研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『東文研ニュース』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


国際研修「紙の保存と修復」2014の開催

紙文化財の修復実習風景

 8月25日から9月12日の日程で、国際研修「紙の保存と修復」を開催しました。本研修は東京文化財研究所とイクロムとの共催で行っており、日本の紙文化財の保存と修復に関する技術や知識を海外の文化財関係者に伝えることを主旨としています。今年は69名の応募の中からニュージーランド、台湾、デンマーク、イギリス、セルビア、フランス、キューバ、アメリカ、オーストラリア、タイの文化財修復関係者10名を招きました。
 講義では、修復材料に関する基礎科学や学術的見地から見た文化財といった内容を取り上げました。また実習では、巻子形式の紙文化財の修復から仕立てまでを実施し、和綴じ冊子の作製も行いました。さらに日本の文化財の代表的な形態である屏風と掛軸の構造について学び、その取扱い方法の実習を行いました。見学では、岐阜県美濃地方を訪れて手漉き和紙の製作工程、原料、歴史的背景などについて学びました。また、京都の伝統的な修復工房や道具・材料店も訪れました。最終日のディスカッションでは、各国での和紙の利用状況に関する情報交換や修復に関する技術的な質問が挙げられ、活発な議論が交わされました。この研修を通して、海外での文化財修復に日本の技術が役立てられることが期待されます。さらに今後も同様の研修を継続していく予定です。

ブータンにおける伝統的版築造建造物に関する調査

離村が進むテンチュカ集落における調査
職人による人体尺の説明

 文化庁委託「文化遺産国際協力拠点交流事業」によるブータン王国内務文化省との協力も3年目となりました。この事業では、同国で一般的な版築造の民家等建造物の保存と安全性向上を目標に、建築史学と構造力学の観点から、伝統的工法の把握・解明と構造強度・耐震性能の分析などの調査研究を継続しています。同省文化局遺産保存課(DCHS)をカウンターパートとする第5回目の現地調査を9月18日から27日にかけて実施しました。
 今回はまず、所定の材料調合に従ってDCHSに事前に作成してもらった複数の試料からコアを採取して強度試験を行い、石灰を混合することによる版築壁の補強効果を確認しました。また、従来は職人の勘のみに頼ってきた材料土の粒度分布や最適含水比などを実験により数値化する作業手順等をDCHSスタッフに指導しました。さらに、構造班はティンプー市近郊の寺院本堂について挙動特性のシミュレーションを行うため、常時微動の計測を実施しました。
 一方、工法班はパロ県内の農村集落で古い様式を残すと思われる民家およびその廃墟を調査し、構造形式上の変遷やその壁体構築技法との関係などを探ることに努めました。併せて、版築工事の経験が豊富な職人や技術者に対する聞き取り調査を行い、彼らが持つ知識を教わるとともに、改良案の有効性などについて意見を交換しました。 雨の多い中での調査でしたが、昨年実測したばかりの建物が既に倒壊していたり、数日おいて再訪した建物に新たな破損が生じているのを発見したりと、十分な維持がされなくなった建物の脆さを実感させられる場面が多く、伝統的建造物保護の緊急性を改めて認識した次第です。

