東京国立文化財研究所では、昭和52年以来、毎年、文化財の保存に関する国際研究集会を開催してまいりました。平成9年度の第21回国際研究集会は、当研究所の美術部と情報資料部が担当し、「今、日本の美術史学をふりかえる」という主題のもとで、平成9年12月に開催されました。
この主題は、学の成立からほぼ100年の歩みを経た今日、美術史学で使用される言葉や考え方が、どのようにして生まれ、一般化してきたのかを知ることは、美術史学ばかりでなく、文化財の保存に関わる行政やさまざまな活動における21世紀への方向性を探る上でも、大きな意義をもつものと考えたからであります。
この国際研究集会には、内外から250名を超える研究者のご参会をいただき、日本における美術史学の生い立ちと現在の課題について、三日間にわたり活発な議論が展開され、相応の成果を得たものと思っております。
ここに刊行する『語る現在、語られる過去―日本の美術史学100年』は、その報告書であります。報告書の書名は、国際研究集会の主題名称と異なっておりますが、研究集会の発表内容を今日風に象徴化いたしたものとご理解いただければ幸いです。
この報告書は、『人の〈かたち〉、人の〈からだ〉』という書物にまとまられた第16回国際研究集会の報告書とおなじく、平凡社のご厚意によって一冊の書物となり、美術史研究者をはじめ広く一般の方々にお届けできることになりました。
ここに、国際研究集会の開催ならびに本書の刊行にご尽力を賜った関係各位に、心から御礼申しあげます。