研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『東文研ニュース』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

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国宝高松塚古墳壁画の保存(絵画修理を中心に)

解体後、仮設修理施設に運び込まれ、修理を待つ壁画

 高松塚古墳壁画の保存に関しては、平成17年に微生物対策の観点などから石室を一旦解体して取り出して修理することが決定され、その後、石室の解体や石の移動方法、壁画や石の処置法、修理施設など様々な方面の検討を重ねてきました。そして、本年4月からは石室の解体、石の修理施設への移動、絵画の修理が始まりました。東京文化財研究所は、特に、環境制御、生物対策、絵画修理という点を中心に、この高松塚古墳壁画保存のプロジェクトに寄与していますが、ここでは絵画に対して行われる処置について報告します。
 石を古墳から修理施設に移動する際の絵画への様々な影響を十分に検討しました。
 絵画面に対しては、念には念を入れて、セルロース誘導体を用いて強化したり、特殊な紙を使用して表面を保護します。修理施設に運びこまれた石は、まず前室で、石の表面に付着した汚れをクリーニングします。修理施設内の環境はカビにとっては生育しやすい条件ではありませんが、クリーニングの際には、エタノールを用いた消毒もあわせて行います。クリーニングが終了した石は修理室内の所定の位置に移動されます。絵画の修理としては、石が修理室に運び込まれてからが主な作業になりますが、現在のところ、保護がある部分はそれを慎重に除去し、絵画表面の観察を行い、絵画面のクリーニングや修理の方法を検討しているところです。
 5月31日現在、7枚の石が修理施設に運び込まれ、本格的な絵画修理が始まるのを待っています。

高松塚古墳石室解体時の断熱覆屋内の空調制御

断熱覆屋内の空調制御装置の外観

 石室の解体修理のため、墳丘部の発掘が進み、石室が外気に接しますと石室内の温湿度は、外気の温湿度変化の影響を受けて大きく変化することが予想されます。そのため、石室内の温湿度を一定に保つために内部断熱覆屋を墳丘部に設置し、内部の空調を行いました。カビは一般に暖かくなるほど発育が盛んになりますので、墳丘部を冷却管により冷やした温度と同じ 10℃になるよう温度を設定しました。また、湿度に関しては、90%を目標に制御をしました。
 湿度制御は、スクラバーと呼ばれる水を噴霧している容器内に空気を通すことにより加湿し、ファンコイルと呼ばれる熱交換器部分の温度を調整して湿度の制御を行いました。 10℃という低温では、わずかな温度変化で、相対湿度が大きく変わってしまうため、断熱覆屋内の温湿度の測定値をコンピューターに入力し、フィードバック制御を行いました。内部断熱覆屋内の空調制御に関しましては、京都大学の鉾井修一教授らのご協力を頂き、当初の目的通りの制御を行うことができました。

2007年能登半島地震における被災文化財調査

能登半島地震で被災した門前町の角海家住宅と土蔵(石川県指定有形文化財)

 2007年3月25日午前9時42分、能登半島にてM6.9、最大震度6強の地震(平成19年(2007年)能登半島地震)が発生しました。その結果、震源近くでは家屋の全半壊、ライフラインの寸断など大規模な被害をもたらしました。文化財も例外ではなく、石川県内で21件の文化財被害が報告されています(石川県教育委員会調べ、2007年4月4日)。  今回、保存修復科学センターでは、能登半島地震における文化財被害について、被害状況や被害要因を早急に把握し、応急措置や将来の修復計画に関する助言を行うことを目的に現地調査を行いました。調査期間は2007年4月16日(月)から18日(水)まで、輪島市内の文化財展示施設、文化財建造物を対象に行いました。
 ある文化財展示施設については、漆芸品パネルの吊り展示を行っていましたが、吊り金具の破損による落下被害状況を目の当たりにしました。また、震源地近くに位置する門前町黒島地区では、母屋や土蔵がほぼ全壊という状況のなか、資料館の収蔵庫が焼失するという二次被害の現場を実見することとなりました。
 阪神・淡路大震災以後、文化財の防災について様々な調査研究、政策が採られましたが、今回の調査地のように、その情報が全国に行き渡っていない現状があります。東京文化財研究所では今後、文化財の防災に関する研究を推し進めてゆくとともに、積極的な情報公開により、文化財防災についてより多くの方に知って頂くよう努力してゆく所存です。

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