文化財燻蒸を計画する際の注意事項

独立行政法人国立文化財機構 東京文化財研究所
保存修復科学センター 生物科学研究室

文化財の殺虫や殺菌の目的で、必要な場合に文化財のガス燻蒸剤による燻蒸処理が行われることがありますが、使用薬剤を誤った場合や、適切な用法を守らない場合には、文化財に重篤な薬害などが生じるおそれもあります。

したがって、文化財のガス燻蒸を行う際には、以下の注意を守る必要があります。

  1. 文化財のガス燻蒸にあたっては、必ず(財)文化財虫害研究所の認定薬剤を使用します。(財)文化財虫害研究所においてガス燻蒸剤として認定されており、かつ市販されているものには、2010年8月現在、
       ヴァイケーン(フッ化スルフリル)
       アルプ(酸化プロピレン)
       エキヒュームS(酸化エチレン)
    の3種類があります。

  2. また、ガス燻蒸作業にあたっては、(財)文化財虫害研究所の会員であり、作業を依頼する時点で、(財)文化財虫害研究所によって認定された「文化財虫菌害防除作業主任者」の資格を有し、かつ適正に更新している作業者がいる事業所へ依頼します。このことは、人体への作業安全の面からも、文化財への薬害防止の観点からもきわめて重要です。

  3. ガス燻蒸は、(財)文化財虫害研究所の効果判定用のテストサンプルを用いて、(財)文化財虫害研究所の「文化財の燻蒸処理標準仕様書」に基づいて行います。作業の計画にあたっては、経験のあるところに仕様書について相談し、仕様書に基づいて作業者に計画書を出してもらい、薬剤の種類や処理についての内容を事前に綿密にチェックするようにします。

  4. ガス燻蒸以外の殺虫処理(二酸化炭素処理、低酸素濃度殺虫処理)についても、やはり適切な方法を遵守して人体や文化財の安全性を確保して行うことが重要です。

  5. 主に忌避(防虫)処理剤として使用される、ピレスロイド炭酸製剤(商品名:ブンガノン、ブンガノンVA、エコミュアーなど)は、薬剤をミスト状の微粒子として対象に噴霧するもので、ガス燻蒸剤ではありません。この場合は、ミスト状の薬剤が対象へ付着することによって、効果を及ぼすもので、例外を除いて原則として直接文化財へ施工するものではなく、施設を対象としていることに留意してください。また、この場合も文化財施設の施工について十分な知識と経験を有する作業者に依頼する必要があります。

  6. 主に防カビ処理剤として使用される、ヨード系炭酸製剤(商品名:ライセントなど)も、やはり、薬剤をミスト状の微粒子として対象に噴霧するもので、ガス燻蒸剤ではありません。この場合も、例外を除いて原則として直接文化財へ施工するものではなく、あくまで施設を対象としたものです。この場合も上記と同様、文化財施設の施工について十分な知識と経験を有する作業者に依頼する必要があります。