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重要美術作品資料集成に関する研究

 美術の研究は個々の造形物を対象としますが、どのような場合にも、類似する造形物どうしの比較対照と、関連資料の網羅的な収集とが、研究を具体化するための不可欠な手順になります。ここに、さまざまな形の資料を蓄積する意義と重要性があります。さらに近年は、歴史学をはじめ、美術への関心が多様化し、質の高い資料を幅広く提供することがあらためて求められるようになってきました。
  このような見地から、この研究は、新しい美術資料の可能性を探り、その実現を目的にしています。具体的には、1.記録媒体、分析手法などの新たな技術に対応し、精度、信頼性、網羅性など必要な条件を満たす資料の在り方を研究し、2.それを例示する資料の収集と蓄積を実践し、成果を報告書として公表します。

2005年度
2004年度
2003年度
2002年度
2001年度

2005年度
  1. 作品調査と資料収集

     神奈川県・龍華寺所蔵の菩薩半跏像の調査を行い、奈良時代の乾漆技法について考察をすすめた(津田)。また本研究所の在外日本古美術品保存修復協力事業の一環として、今年度の修復作品であるギメ東洋美術館所蔵の「大政威徳天縁起絵巻」やシアトル美術館所蔵の「二河白道図」など、計 7 件の調査を行った(鈴木、勝木、津田、綿田)。あわせて、修復候補作品の選定を兼ねて、米国では、ヒューストン美術館所蔵の「日吉山王祭礼図屏風」など 9 件、キンベル美術館所蔵の「後鳥羽院隠岐配流図屏風」など 18 件を調査し、オーストラリアでは、ニューサウスウェールズ州立美術館所蔵の「当麻曼荼羅」など 8 件、オーストラリア国立美術館所蔵の狩野探幽筆「達磨図」など 4 件、ヴィクトリア国立美術館所蔵の狩野宗信筆「芦雁図巻」など 4 件を調査した(中野、鈴木、津田、綿田、修復技術部・加藤雅人)。

  2. 報告書の刊行

      今年度は、本プロジェクト研究の総括の年に当たる。そこで年度当初より、報告書の刊行に向け、その内容について議論を重ねてきた。その結果、報告書では既刊の『美術研究作品資料』3冊を踏まえ、それぞれの著者が問題点を総括するとともに、 現在取り組んでいる研究の概要を報告しつつ、美術資料学の展望をも示すこととした 。その具体的な内容は以下の通りである。

     

    『重要美術作品資料集成に関する研究』

    中野  照男 はじめに

    鈴木 廣之 【総論】:『美術研究作品資料』の刊行をふり返って

    山梨絵美子 【各論:美術研究作品資料第1冊】 『黒田清輝《智・感・情》』の赤外線撮影・調査

    岡田  健 【各論:美術研究作品資料第 2 冊】 『東寺観智院蔵五大虚空蔵菩薩像』について

    田中  淳 【各論:美術研究作品資料第 3 冊】 『青木繁《海の幸》』のねらい

    田中  淳 「湖畔」物語(中間報告)

    津田 徹英 龍華寺菩薩半跏像の調査・研究(中間報告)

    皿井  舞 文化財アーカイブの構築―美術史における資料学との関わりから―

    鈴木 廣之 新しい美術資料学にむけて―これからの課題―

 

研究組織:○鈴木 廣之、中野 照男、勝木言一郎、津田 徹英、田中  淳、塩谷  純、 * 綿田  稔(以上、美術部)、
山梨絵美子、皿井  舞、江村 知子(以上、協力調整官―情報調整室)
* 平成 17 ( 2005 )年 4 月 1 日〜 12 月 31 日まで協力調整官―情報調整室、平成 18 ( 2006 )年 1 月 1 日より美術部
 