タジキスタン共和国フルブック遺跡出土の壁画の保存修復および展示

修復作業の様子(マウントボードに壁画片を配置)
修復された壁画のオープニングセレモニーの様子

 9月11日から10月2日までタジキスタン国立古代博物館において、フルブック遺跡出土の壁画断片の保存修復および展示作業を実施しました。この壁画断片は10世紀から11世紀頃に製作されたと推定されるもので、類例が少ないため、同国及び中央アジアの美術史に関わる貴重な学術資料のひとつです。当研究所では2010年度よりタジキスタン共和国科学アカデミー歴史•考古•民族研究所と協力して、この壁画断片の本格的な保存修復を実施し、昨年度までに小断片の接合、強化や安定化処置を行いました。
 今年度は安全な展示に向けたマウント処置を目的として、まず、壁画断片の裏面のサポート作製とその取り付けを行いました。次に17片の壁画断片を1つの連続した図像として鑑賞できるよう、発掘当時に作成された線画を元に幅91×高さ182cmのマウントボードに配置して取り付けました。壁画断片の周囲は質感を合わせた化粧モルタルを施しています。また、固定にはボルトとナットを使用し、他博物館での展示のための移動など、将来マウントボードから取り外す必要が生じた際には、安全に取り外しができる構造になっています。
 展示後には修復された壁画のオープニングセレモニーが開催され、東文研からの出席者の他、国立古代博物館のボボムロエフ館長、歴史•考古•民族科学アカデミーのマソフ所長、在タジキスタン鎌田日本大使が出席されました。この壁画はフルブック遺跡の出土品を集めた国立古代博物館の一室に、今後も展示され続ける予定です。
 なお、本修復事業の一部は、住友財団「海外の文化財維持・修復事業」の助成により実施しています。

国際シンポジウム「世界遺産としてのシルクロード―日本による文化遺産国際協力の軌跡―」を開催

講演の様子
パネルディスカッションの様子

 文化遺産国際協力コンソーシアムは9月27日、イイノホールにて国際シンポジウム「世界遺産としてのシルクロード―日本による文化遺産国際協力の軌跡―」(文化庁と共催)を開催いたしました。本会では今年6月に世界遺産に登録された「シルクロード:長安-天山回廊の道路網」に関連し、これまでの日本による支援や今回の登録の意義、ならびにシルクロードと日本の関係をテーマとして取り上げました。
 シンポジウム前半ではまず、文化遺産国際協力センター地域環境研究室長の山内和也より、「シルクロード世界遺産登録への日本の貢献」と題し、基調講演を行ないました。さらに中国より新疆ウイグル自治区トルファン地区文物局の王霄飛氏、カザフスタンより考古学エキスパタイズのドミトリイ・ヴォヤーキン氏をお迎えし、各国の世界遺産登録に向けての取組みや構成資産についてご講演頂きました。後半のパネルディスカッションでは、パネリストにシルクロード関連の専門家4名(大東文化大学・藏中しのぶ氏、奈良県立橿原考古学研究所・西藤清秀氏、東大寺・森本公誠長老、京都大学・吉田豊氏)をお迎えし、当コンソーシアム副会長の前田耕作による司会で「シルクロードと日本」と題し、各ご専門分野の立場からシルクロードと日本のつながりについてお話頂きました。
 今回は300名の参加者があり、シルクロードの世界遺産登録に日本が多大な貢献をしてきたことを多くの方に知っていただく機会となりました。

歴史的木造建造物保存に関するミャンマー文化省職員招聘研修

瓦を寄進する研修生(東大寺大仏殿)
修理工事の現場説明(姫路城)
乾拓の実習(天野山金剛寺)

 文化庁委託による「ミャンマーの文化遺産保護に関する拠点交流事業」で昨年度より継続中の歴史的木造建造物保存研修プログラムの一環として、日本国内での第1回招聘研修を実施しました。今回は、既にミャンマー国内での研修に参加しているメンバーの中から、ミャンマー文化省考古・国立博物館局の職員3名が、8月21日から30日までの日程で来日しました。わが国における文化財建造物保存の考え方と修理事業の実情等への理解を深めてもらうことを主な目的とする本研修では、基本的テーマに関する座学の他、関西方面をはじめとする文化財建造物修理工事現場を訪問し、設計監理を担当する修理技術者の方々からお話を伺いながら作業の手順や調査・計画の具体的手法等を学んでもらいました。
 初めて目にする大規模な修理工事の現場や、整然と並べられた解体部材の状況などは、研修生たちに強い印象を与えた様子で、現場での熱心な質疑や実習等を通じて、多くの知見を得られたようです。とりわけ、修理の過程に伴って綿密に行われる建物の調査や記録の方法、大工職人の丁寧な仕事ぶり等には大いに関心が示されていました。無論、わが国で行われている方法の全てが直ちにミャンマーに移植できるものではありませんが、今後ミャンマーでの歴史的木造建造物保存修復を担っていくべき彼らが、自らの文化遺産をいかにして将来に護り伝えていくかを考える上で、貴重な経験になったことと思います。引き続き協力事業を実施することで、同国の文化遺産保護に貢献していきたく思います。

