「世界遺産・国宝等における防火対策5か年計画」の策定

2019年12月

文化庁は23日、「世界遺産・国宝等における防火対策5か年計画」を策定、公表した。2019年4月に発生したパリ・ノートルダム大聖堂での火災や同年10月31日に発生した首里城(那覇市)での火災を受けた対応で、世界遺産または国宝(建造物)、国宝・重要文化財(美術工芸品)を保管する博物館等を重点整備対象とし、総合的・計画的な防火対策を2024年度までに進める計画を策定したもの。

VOCA賞受賞者決定

2019年12月

平面美術の若手作家を奨励するVOCA賞の受賞者は「Remove」を制作したNerholに決定したことが19日に発表された。VOCA奨励賞は菅実花「A Happy Birthday,#selfiewithme」と李晶玉「Olym‐pia 2020」、佳作賞は黒宮菜菜「Image―終わりし道の標べに」と宮本華子「白が消えていく。―Mein Tagebuch―」、大原美術館賞は浅野友理子「くちあけ」がそれぞれ選ばれた。受賞作等を展示するVOCA展2020は2020年3月12日から3月27日まで東京都の上野の森美術館で開催された。

日本芸術院新会員決定

2019年11月

日本芸術院(院長:黒井千次)は29日、芸術活動に顕著な功績があったとして新たに7名を同院新会員に選出したと発表、美術関係では工芸の春山文典、書の黒田賢一が選ばれた。12月15日付で萩生田光一文部科学相により発令された。

名勝・史跡指定の答申

2019年11月

文化審議会は15日、国宝「金錯銘鉄剣」が出土した稲荷山古墳を含む埼玉古墳群(埼玉県行田市)を特別史跡に、国内最古の旧石器時代の人骨が見つかった白保竿根田原洞穴遺跡(沖縄県石垣市)等15件を史跡に、明治時代末期に造られた須藤氏庭園(青森県弘前市)等4件を名勝に指定、江戸時代に整備された水路を現在まで保つ長峯氏庭園(長野市)等5件を登録記念物に登録するよう萩生田光一文部科学相に答申した。また登録有形文化財として、国内現存最古級の鋼製アーチ橋である十綱橋(福島市)等133件の建造物を登録することも求めた。

第41回サントリー学芸賞受賞者決定

2019年11月

第41回サントリー学芸賞(主催:サントリー文化財団)の受賞者が12日に発表、美術関係では芸術・文学部門で桑木野幸司(大阪大学准教授)の『ルネサンス庭園の精神史』が受賞した。

第31回倫雅美術奨励賞受賞者決定

2019年11月

優れた美術評論や美術史の研究を顕彰する倫雅美術奨励賞(主催:公益信託倫雅美術奨励基金)の第31回目の受賞者が7日に発表され、美術史研究部門は『超現実主義の1937年 福沢一郎『シュールレアリズム』を読みなおす』の著者(共著)である伊藤佳之(福沢一郎記念館非常勤嘱託)、美術評論部門は「駒井哲郎―煌めく紙上の宇宙」展の企画及びカタログ中の論文を担当した片多祐子(横浜美術館学芸員)が選ばれた。

首里城の火災

2019年10月

31日未明、首里城(沖縄県那覇市)で火災が発生し、正殿と北殿、南殿が全焼した他、あわせて9棟の建屋が焼損した。焼失した正殿を中心とする建築群は、太平洋戦争中の沖縄戦で1945年に焼失した後、1992年に再建されたもの。また焼失した建屋内には琉球王国時代からの1500点以上の絵画や漆器等の工芸品も収蔵されており、正殿に常設の展示品421点が焼失、焼損した。

