研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『東文研ニュース』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


国際研修「漆の保存と修復」

スターディーツアーにおける漆掻き見学
漆工品の修復実技

 保存修復科学センターでは、9月2日から15日にかけて国際研修「漆の保存と修復」をICCROM〔国際保存修復研究センター〕と共同開催で行いました。この研修は、講義、実技、見学からなります。今回の研修には、オーストリア・ドイツ・イギリス・ポ-ランド・ロシア・ポルトガル・カナダ・アメリカから8カ国9名の研修生が参加し、漆工の歴史、漆の科学と調査方法、伝統的な漆工技術、漆工品や漆塗装の修復理念と修復方法などについて、それぞれの専門家から学びました。またスタディーツアーでは、日本産漆の80%ちかくを生産している二戸市浄法寺町周辺を訪れました。まず、八戸市縄文学習館や御所野縄文博物館で日本列島における漆のルーツにあたる縄文時代の出土漆器を見学し、次に浄法寺町での漆掻きと隣の青森県田子町での漆掻き用具作りを見学しました。さらに八幡平市では安代漆工技術センターでは実際の漆精製作業を見学し、現在では珍しくなった大正時代から昭和初期に使われていた古い時代の漆室(塗蔵)と漆工用具も見ました。そして、最後に中尊寺金色堂を見学しました。今回の研修生は、自分の美術館や博物館に日本からもたらされた漆工品を所蔵しておりその対処に苦慮しているか、実際の修復現場にいる人たちが主でした。そのため、問題意識はとても高く、皆、大変熱心でした。とくに「日本の漆のことはある程度本で学んだことはあるが、実際の物や作業を見て勉強できたことは、今後に向けてとても良い経験になった」という言葉はとても印象的でした。

伝統的な漆器生産技術に関する基礎調査

漆室(塗土蔵)
漆室内の環境調査

 保存修復科学センターでは、「伝統的修復材料および合成樹脂に関する調査研究」プロジェクト研究の一つとして、伝統的な漆器生産技術に関する基礎調査を継続して行っています。これまで浄法寺漆の生産で知られる岩手県二戸市周辺の旧安代町岩屋地区(現八幡平市)の小山田盛栄氏所有の漆室(塗土蔵で明治期~昭和初期まで使用)の現地調査を実施しました。この種の小規模で在地性が強い伝統的な漆室は全国的にも極めて稀少です。この土蔵内に残された一連の漆塗料や蒔絵材料、漆工用具の整理作業を通じて、これまであまり知られていなかった一つの工房内に帰着する漆器生産技術の流れが明確になり、ここの作業環境が漆塗りを行うのに適していることもわかりました。この調査結果は、今年度開催予定の国際研修「漆の保存と修復」の教材としても使う予定です。

博物館・美術館等保存担当学芸員研修

学芸員研修における実習の様子

 今回で26回目となる表題の研修を7月13日より2週間行い、北は岩手、南は沖縄から31名の文化財施設に勤務する学芸員が参加しました。参加者の専門は、考古から現代美術まで様々ですが、本研修では、あらゆる文化財資料を対象に、保存環境や劣化、修復などに関する基礎的な知識や技術を、講義と実習を通して学んでいただき、保存に役立てていただくことを目的としています。
 保存環境実習を実地で応用する「ケーススタディ」は千葉県立中央博物館をお借りして行いました。参加者が8つのグループに分かれて、それぞれが設定した温湿度や照度、防災設備などの調査を行い、次の日にその結果を全員の前で発表しました。
 本研修の修了者は今回で597名となりました。皆さん、文化財保存の最前線で活躍しておられます。我々は今後も、現場の声を大事にしながら、更なる研修内容の充実に努めていきたいと思っています。

東大寺法華堂安置仏像群の耐震に関する調査

法華堂安置仏像群の三次元計測

 東大寺法華堂には、国宝・乾漆不空羂索観音立像をはじめ多くの乾漆像や塑像が須弥壇上に安置されております。奈良盆地では高い確率で大地震が発生することが予測されており、法華堂安置仏像群について早急な耐震診断および対策立案が求められています。そこで保存修復科学センターでは、耐震診断に必要な情報を得るため、安置仏像群の三次元計測および法華堂建物および須弥壇の目視調査を実施しました。
 三次元計測では、前回の東大寺戒壇堂の国宝・塑造四天王立像でも使用した「ステレオカメラの移動撮影に基づいた簡易形状計測システム」(凸版印刷株式会社にて開発中)について、法華堂須弥壇内にて安全に計測できるようにケーブルレス化したものを用いました。その結果、調査期間内に6体躯の計測が終了しました。
 また、法華堂建物および須弥壇の目視調査は、木質構造の専門家を招へいのうえで実施しました。今後はその結果をもとに、須弥壇および建物の常時微動調査を進めていきたいと考えています。