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キルギス共和国及び中央アジア諸国における文化遺産保護に関する拠点交流事業

人材育成ワークショップに参加した研修生と金沢大学の大学院生

 文化遺産国際協力センターは、中央アジアの文化遺産保護を目的に、文化庁の受託を受け、2011年度より、中央アジア、キルギス共和国において「ドキュメンテーション」、「発掘」、「保存修復」、「史跡整備」をテーマに一連の人材育成ワークショップを実施しています。
 2014年7月3日から7月14日までの12日間、第7回目のワークショップ「史跡整備と展示に関する人材育成ワークショップ」を実施しました。
 今年の6月カタールで開催された世界遺産委員会で中央アジアのシルクロード関連史跡が世界文化遺産に登録されることが決定しました。しかし、ほとんどの史跡では史跡整備が追い付いていないのが現状です。現在、史跡整備、オンサイト・ミュージアムの建設は、中央アジア諸国で緊急の課題となっています。
 そのため、今回、キルギス共和国から3名、アフガニスタン・イスラーム共和国から3名の若手専門家を日本に招聘し、「史跡整備」と「展示」に関する人材育成ワークショップを実施しました。東京文化財研究所、奈良文化財研究所において、講義を実施したのち、日本を代表する考古博物館や史跡などの視察を行いました。
 また、今回の人材育成ワークショップには、金沢大学国際文化資源学センターが実施する「文化資源マネージャー養成プログラム」などの大学院生8名も参加してくれました。

カンボジア・タネイ遺跡における三次元写真計測

データ処理に取り組むアプサラ機構のスタッフたち
SfMによるタネイ遺跡内回廊西辺西側の三次元モデル

 アンコール遺跡群の保存管理を担当するアプサラ機構との共同研究・協力事業の一環として、7月21日から30日までの日程で、タネイ遺跡において同機構のスタッフとともに三次元写真計測を行いました。アプサラ機構が近年中に着手を予定しているタネイ遺跡の保存整備事業に向けた計画検討のための基礎資料作成に対する技術支援として、写真測量による三次元計測をもとに、立面図と散乱石材の記録のための一連の手順の確立を目指したものです。
 三次元計測の技術は日進月歩ですが、今回、私たちが試行したのはSfM(Structure from Motion)という手法で、高価な機材やソフトウェアを必要としない比較的簡便な方法であることが特筆されます。現場ではスマートフォン等の簡易なカメラで遺跡の現状写真を網羅的に撮影し、それらのデータをオープンソースのソフトウェアを用いて処理することにより、対象物の三次元モデルを得ることができます。一連の作業を通して得られたモデルの精度については、更に詳細な検証を要しますが、基礎資料として利用可能な水準にあるものと考えています。
 今後、カンボジア側がこのような手法を用いて寺院全域を記録していく過程で、実用面ではなお乗り越えるべき課題が残されているものと思いますが、特別な予算や機材を準備することが難しい同国のような発展途上国の遺跡保存の現場において、現地のスタッフ自らが日常業務の範囲内で遺跡の現状を記録できる手法として発展していくことが期待されます。

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ミャンマーの文化遺産保護に関する現地研修及び調査

バガヤ僧院での研修風景
壁画修復材料の調製に関する実習風景
シュエナンドー僧院の仏壇に用いられたガラスモザイク技法と損傷

 ミャンマー文化省考古・国立博物館局(DoA)をカウンターパートとする、文化庁委託「文化遺産国際協力拠点交流事業」の一環として、6月上旬から中旬にかけて現地研修及び調査を以下の通り実施しました。