2004年度
  1. 作品調査と資料収集

    近代絵画については、石橋財団石橋美術館所蔵の青木繁「海の幸」をとりあげた。明治期の近代洋画を代表する作品として著名な本作品は、今年、 1904 (明治 37 )年の第 9 回白馬会に出品されてから満百年を迎えたのを機に、同館と研究協力をはかり、本作品の制作過程に関する研究を行った。情報調整室の協力を得て行った調査・撮影では、近赤外線撮影などの光学的調査によって新知見を得るとともに、青木の出身地である 福岡県久留米市 、作品の制作地である 千葉県館山市布良 を中心とした房総半島南端など、現地調査を行った(田中)。また、本研究所の在外日本古美術品保存修復協力事業の一環として、今年度の修復作品であるギメ美術館所蔵の「大政威徳天縁起絵巻」など計 5 点の調査を行った(中野・鈴木・勝木・津田・綿田)。あわせて、シアトル美術館所蔵の「烏図屏風」など 6 点、ロイヤル・オンタリオ美術館所蔵の「縄衣文殊図」など 17 点、リートベルク美術館所蔵の「阿弥陀三尊来迎図」など 22 点、ナープルステク博物館所蔵の中村洞伯筆「吉野花見図屏風」など 4 点、プラハ国立美術館所蔵の「風流陣図屏風」など 11 点について現地調査を行った(鈴木・津田・綿田)。

  2. 最終年度の計画

     最終年度である次年度の報告書の対象は、昨年度に引きつづき、『室町時代花鳥画』、『龍華寺蔵菩薩半跏像』、『黒田清輝《湖畔》』の 3 件を候補とすることになった。報告書は、 3 件のなかから調査と研究の進捗状況に応じて 1 件をとりあげ、『美術研究作品資料―第 4 冊』としてまとめる計画である。

  3. 報告書

    今年度の報告書として『青木繁《海の幸》―美術研究作品資料―第 3 冊』を出版刊行した。報告書は、判型を B4 判とし、近赤外線画像のほか、 16 分割したフルカラーの画像を原寸で図版に収録するなど、モノクロおよびカラーの図版 34 点を収録した。論文など、本文の内容は次のとおりである。

    田中 淳(東京文化財研究所) 「《海の幸》誕生まで」
    植野健造(石橋美術館) 「名作ものがたり:青木繁《海の幸》の 100 年」
    城野誠治(東京文化財研究所) 「デジタル画像の制作について」
    石井 亨(石橋財団) 「《海の幸》再考:ものとしての絵画」
    森山秀子(石橋美術館)編 「白馬会第 9 回展出品時の批評 附:蒲原有明「海の幸」の改作の変遷」  植野健造編 「青木繁《海の幸》関連年表」
    植野健造編 「青木繁年表」
    森山秀子編 「青木繁文献」
    英文要旨

研究組織:○鈴木 廣之、中野 照男、勝木言一郎、津田 徹英、田中  淳、塩谷  純(以上、美術部)、山梨絵美子、
綿田  稔、皿井  舞(以上、協力調整官―情報調整室)、岡田  健(国際文化財保存修復協力センター)

2003年度
  1. 品調査と資料収集
      近代絵画については、東京文化財研究所所蔵の黒田清輝「湖畔」の制作過程に関する研究のため、情報調整室の協力を得て、神奈川県足柄下郡箱根町芦ノ湖沿岸地区において現地調査を行いました(田中)。
      彫刻作品については、平安期の脱活乾漆像の作例である龍華寺所蔵「菩薩半跏像」の再調査を行い、美術部研究会(03.7.23)にて研究発表を行いましたました(津田)。
      また、本研究所の在外日本古美術品保存修復協力事業の一環として、今年度の修復作品である大英博物館所蔵の「不空羂索観音二神将像」など7点の調査を行ったほか、ベルギー王立歴史博物館所蔵の「涅槃図」など20点、オーストリア応用美術博物館所蔵の「源平合戦図屏風」など4点、ワルシャワ国立博物館所蔵の「一字金輪曼荼羅図」など12点について現地調査を行いました(中野・鈴木・勝木・津田・綿田)。