保存担当学芸員フォローアップ研修

石崎センター長による講義

 この研修は、毎年実施している「美術館・博物館等保存担当学芸員研修」の修了生を対象に、資料保存に関する最新の研究やトピックスをお伝えするもので、今年は6月22日、69名の参加者を得て開催しました。
 今回は資料保存の現場をとりまく、最近の2つの大きな流れをもとにテーマを設定しました。ひとつは、地球温暖化が懸念され、省エネ化があらゆる所で求められている現在における内外の文化財施設の取り組みについて、石崎保存修復センター長が講義を行いました。
 また、大学における学芸員課程が改訂され、3年後より「資料保存環境論」が必須となります。これは今後、学芸員には資料保存に関する自然科学的な知識が例外なく要求されることを意味します。これを踏まえ、保存環境論のうち「温湿度」「空気環境」「照明」に関する最新の基礎に関する講義をそれぞれ、犬塚主任研究員、佐野保存科学研究室長、そして吉田が担当しました。
 どちらの内容も、参加者の皆様にとっては、自身のフィールドに直接かかわる問題だけに、真剣そのものでした。と同時に、我々にとっても保存環境を研究する機関の人間として、責任ある研究と情報提供を心掛けねばならないと実感した今回の研修でした。

海外工房における平成21年度在外修復事業

唐子図引き取り
修復前の調査

 保存修復科学センターでは、平成21年度の在外修復事業の一環として、今年もベルリンのドイツ技術博物館内のアトリエにて絵画の修復作業を始めました。修復している作品は昨年度から継続している朱衣達磨図(ケルン東洋美術館所蔵)と今年度始まった唐子図(ベルリン国立アジア美術館所蔵)の2点です。修復アトリエの広さの関係から同時に二つの作品の修復作業はできませんが、修復作業者同士うまく連携しながら修復作業を進めました。今年は、ベルリンも若干日本の梅雨のように雨が多く湿度が高い日が多くむしむしした日が多かったようです。今回の修復作業は7月8日でいったん終了となります。なお、達磨図に関しては今回の修復で終了の予定です。

キトラ古墳壁画の漆喰取外し

ワイヤソーによる漆喰取外しの様子
現在のキトラ古墳天井(紫は石材露出部分)

 保存修復科学センターでは文化庁からの受託事業「特別史跡キトラ古墳保存対策等調査業務」の一環としてキトラ古墳壁画の取外しを行っています。現在、石室内は微生物による汚染の増大が懸念されており、より早期に漆喰を取外すことが求められています。そこでこれまで月に1回、3日間程度実施していた取外し作業を、今年度からは1ヶ月間連続して行うことにしました。第1回目は5月11日からスタートし、主に天井南側の漆喰を取り外しました。1ヶ月間集中的に作業を行うことで効率を上げて取り外すことが可能となりました。また、図像のある漆喰は全て取外されていることから、紫外線照射による微生物の制御を行い、良好な結果が得られています。今回の作業の成功を踏まえ、今秋にも集中的な取外しが実施される予定です。

各務原、豊田市での近代文化遺産の保存と修復に関する現地調査

百々貯木場(矢作川左岸)
足助地区の郡界橋

 保存修復科学センターでは、かかみがはら航空宇宙科学博物館において航空機等、屋外保存されている鉄製文化財の保存環境及び劣化の状況を調査しています。今回は、豊田市において、保存されている百々貯木場、ダルマ窯、明治用水旧頭首工と船通し閘門、伊世賀美隧道、旧郡界橋など、石造から土窯、鉄筋コンクリート造まで多彩な近代化遺産について、その保存状況や保存上の問題点など、現地の担当者を交えて議論してきました。豊田市もトヨタ自動車のお膝元というだけでなく、明治の時代から続く養蚕や、矢作川を利用した材木輸送など、幾つかの近代文化遺産を活用すべく頑張っています。私たちも少しでもお役に立つよう頑張っていく所存です。