 1)歴史的木造建造物保存に関する第2回現地研修
 2日から13日まで、マンダレー市内のDoA支局での座学と近郊のバガヤ僧院での現場実習を行い、DoA本・支局から建築・考古分野の職員8名とTechnological University (Mandalay)の教員・学生4名が参加しました。調査の下図となる略平面図の作成、床面の不陸や柱傾斜の測定、破損状態記録の手法などを実習し、班毎の調査成果を発表して今回研修のまとめとしました。一方、ミャンマーの木造文化財に共通する問題であるシロアリの被害について、専門家による調査を実施し、初歩的な講習も行いました。バガヤ僧院での蟻害は建物の上部にまで及んでおり、有効な対策を検討するため、研修生の協力によるモニタリング調査を開始したところです。
 2)煉瓦造遺跡の壁画保存に関する調査及び研修
 11日から17日まで、昨年より継続しているバガン遺跡群内No.1205寺院の壁画の状態調査や堂内環境調査を行い、壁画の損傷図面を作成しました。壁画の状態は比較的堅牢ですが、雨漏りに伴う壁画の崩落や空洞化、シロアリの営巣など今後の対策が必要な損傷が明らかになりました。また、バガン考古博物館では壁画の保存修復や虫害対策に関する研修を行い、DoAバガン支局の保存専門職員6名が参加しました。接着剤や補填材など修復材料に関する実習や、虫害対策に関する講義・実習については研修生らの要望が高く、今後もより応用的な内容で研修を継続していく予定です。
 3)伝統的漆工芸技術に関する調査
 11日から19日まで、バガン及びマンダレーで調査を行いました。バガンでは、軽工業省傘下の漆芸技術大学及び漆芸博物館の協力のもと、虫害調査とともに同博物館に所蔵される漆工品の構造技法や損傷に関する調査を進めました。その結果、応急的なクリーニングや展示保存環境の改善が必要と分かりました。マンダレーでは、ミャンマー産の漆材料に関する聞き取り調査のほか、漆装飾と併用されるガラスモザイク技法に関する調査を材料店と僧院において行いました。さらに、同地のシュエナンドー僧院でも、虫害調査と併せて、建物内外に施された漆芸技法について目視による観察調査を行いました。同僧院は内外部の殆どに漆装飾が施されていますが、紫外線や雨水等によって漆装飾の損傷が著しく進行していることが分かりました。

シンポジウム:シリア文化遺産の保護へ向けて

パネルディスカッションの様子

 2011年4月シリアにおいて大規模な民主化要求運動が発生し、そのうねりはとどまることを知らず、現在では、事実上の内戦状態となっています。シリア国内での死者はすでに14万人を超え、400万人以上が難民となって国外へ逃れています。
 内戦が繰り広げられる中、文化遺産の破壊も、また大きなニュースとして国際的に報道されています。アレッポやクラック・デ・シャバリエなど、シリアを代表する世界遺産が戦場となり、また多くの遺跡が盗掘にあい、博物館が略奪され、シリア国内からの文化財の不法輸出が国際的な問題となっています。このような中、ユネスコは、新たにシリアの文化遺産保護に向けた活動を開始しました。
 6月23日、東京文化財研究所は、シンポジウム「シリア文化遺産の保護へ向けて」を主催し、ユネスコが5月26日から28日にかけて行った専門家会議「シリアの文化遺産を保護するための国際社会への呼びかけ」に関する報告を行い、また、シリア文化遺産保護に向けた国内、海外のさまざまな取り組みを報告しました。

第15回文化遺産国際協力コンソーシアム研究会「文化遺産管理における住民参加」の開催

講演の様子

 文化遺産国際協力コンソーシアムは、6月26日、27日の2日間にわたり、国立民族学博物館との共催で東京文化財研究所セミナー室、大阪国際交流センター小ホールにて標記研究会を実施いたしました。
 近年文化遺産と観光開発の共存を推進する上で、住民参加型の文化遺産管理を主張する動きが地域、国家、国際レベルで見られますが、実践としてなかなかうまく機能しないことが問題視されています。このような現状に鑑み、改めて文化遺産管理における地域住民の役割や可能性について議論するため、今回「文化遺産における住民参加」というテーマを取り上げました。
 講演では当コンソーシアムの関雄二副会長・中南米分科会長による趣旨説明、問題提起の後、北海道大学観光学高等研究センター長の西山徳明氏(ペルー)、同センター特任准教授の八百板季穂氏(フィジー、ペルー)、公益財団法人文化財建造物保存技術協会の益田兼房氏(ミクロネシア)およびイーストアングリア大学日本美術・文化遺産准教授の松田陽氏(イタリア、英国)の4名の専門家から、それぞれ地域住民を巻き込む形での文化遺産のマネジメントの実態について事例報告いただきました。
 講演後のパネルディスカッションでは、講演で取り上げた事例と会場からの質問内容をふまえ、住民参加の理念の問題、実践における課題や国際協力の観点からの可能性について等、活発に議論が行なわれました。2日間で約130名の方にご参加いただき、文化遺産管理に携わるあらゆる立場から質問や意見が寄せられ、本テーマに対する関心の高さを窺い知ることができました。

