃盗は届け出なければならない。その過失は、当該財産の10%に相当する罰金によって罰せられる。
如何なる場合においても、登録財産を損壊、破壊又は美観を損なってはならず、また歴史芸術遺産局の事前の優先許可がない限り、修復、塗装又は復旧してはならない。違反は、発生した損害額の50%に相当する罰金によって罰せられる。
第1項 連邦、州又は地方自治体に属する財産の場合、本条の規定違反に責任を負う当局は、罰金を支払わなければならない。
国立歴史芸術遺産局の事前の優先許可なしに、登録財産の外観を損なうか阻害する建築は行われてはならず、またその財産の付近において広告又はポスターを掲示してはならない。違反は、建造物の破壊又は物の撤去によって処罰され、後者の違反ではその財産の価値の50%に相当する罰金が課せられる。
資金の不足により必要な保護及び修復ができない登録財産のすべての所有者は、当該作業の必要性を国立歴史芸術遺産局へ通知しなければならない。当該通知を怠った場合、当該財産に対する毀損額の二倍に相当する罰金によって処罰される。
第1項 通知の受領及び作業が必要であることの証明に基づいて、国立歴史芸術局局長は、当該作業を六ヶ月の期限を設けて連邦の費用負担でもって履行するか、又は所有者から収用しなければならない。
第2項 前項におけるすべての措置に従う際に過失が生じた場合、所有者は登録から財産を削除することができる。
第3項 登録財産が緊急に保護あるいは修復の必要がある状態では、国立歴史芸術遺産局は、本条における所有者による通知を待たずに、当局自身の主導の下、そして連邦の費用負担の下、計画あるいは履行することができる。
登録財産は、国立歴史芸術遺産局によって永続的管理を受けるものであり、同局は適当と判断される時はいつでも財産を検査できる。検査を妨害する財産の所有者又は管理者は、100ミルレイの罰金を負担する、あるいは違反を繰り返した場合の総額の二倍を負担する。
本法第1条に規定する財産に対する違反は、国家遺産に対する違反として扱わなければならない。
第四章 先買権
個人あるいは私法上の法人に属する登録財産が売却される場合、連邦、州及び地方自治体は、本法の趣旨に基づく当該財産に対しての先買権を有する。
第1項 その財産の所在する連邦、州及び地方自治体に同額で申し出るまでは、当該財産を処分することは認められない。所有者は、同権の行使は三十日間であること、且つそれによりその財産は収用されることを先買権保持者に通知しなければならない。
第2項 前項の規定に従わない登録財産の処分は、無効とする。先買権保持者は、財産を拘束し、売主及び買主に対して当該財産の20%相当の罰金を課すことができるものであり、各自罰金を支払う責任がある。当該無効は、法律の定める形式を用い、先買権保持者が、前述の三十日以内に購入しない場合、仮差押の命令を扱う裁判官によって公告されるものとし、罰金の支払後に履行される。
第3項 先買権は、担保及び抵当を登録財産に自由に設定することを所有者に解禁するものではない。
第4項 登録財産は、先買権保持者が裁判所による売却の通知を受けるまで、裁判所命令によって売却されることはない。当該通知が出される前のすべての売却公示は、無効として扱われる。
第5項 先買権保持者は、当該権利を法的に付与されている者が行使しない場合、公売の手続きあるいは破産宣告(adjudication)がなされるまでは、免除権(right of remission)を有する。
第五章 総則
行政官(executive)は、国立歴史芸術遺産局の保護及び同分野における補足的州法の標準化に関係する活動の向上した協力及び活性化を目的に、連邦及び州の合意を調整しなければならない。
国立歴史博物館及び国立美術館に加えて、連邦は歴史的及び芸術的作品の保護及び展示に必要な多くの他の国立博物館も維持しなければならない。さらに連邦は、同じ目的の為に州及び地方自治体の博物館の設立を促進しなければならない。
国立歴史芸術遺産局は、国内の歴史及び芸術遺産の為の協力を取り付ける目的で、教会当局、科学、歴史又は芸術研究機関、個人及び法人との合意に達するよう努めなければならない。
骨董品、すべての種類の芸術作品、写本(manuscripts)及び希少本の取扱業者は、国立歴史芸術遺産局の特別基準に基づいて登録しなければならない。さらに、六ヶ月毎の保有する歴史及び芸術財産の包括的目録を当局に提出しなければならない。
前条に関わる種類の財産の売却を意図する競売人は、国立歴史芸術遺産局の担当者へ売却財産の目録を提出しなければならない。これに違反した場合、売却された物品価格の50%の罰金を課せられる。
本法第26条に関連する財産は、国立歴史芸術遺産局又は当局により承認された専門家によって真正であることの証明が得られるまでは、取扱業者又は競売人によって売却を行われることはできない。これに違反した場合、当該財産譲渡額の50%の罰金を課せられる。
第1項 前項の財産は、当該財産価値の5%相当の評価手数料を支払うことで証明される。その価値が1,000ミルレイ以下又は同額の場合、1,000ミルレイ毎に、又はその総学を越える財産毎に5ミルレイ上乗せする。
先買権保持者は、本法違反に対して課せられる罰金の支払に関連して、登録財産の公売の利益に対して特別請求権(special claim)を有する。
第1項 国立歴史芸術遺産局による財産登録に先行する適切な登録でなされる請求のみ、本条の規定する請求権に対して優先権を有する。
本法の規定に反するいかなる法律も破棄される。
リオ・デ・ジャネイロ
1937年11月30日
独立116年
共和国49年
ゲツリオ・ヴァルガス
グスタボ・キャパネマ
1937年12月6日付官報において公表、1937年12月11日付官報において再公表。
出典:ユネスコによる非公式英訳条文
註:各条文の見出しは、当センターによる。