海上自衛隊鹿屋航空基地での現地調査について

二式大艇
機内の状況

 保存修復科学センターでは、海上自衛隊鹿屋航空基地において航空機等、屋外保存されている鉄製文化財の保存環境及び劣化の状況を調査しています。屋外保存されている鉄製文化財(航空機、鉄道車両、櫓、船舶)は、通常、その大きさゆえに雨露をしのげる屋根もかけることが出来ない為、保存環境としては非常に劣悪な状態となっています。また、屋外展示されている航空機(二式大艇)の機内に関しても、温湿度の計測を継続して実施しております。機内の保存環境は閉所であるがゆえに、屋外よりもさらに過酷な状況になっており、機体内部の鉄以外の材料(電線の樹脂製被覆等)が溶け出して機内を汚損するなど非常に憂慮すべき状態となっています。今後も注意深く状況を把握し、必要と思われる措置をとっていただくよう、働きかけていく所存です。

フランス・歴史記念物研究所との研究交流

フランス 歴史記念物研究所 (LRMH)

 フランスのラスコー洞窟の保存を手がけているフランス歴史記念物研究所(LRMH)の招きにより、2009年3月16日~20日、LRMHを訪ね、記念物等の生物劣化対策について研究交流を行いました。LRMHでは、洞窟や石造文化財の生物劣化について先進的な研究活動をしていますが、木造建造物の保存も近年手がけており、生物劣化関係は3名の常勤の研究者により精力的な研究が進められています。この微生物部門の他に、洞窟壁画部門、壁画部門、木材建造物部門、石造文化財部門、コンクリート部門、金属部門、染飾品部門、ステンドグラス部門、分析部門などで多くの研究者が活動しています。東京文化財研究所が現在対象としている分野と非常に近い研究をしており、今後も関連する分野で活発に研究交流や情報交換を進めていければと思います。

『保存科学』48号 発刊

『保存科学』48号

 東京文化財研究所保存修復科学センター・文化遺産国際協力センターの研究紀要『保存科学』の最新号が、平成21年3月31日付けで刊行されました。高松塚古墳・キトラ古墳の保存に関する研究情報、敦煌莫高窟保存のための調査研究など、当所で実施している各種プロジェクトの最新の研究成果が発表・報告されています。ホームページから全文(PDF版)をお読みいただけますので、ぜひご利用ください。(当所HPから保存修復科学センター保存部門に入る
http://www.tobunken.go.jp/~hozon/pdf/48/MOKUZI48.html

THE 31st INTERNATIONAL SYMPOSIUM ON THE CONSERVATION AND RESTORATION OF CULTURAL PROPERTY-Study of Environmental Conditions Surrounding Cultural Properties and Their Protective Measures- (全英文)発刊

THE 31st INTERNATIONAL SYMPOSIUM ON THE CONSERVATION AND RESTORATION OF CULTURAL PROPERTY-Study of Environmental Conditions Surrounding Cultural Properties and Their Protective Measures-

 平成20年2月5-7日、当所で行われた第31回文化財の保存および修復に関する国際研究集会「文化財を取り巻く環境の調査と対策」の報告書が発刊されました。ラスコー洞窟壁画、高松塚古墳壁画など、現地保存における被害事例とその計測・調査・評価方法、シミュレーションを含む環境解析およびその対策事例の報告など、多岐にわたる研究成果をまとめました。イタリア、フランス、ドイツなど諸外国の取り組みをふんだんに盛り込み、特に壁画の保存計画策定について、有用な事例集となりました。今後の研究交流の礎として、充実した研究成果を海外へ情報発信できました。

珍敷塚古墳のカビ対策のための調査

修復のための状態調査

 特別史跡珍敷塚古墳の保存修復のための指導助言及び調査を行いました。珍敷塚古墳は赤やグレーの顔料で文様が描かれた装飾古墳です。長い歴史の中で墳丘は失われ、現在は石室に用いられた石が露出しており、その周囲を覆屋で保護しています。この覆屋内の石の表面に大量のカビが発生し顔料が不鮮明となっていることがわかりました。そこで本格的な修復作業に向けた予備調査として、カビのサンプリングを行い、紫外線や筆などによるカビの除去を試みました。また、石表面温度の測定、近赤外水分計による水分量の測定を行い、処置が石に与える影響を検討しました。これらの調査結果を踏まえ、来年度には本格的な修復作業が実施されます。また、緊急的な処置だけでなく、覆屋内の環境制御を含めた中長期的な保存対策が求められています。

「第13回博物館保存科学研究会」の開催

報告会における質疑応答の様子
(於 三重県立美術館)