飛鳥&天平衣装ファッションショー『平城宮ことはじめ』への参加

ファッションショーの様子
集合写真

 2014年4月22日から5月18日まで東京国立博物館で開催された特別展「キトラ古墳壁画展」の関連イベントとして、5月8日に同館講堂にて「飛鳥&天平衣装ファッションショー『平城宮ことはじめ』」が開催されました(主催:明日香村、文化庁、東京国立博物館、東京文化財研究所、奈良文化財研究所、朝日新聞社、協力:早稲田大学創造理工学部中川研究室)。東京文化財研究所からも13名のスタッフがモデルとして参加し、手作りの古代衣装に身を包むという、初めての貴重な体験をさせていただきました。これらの衣装はすべて古代衣装研究家、山口千代子先生(天平衣装企画)の手になるもので、和銅3年(710年)の平城宮内裏を舞台とした歴史の一幕が、奈良文化財研究所の杉山洋企画調整部長の企画演出により、きらびやかに再現されました。
 私自身もモデルの一人として参加させていただき、関係者一同が一丸となって一つの舞台を創り上げるという、楽しい緊張感と高揚感を味わいながら、古代世界に想いを馳せました。美しい衣装を身に付け、髪を結い上げ、沢山の装飾品をまといながら、往時の宮中の人々がどのように振る舞っていたのかと想像しようとしましたが、自分の想像力では全く追いつくことができず、歴史を学ぶことの難しさを改めて、身を以て実感するに至ったという体験でした。関係者の方々のご尽力に心から敬意を表するとともに、これからも更に興味を持って、歴史と向き合っていきたいと思っています。

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アルメニア歴史博物館所蔵考古金属資料の保存修復ワークショップ開催

アルメニア歴史博物館におけるワークショップ成果の展示
展示オープニングセレモニーの様子(右端が亀井所長)

 文化遺産国際協力センターでは、文化庁委託文化遺産国際協力拠点交流事業の一環として、アルメニア歴史博物館にて、平成26年5月20日~27日に第6回国内ワークショップを開催しました。本事業は、4カ年計画であり、これまでに考古金属資料の保存修復に関する一連の人材育成・技術移転を実施してきました。最終年度である本年のワークショップのテーマは「博物館における展示」です。
 アルメニア国内専門家6名、グルジア、ロシアからの2名の専門家を対象に、日本人専門家が、日本の博物館における展示事例紹介、展示の際に考慮すべき光や温湿度の影響、展示解説の有り方、展示に使用する材料などについて講義を実施しました。引き続いて、これまでのワークショップにおいて保存修復処置を終えた資料の展示作業をワークショップ参加者が主体となって行いました。展示では、アルメニアと日本の共同事業の成果を公開するだけでなく、博物館における保存修復活動を多くの人々に知ってもらえるよう、ワークショップ参加者が意見を出し合い工夫しました。具体的には、保存修復処置を行った資料とともに処置前の資料の写真を展示し、保存修復処置の一連の流れを映像にて上映しました。また、より詳細な調査研究の内容については、パンフレットを作成し配布しました。展示作業を終えたワークショップの最終日には、展示オープニングセレモニーを開催し、多くの外部関係者の方にもご参加いただきました。
 ワークショップ開催は今回が最後になりますが、今後は報告書の発刊を行う予定です。

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ユネスコ主催専門家会議「シリアの文化遺産を保護するための国際社会への呼びかけ」