  2. 次年度以降の計画
      次年度の報告書として石橋美術館所蔵の青木繁「海の幸」を取り上げ、東京文化財研究所美術部と石橋美術館の共編として『美術研究作品資料第3冊』にまとめることになりました。また、2005年度以降の対象として『室町時代花鳥画』、『龍華寺蔵菩薩半跏像』、『黒田清輝《湖畔》』の3件を引続き候補とすることなりました。

  3. 報告書
      今年度の報告書として『東寺観智院蔵五大虚空蔵菩薩像―美術研究作品資料第2冊』を出版刊行しました。京都東寺の観智院に所蔵される「五大虚空蔵菩薩像」5体は、唐より請来された木彫像の貴重な作例として知られながら、これまで本格的な調査報告が行われたことがなく、本書が本格的な報告の初めての試みとなりました。
      とくに今回は判型をB4判とし、現在可能な限りの印刷技術をもって再現したモノクロおよびカラー、高度なデジタル画像処理を施した明瞭なX線写真の口絵を60頁としました。使用した原板はいずれも、1996年に東京国立文化財研究所(当時)美術部が主宰した現地調査時に撮影されたものであるが、カラー図版だけでなく、図版原稿となるモノクロ・ネガフィルムの焼付け写真の作成にも細心の注意を払い、また、X線フィルムについては情報調整室の協力を得てデジタル処理を施し、画像の精度をあげることができました。今回の報告書が作成されたことにより、これまで当研究所に蓄積されてきた写真原板から高精度の複製図版を作成するための方法と手順について、ある程度の目途を付けることができました。これにより、既存の原板を用いた画像資料の公刊を計画することができるようになり、大きな収穫となりました。これに加え、40頁にわたる本文では、本作品についての詳細な調書とともに、これまでの諸説を批判的に総合した優れた論文を搭載することができました。

研究組織:○鈴木 廣之、中野 照男、勝木言一郎、田中  淳、塩谷  純、山梨絵美子、津田 徹英(以上、美術部)、
井手誠之輔、綿田  稔(以上、情報調整室)、岡田  健(国際文化財保存修復協力センター)

2002年度
  1. 作品調査と資料収集

    1. 近代絵画については、青木繁作品について佐賀市、小城町、唐津市、福岡市の現地調査を実施し、佐賀県立美術館所蔵の青木作品の調査と撮影を行いました。(田中)また、東京文化財研究所所蔵の黒田清輝「湖畔」「婦人肖像(黒田の妻照子像)」などの油絵について作品調査を行い、とくに情報調整室の協力を得て行った反射赤外線撮影によって下書きの描線などの検出ができました。(田中・山梨・鈴木・勝木・井手・塩谷)

    2. 彫刻作品については、次年度に計画されている報告書『美術研究作品資料第2冊』のために東寺観智院所蔵「五大虚空蔵菩薩像」の再調査を行いました。(岡田・鈴木)また、東京・林光寺にて「聖徳太子ならびに和朝先徳連坐像」の調査を行いました。(津田)

    3. 仏教美術については、日本に伝来する船載仏画を中心に所在情報と基礎データを収集したほか、山形・上杉神社「阿弥陀三尊像」(1309年、元時代)、佐賀・鏡神社「水月観音像」(1310年、高麗時代)をはじめ、25点の宋元仏画、高麗仏画の作例について調査を行いました。(井手)また、神奈川・永勝寺にて「光明品」の調査を行いました。(津田)

    4. 中世絵画については、東京芸術大学美術館所蔵の「源誓上人絵伝」の調査を行いました。(津田)また、正木美術館所蔵の雲渓・如寄作品についての調査を行いました。(綿田)

    5. 在外日本古美術品保存修復協力事業の一環として、今年度の修復作品である大英博物館所蔵の「地蔵菩薩像」など5点の調査を行いました。そのうち、ベルリン東洋美術館所蔵の絹本着色「騎獅文殊菩薩像」については、保存科学部化学研究室の協力を得て、蛍光X線分析を行い、顔料などの特性を調べました。また、ギメ美術館所蔵の「大政威徳天縁起」(1536年)など13点、キヨッソーネ美術館所蔵の勝川春勝「春駒図」など38点、ケルン東洋美術館所蔵の「弥勒菩薩来迎図」など14点について現地調査を行いました。(中野・鈴木・勝木・津田・綿田)