文化勲章受章者、文化功労者決定

2019年10月

政府は29日、2019年度の文化勲章受章者6名と文化功労者21名を決定した。美術関係では、報道カメラマンとして活動を始め、国内外の子どもを被写体とした独自の世界を作り上げて写真家の地位向上に尽力した写真家の田沼武能が文化勲章受章者に、照明で空間をデザインして環境を活性化させることを提唱し、東京タワーや姫路城等のライトアップを手がけた照明デザイナーの石井幹子、自然と時代を丁寧に考証した作品が装飾性と精神性を兼ね備え、日本画の確たる表現を築いたとして高く評価された日本画家の田渕俊夫、少女漫画を多彩で深みのある内容表現が可能なジャンルへと発展させた漫画家の萩尾望都が文化功労者に選ばれた。

国宝・重要文化財(建造物)指定の答申

2019年10月

文化審議会は18日、英国人建築家ジョサイア・コンドルが設計した旧島津家本邸(東京都品川区)や庁舎建築の先駆けとされる神奈川県庁舎(横浜市)等6件の建造物を重要文化財に指定、また、兵庫県たつの市龍野地区と鹿児島県南さつま市加世田麓地区を重要伝統的建造物群保存地区に選定するよう、萩生田光一文部科学相に答申した。

台風19号による被害

2019年10月

12日に東日本に上陸し猛威をふるった台風19号(令和元年東日本台風)は、文化財にも甚大な被害をもたらした。世界文化遺産に登録されている群馬県富岡市の富岡製糸場では繰糸所の窓ガラスが破損、長野県松本市の旧開智学校では塔屋のしっくいが剥落した。また神奈川県の川崎市市民ミュージアムでは、地下階の収蔵庫が浸水し23万点もの収蔵品が被災。写真や映画フィルムの搬出作業を手始めに被災収蔵品のレスキュー活動が全国の美術館・博物館の学芸員や専門家の参加により行なわれ、2020年6月に全ての搬出作業が完了した。

第31回國華賞受賞者決定

2019年10月

日本・東洋美術に関する優れた研究を対象とする第31回國華賞は奥健夫『仏教彫像の制作と受容―平安時代を中心に―』(2019年)に、國華展覧会図録賞は山下真由美「鳥取画壇の祖 土方稲嶺―明月来タリテ相照ラス」展図録(2018年、鳥取県立博物館)に贈られることが決定した。

文化庁、「あいちトリエンナーレ2019」への補助金不交付を決定

2019年09月

愛知県で開催中だった国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で、企画展「表現の不自由展・その後」が抗議や脅迫で中止に追い込まれた問題で、文化庁は26日、県が円滑な運営を脅かす重大な事実を認識していたにもかかわらず申告しなかったとして、補助金適正化法に基づき、芸術祭への補助金を交付しないと発表した。手続きの不備による不交付は異例。これを受けて多くの有識者や団体が抗議声明を発表、10月9日には全国美術館会議が撤回を求める文化庁長官宛要望書を提出した。

第31回世界文化賞受賞者決定

2019年09月

世界の優れた芸術家を顕彰する高松宮殿下記念世界文化賞(主催:公益財団法人日本美術協会)の第31回受賞者が17日発表された。美術関係では、絵画部門で、「動くドローイング」と呼ばれる独自のアニメーションで母国・南アフリカ共和国の陰鬱な歴史の痛みを表出させたウィリアム・ケントリッジ、彫刻部門で、インスタレーション等多彩な表現を駆使し、疎外された人間の苦しみを表現し続けている英国のモナ・ハトゥム、建築部門で、多様な素材を使い環境と調和した作品群が高く評価される米国の建築家トッド・ウィリアム&ビリー・ツィンが受賞した。

国際博物館会議京都大会の開催

2019年09月

世界各国の博物館関係者が一堂に会し、博物館が抱える課題や役割等について話し合う国際博物館会議(ICOM)の第25回大会が日本で初めて、国立京都国際会館を主会場に1日から7日まで開催、120の国と地域から4590名の参加者を迎え、日本博物館史上最大規模の国際会議となった。「文化をつなぐミュージアム 伝統を未来へ」をテーマに4つのプレナリーセッション(全体会合)と30の国際委員会等のセッションが行なわれ、ICOM日本委員会が提案した「ICOMコミュニティへのアジアの融合」と「『文化をつなぐミュージアム』の理念の徹底」が大会決議として採択された。