シリアの文化遺産被災状況を報告するシリア古物博物館総局長

 2011年4月シリアにおいて大規模な民主化要求運動が発生し、そのうねりはとどまることを知らず、現在では、事実上の内戦状態となっています。シリア国内での死者はすでに14万人を超え、400万以上が難民となって国外へ逃れています。
 内戦が繰り広げられる中、文化遺産に対する被害も、大きなニュースとして取り上げられています。アレッポ、パルミラ、クラック・デ・シャバリエなど、シリアを代表する世界遺産が戦場となり、多くの遺跡が盗掘にあい、博物館が略奪され、シリア国内からの文化財の不法輸出が国際的な問題となっています。
 このような中、今年3月、シリアの文化遺産を保護するため、欧州連合の支援を受け、ユネスコは、新たに「シリア文化遺産緊急保護プロジェクト」を開始しました。
 今回、このプロジェクトの一環として、5月26日から28日にかけて、パリのユネスコ本部において、ユネスコ主催専門家会議「シリアの文化遺産を保護するための国際社会への呼びかけ」が開催されました。この会議には、22カ国から120名以上の専門家が参加し、東京文化財研究所からは山内、安倍の2名が参加しました。同会議では、シリアの文化遺産の被災状況が報告され、シリアの文化遺産を保護していくための今後の方針が活発に議論されました。

スリランカにおける内戦後の博物館および文化遺産の現状調査

ジャフナ考古博物館での調査
考古局トリンコマリー事務所での意見交換

 文化遺産国際協力コンソーシアムは、2月と5月の2度にわたり、国際交流基金の文化協力プログラム「スリランカにおける内戦後の博物館および文化遺産の現状調査」(事業参加者:東京国立博物館学芸企画部企画課長・小泉惠英氏、龍谷大学国際文化学部准教授・福山泰子氏)の調査支援を行ないました。本事業は2012年度の当コンソーシアムによる協力相手国調査にもとづき実施されたもので、スリランカ考古局協力のもと、1983年から2009年まで26年にわたる内戦の影響を受けた北部(ジャフナ地区)と東北部(トリンコマリー地区)の博物館を中心に、展示品、収蔵品の調査や文化財保存に関する情報収集を行ない、内戦終結後の文化財保存と活用の今後の方針について協議しました。
 スリランカではここ数年、考古局が中心となり、内戦の影響を受けた地域の復興に向け、その地域の特性を考慮した文化施設の設置や文化財を活用した地域開発の動きがみられます。ジャフナは仏教、ヒンドゥー教、キリスト教の信仰の足跡をたどることができるというスリランカ国内でもユニークな地であるばかりでなく、各植民地時代の建造物が残るなど多様な文化遺産が現存しています。トリンコマリーは数多い仏教遺跡のほか、海事や対外貿易の拠点としての歴史も有しています。これらを国内外にアピールするため、いずれの地区においても歴史的建造物を再利用した博物館や文化複合施設の設立計画がすすめられています。一方、現存する博物館では文化財の管理、展示の方法や人材の面などで多くの課題を抱えており、参加者は現地の職員と意見交換をしながら展示プランや管理方法について指導・助言を行ないました。
 内戦終結地域の文化財を活かした地域開発は、まだ始まったばかりで考古局は専門家の派遣、人材育成や資金の面で外国の支援を必要としています。今後も継続して各地域の復興の手助けになるような協力の可能性を探っていければと考えています。

ロビー展示「海外の文化財を守る日本の伝統技術」

ロビー展示風景
展示部分画像「絵を描く」群青が絵絹にのる様子

 当研究所1階エントランスロビーでは、定期的に研究成果や事業紹介を行っています。今回の展示では書画を作り、鑑賞し、修復し、保存していくために必要不可欠な材料と技術についてご紹介します。企画は文化遺産国際協力センターが担当し、全ての画像を企画情報部画像情報室の城野誠治が撮影しました。そして文化財が様々な材料と技術が複合的に用いられて形作られていることを実感して頂くため、表紙と軸木も取り付けた、縦1.15m、横14mの長大な絵巻仕立てで構成しました。紙の繊維が重なって一枚の紙ができていくところ、岩が砕かれて鮮やかな絵具として精製されるところ、糊が入念に練られてしなやかにのびていくところなど、それぞれの材料や技術の特性が表れる一瞬を、大きな画像で示しています。併せて和紙・絵絹・絵具・唐紙・装潢の道具などの実物も展示ケースにて展示しています。今日では、この展示で紹介する材料や道具を作る技術、文化財を修復する技術自体も守っていく必要があり、国の重要無形文化財、選定保存技術に指定、認定されています。一方で、これらの日本で培われてきた技術や材料は広く海外でその有効性が認知され、海外の文化財修復に応用されてきています。当研究所では日本の修復技術や材料に関する正しい知識の普及のため、海外向けの研修事業も行っております。日本の優れた伝統技術によって、世界の文化財が守られ、後世に伝えられていくことにご理解いただければ幸いです。