  2. 論文

    1. 鈴木廣之 「美術資料学の構想へ向けて―前提と現状―」 『重要美術作品資料集成に関する研究 平成14(2002)年度報告書』 03.3
    2. 岡田 健 「東寺観智院蔵木造五大虚空蔵菩薩像に関する調査研究および調書」 『重要美術作品資料集成に関する研究 平成14(2002)年度報告書』 03.3

  3. 報告書

    今年度は『重要美術作品資料集成に関する研究 平成14(2002)年度報告書』を作成しました。

研究組織:○鈴木廣之、中野照男、勝木言一郎、田中淳、山梨絵美子、津田徹英、
綿田稔(以上、美術部)、井手誠之輔、塩谷純(以上、情報調整室)、岡田健(国際文化財保存修復協力センター)

2001年度
  1. 作品調査と資料収集

    1. 近代絵画については、石橋美術館所蔵の青木繁「海の幸」と「海」、藤島武二「天平の面影」、当研究所所蔵の黒田清輝「智・感・情」の油絵6点について作品調査を行い、情報調整室・写真室の協力を得て、可視光励起による蛍光撮影、反射赤外線撮影、透過赤外線撮影を行いました。とくに後者の作品では下書きの描線が検出できました。(田中・山梨・鈴木・勝木・井手・塩谷)

    2. 彫刻作品については、埼玉県吉川市清浄寺の所蔵する親鸞聖人坐像1点の調査を行い、成果を『美術研究』375号に発表しました。(津田)

    3. 在外日本古美術品保存修復協力事業の一環として行った絵画の作品調査
        今年度の修復作品として輸入された、ネルソン・アトキンズ美術館所蔵の海北友松筆「琴棋書画図屏風」など6点。イタリア・ブレシア美術館所蔵の平福百穂「荒磯」1点(於ホテル・オークラ)。チェコ・ナープルステク博物館所蔵の「保元物語図屏風」1点(於京都国立博物館)。また、サンフランシスコ・アジア美術館所蔵の「十一面観音菩薩像」など8点、シアトル美術館所蔵の俵屋宗達画・本阿弥光悦書「鹿下絵和歌巻」など19点、ホノルル美術館所蔵の「芭蕉図屏風」など11点について現地調査を行いました。
        今年度の修復作品のうちミネアポリス美術館所蔵の伝狩野山楽筆「四季耕作図屏風」については、京都大覚寺の障壁画調査を行い、この屏風がもと正寝殿竹の間の障壁画であることがわかりました。また、クリーヴランド美術館所蔵の「二河白道図」など2点については、保存科学部化学研究室の協力を得て、蛍光X線分析とX線回折分析を行い、顔料などの特性を調べました。(中野・鈴木・津田)


  2. 研究発表

    1. 山梨絵美子 黒田清輝筆「智・感・情」の光学的調査報告 美術部研究会 01.11.21
    2. 鈴木廣之 美術資料学の現状と課題 東京文化財研究所総合研究会 02.2.5
    3. 山梨絵美子 黒田清輝筆「智・感・情」についてどのように考えるか 同研究会 02.2.5

  3. 論文

    1. 津田徹英 親鸞の面影―中世真宗肖像彫刻研究序説― 『美術研究』375 02.3
    2. 山梨絵美子 赤外線の眼で見る黒田清輝《智・感・情》 東京文化財研究所美術部編『黒田清輝《智・感・情》―美術研究作品資料―第1冊』 02.3

  4. 報告書

    今年度は黒田作品の光学調査の成果をまとめ、「美術研究作品資料第1冊」として刊行しました。

研究組織:○鈴木廣之、勝木言一郎、島尾新、田中淳、津田徹英、
中野照男、山梨絵美子(以上、美術部)、井手誠之輔、塩谷純(以上、情報調整室)、
岡田健(国際文化財保存修復協力センター)
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