「表現の不自由展・その後」の中止

2019年08月

愛知県内で8月1日~10月14日開催の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」(会場:愛知芸術文化センター)が、展示内容に対する抗議を受けて8月3日に中止となった。同展は政治的な理由等から過去、展示に際し規制を受けた作品によって構成され、昭和天皇を題材とした大浦信行の「遠近を抱えて」や元従軍慰安婦を象徴したキム・ソギョン/キム・ウンソンの「平和の少女像」等を展示、これに対し脅迫を含む多数の抗議電話やファクス、メールがあり、来場者や関係者の安全を考慮して中止の措置がとられたもの。この中止判断に抗議するかたちで、海外作家を中心に自身の芸術祭への展示を中止・変更するケースが相次ぎ、表現の自由をめぐって大きな論議を巻き起こした。その後同展の実行委員会が展示再開を求める仮処分を名古屋地裁に申し立て、芸術祭実行委員と合意の上、「あいちトリエンナーレ2019」閉幕前の10月8日~14日に再開となった。

登録有形文化財登録の答申

2019年07月

文化審議会は19日、戦後の高度成長期に赤羽台団地(東京都北区)に建てられ、特徴的な外観から「スターハウス」と呼ばれた住宅棟等、196件の建造物を新たに登録有形文化財にするよう柴山昌彦文部科学相に答申した。

第14回西洋美術振興財団賞受賞者決定

2019年07月

西洋美術の理解や研究発表などに貢献した展覧会に携わった個人・団体を顕彰する西洋美術振興財団賞の第14回目の受賞者が決定した。個人に贈られる学術賞は関昭郎・東京都庭園美術館事業企画係長(「エキゾティック×モダン アール・デコと異境への眼差し」に対して、肩書は展覧会開催時)、村上博哉・国立西洋美術館副館長兼学芸課長(「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代」に対して)が、団体に贈られる文化振興賞は2000年に開設した印刷博物館での継続的で質の高い展示活動を行なってきた凸版印刷株式会社が受賞した。

「百舌鳥・古市古墳群」、世界遺産に決定

2019年07月

世界遺産一覧表への登録の可否を事前に審査する国連教育科学文化機関(ユネスコUNESCO)の諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモスICOMOS)は5月、日本政府が推薦していた「百舌鳥・古市古墳群」(大阪府)について、世界遺産一覧表への登録を勧告した。これを受けて7月6日、アゼルバイジャンの首都バクーで開催されていたユネスコの第43回世界遺産委員会で、文化遺産として世界遺産一覧表に登録することが決定した。

東京国立近代美術館の鏑木清方「築地明石町」収蔵

2019年06月

東京・竹橋の東京国立近代美術館は24日、日本画家鏑木清方の代表作「築地明石町」(1927年作)を収蔵したと発表した。同作品は1927年の帝展で帝国美術院賞を受賞、戦後も美術展に度々出品され、71年には郵便切手の図案に採用されるなど広く親しまれたが、75年の展覧会を最後に所在不明となっていた。同館が6月に都内の画商から、三部作として制作された「新富町」「浜町河岸」とともに購入、収蔵へと至ったもので、同館にて11月1日から12月15日まで一般公開された。

出光美術館のプライス・コレクション購入

2019年06月

東京・丸の内の出光美術館は24日、米国の実業家で長年江戸絵画を中心に収集を続けてきたジョー・プライス夫妻のコレクションのうち、マス目状の画面に動植物を色鮮やかに描いた伊藤若冲の「鳥獣花木図屏風」等190件を21日付で購入したと発表した。同夫妻は高齢等を理由に、コレクションの一部を日本へ引き継ぐことを希望していた。

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