文化遺産国際協力コンソーシアム平成25年度総会および第14回研究会「文化遺産保護の国際動向」の開催

講演風景

 2014年3月7日(金)に標記総会および研究会を開催しました。総会では、例年通り、コンソーシアムの平成25年度事業報告と平成26年度事業計画を事務局長より報告しました。続いて行った研究会では、国際交流基金理事長の安藤裕康氏による「文化を通じる国際協力と交流―双方向性に向けて」と題する基調講演ののち、文化遺産保護に関する最新の国際動向について、昨年開催された各分野の国際会議での議論を中心に、4名の方にご報告いただきました。
 まず、文化庁主任文化財調査官の本中眞氏より、富士山の世界遺産登録を事例に、登録に至るまでの審議の過程や世界遺産登録後の課題についてお話しいただきました。続いて企画情報部情報システム研究室長の二神葉子より、ユネスコ無形文化遺産保護条約第8回政府間委員会での審議内容についての報告とともに、委員会で議論となった事項や最近の同条約をめぐる問題についての発表がありました。 さらに、国立文化財機構本部の栗原祐司事務局長にご登壇いただき、ICOM大会招致に向けて、ICOM日本委員会が行っている活動や今後の見通しなどについてご発表いただきました。 最後に、コンソーシアムの前田耕作副会長より昨年イタリアのオルビエトで開催された第12回バーミヤン専門家会議での議論に関するご発表がありました。
 今回は約100名のかたの参加がありました。コンソーシアムでは例年同様のテーマの研究会を開催しておりますが、参加者のみなさまには文化遺産保護をめぐる最新の国際動向について情報共有し、意見交換していただく場として活用していただいております。今後も、研究会等を通じた情報共有に取り組んでいきたいと思います。

ミャンマー文化省職員の日本招聘及び研究会開催

研究会「ミャンマーの文化遺産保護に関する現状と課題」
今城塚古墳公園

 2月17日から22日までの日程で、ミャンマー文化省考古・国立博物館局職員3名を日本に招聘しました。18日には東京文化財研究所において、「ミャンマーにおける文化遺産保護の現状と課題」と題した研究会を昨年度に引き続き開催したほか、関東及び関西地域に所在する様々なカテゴリーの文化遺産(建造物、美術工芸品、史跡、重要伝統的建造物群保存地区等)を見学するとともに、各地の保存管理担当者よりお話をうかがい、意見交換を行いました。
 研究会では、ミャンマー側の3氏から、ご自身が携わる文化遺産保護に関する取り組みを中心にご発表いただきました。ピュー古代都市での発掘調査や遺跡保存の状況、ベイタノーでの保存管理計画や住民啓発活動、またインワのバガヤ僧院での修理・補修工事について、多数の写真を交えながらご報告いただきました。日本側からは、東京及び奈良の文化財研究所から3名の専門家が、ミャンマーとの間で実施している協力事業の進捗と今後の展望について報告し、会場との間でも活発な質疑応答が行われました。
 国内の文化遺産関連施設見学では、東京国立博物館、大塚・歳勝土遺跡公園、横浜市歴史博物館、仁和寺、法隆寺、奈良文化財研究所・平城宮跡、京都府南丹市美山町重要伝統的建造物群保存地区、今城塚古墳・古代歴史館・新池埴輪製作遺跡等を訪問し、わが国の文化遺産保護の現状について理解を深めていただきました。

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ミャンマー壁画修復専門家の日本招聘研修

研修風景(日本の古墳壁画修復事例の紹介)

 文化庁委託「平成25年度文化遺産国際協力拠点交流事業」の一環として、ミャンマー連邦共和国文科省に所属する壁画修復専門家2名を、2月3日から2月7日の間日本に招聘しました。招聘期間の前半には、壁画修復に関する研修として、日本の絵画書籍を修復する修復工房の見学、日本における壁画修復の事例についての講義や、日本の古墳壁画の修復に使用される材料や技術についての講義と実習を行い、招聘期間の後半には、京都・奈良にある寺院壁画等の視察を行いました。視察中は、講義で紹介した壁画を実際に間近で観察しながら、日本およびミャンマーにおける修復材料や技術について活発な意見交換が行われ、ミャンマー招聘者の壁画修復に対する意欲の高さがうかがわれました。今後も同国の壁画修復家らを招聘し同様の研修を行うことで、壁画修復に関する両国の協力体制をより強固なものにしてゆきたいと考えています。

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ミャンマーにおける第1回木造建造物保存研修

文化財保護に関する基礎講義
インワ・バガヤ僧院での実測調査

 文化庁委託文化遺産国際協力拠点交流事業の一環として、2月4日から12日までの日程で、第1回の木造建造物保存研修をマンダレー及びインワにて実施しました。本研修は、ミャンマーの伝統的建造物の中でも未だ十分な保護の対象となっていないコンバウン王朝時代の木造僧院建築に焦点をあて、その適切な保存に向けた基礎調査、記録・図面作成、保存管理・修理計画策定等をテーマに実施するもので、主に同国文化省考古・国立博物館局の若手から中堅のスタッフを対象として、3年間で全5回の現地研修を予定しています。第1回研修には11名の研修生が参加し、建築史・修復史や文化財保護制度等に関する基礎講義の後、インワのバガヤ僧院において、建造物調査のもっとも基本となるスケッチと平面実測を行いました。
 歴史的な木造建造物の保存及び修理に関して我が国は豊富な専門知識と経験を蓄積していますが、ミャンマーの伝統的な建築技法や様式等に関しては調査研究が十分ではなく、未解明の点が多く残されています。往時の建造物がどのような寸法体系で、どのように設計され、建築されたのか、といった視点をもって、研修生とともに調査に臨むことを通じて、ミャンマーにおける木造建造物の史的再評価も目指しています。研修生たちは非常に意欲的に参加しており、今後の一連の研修の中で必要な技術と視点を身に付けていくことが期待されます。

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アメリカ・ボストンにおける動産文化財の保護についての調査

ボストン美術館
イザベラ・ガードナー美術館

 文化遺産国際協力センターでは各国の文化財保護制度に関する調査・研究を行っています。そのプロジェクトの一環として、昨年度に引き続き、アメリカにおける動産文化財の保護についての調査を実施しました。世界有数の博物館・美術館が存在しているにも関わらず、アメリカには動産文化財の保護・管理に当たる省庁はなく、国として規制・監督していることは限られています。昨年度までの調査により、アメリカでは当該分野に関連する非営利団体と関係省庁が自発的に連携し、災害時や問題発生時には複数の組織が効率よく機能し、問題解決を実現している様子が確認されました。また、日々の動産文化財の管理については、各博物館・美術館の独自の倫理観に大きく依拠している現状も明らかになりました。
 そこで、今年度は、2014年2月10日~14日にかけて、江村知子と境野飛鳥の2名で、ハーバード大学美術館とボストン美術館を対象に、より具体的な聞き取り調査を行いました。また、イザベラ・ガードナー美術館では個人の遺言が所蔵品の管理方法に対して大きな効力を及ぼしている状況について調査しました。今回の調査を通じて、特にボストン美術館は、地元の有志によって公的組織として設立されたという経緯から、社会における同館の位置付けが重要視されており、それが同館の所蔵品管理における倫理観にも影響を及ぼしていることを窺い知ることができました。
 美術館・博物館の設立経緯やコレクションの形成過程が、今の文化財管理に反映されている可能性も視野に入れつつ、今後もアメリカ国内の博物館・美術館において、調査を継続したいと考えています。

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