 表題の研究会を2月13日、14日の2日間、三重県内で開催しました(主催 博物館保存科学研究会、三重県博物館協会、東京文化財研究所)。この研究会は、担当学芸員研修の受講経験者や開催県内の学芸員などが参加し、主に文化財施設における実践的な保存活動についての講演や情報交換を行うものです。初日は、三重県立美術館において、報告会を行いました(参加者60名)。まず、三浦定俊客員研究員が「保存環境づくりのこれまでとこれから」というタイトルで基調講演を行いました。そして、三重県内の4人の学芸員および犬塚将英研究員が、環境管理や施設改修、整備に関する報告を行い、それぞれに対して、活発な質疑応答が繰り広げられました。2日目は、伊勢市にある皇學館大學佐川記念神道博物館、神宮徴古館、神宮農業館および神宮美術館を見学しました。参加者の皆様はそれぞれの館における保存環境と比べながら、ここでも様々な角度から情報交換や議論を行っていました。この研究会は、旧交を温め、また受講年度の異なる学芸員が交流する機会を持つOB会という側面と、普段はあまり接する機会の少ない、他地方の文化財保存の現場を目の当たりにすることで、自身の勤務館における保存のあり方を見つめなおすという大きな意義があります。本研究会の実現にご協力頂いた多くの皆様に深く御礼申し上げます。

東大寺戒壇堂安置の国宝・塑造四天王立像に関する調査

X線撮影調査風景
三次元計測調査風景

 保存修復科学センターでは、「文化財の防災計画荷関する調査研究」の一環として、塑像の耐震対策に関する研究を行っております。今回、国宝・塑造四天王立像(東大寺戒壇堂安置)を対象に、現状把握および耐震対策の立案を進めました。
 この国宝・塑造四天王立像は、奈良国立博物館により、平成14(2002)年に開催された特別展「東大寺のすべて」に出品する際に調査が行われました。今回は三次元計測および、以前の調査で撮影不可能な部分を補完するためのX線透過撮影を実施し、今後行う予定の耐震診断に必要な情報収集を行いました。
 三次元計測に関しては、凸版印刷株式会社と共同で調査を行いました。複雑に配置された塑像に対して移動させることなく計測可能なシステムとして、凸版印刷株式会社で開発中のステレオカメラの移動撮影に基づいた簡易形状計測システムを採用した結果、レーザー三次元計測では撮影が難しいとされる入り組んだ部分についても情報を得ることができました。今後はこれらの計測結果をまとめたうえで、塑像の耐震診断を行う予定です。

ドイツ・ケルン東洋美術館における漆の修復ワークショップの実施

修復した漆工品を前にした講義
麦漆による接着や刻苧つけの実習

 保存修復科学センターでは、平成20年度在外日本古美術品保存修復協力事業の一環として、ドイツ・ケルン東洋美術館において漆の修復ワークショップを昨年度に引き続き行いました。本年は、ワークショップⅠ(初級実習)を受講者10名で11月5日~11月7日の3日間、ワークショップⅡ(初参加者対象)を受講者10名で11月8日、同(学生対象)を受講者7名で11月9日にそれぞれ1日間、ワークショップⅢ(中級実習)を受講者7名で11月11日~11月14日の4日間の3つのレベル別グループにわけて実施しました。講師は、現地において修復作業を実施してくださった技術者2名です。参加者は、ドイツ国内はもちろん、イギリス、スイス、オーストリア、ポーランドなどヨーロッパ各地から学芸員や文化財の修復技術者など、日本の伝統的な漆工品修理に関心が高い人達ばかりでした。ワークショップでは、在外漆工品における修復事例の報告、漆ヘラつくりや修復実習用の手板を用いた麦漆による接着や刻苧付け、竹ひごによる芯張り実習など多岐に渡りましたが、皆、大変熱心で質問も多く、とても盛況でした。

中級研修-空気環境最適化のための基礎と実践-を試行して

 博物館・美術館等保存担当学芸員向けに、大気や室内空気汚染物質の性質、被害例、制御方法、監視計画の立て方、対策の実施例などを総合的に学ぶ研修を試行しました(12月15-16日、参加者40名)。「汚染物質計測のための仕様書を策定し、報告書を読みとき結果を評価し、建築設計や空調設備技術者と対策について検討することができる力を身につける」を目的に、最先端の研究成果や技術的内容を含む、やや難しい講義・実演が続きましたが、参加者はみな真剣に取り組んでいました。用語集の提供、必要な機器・スペース等の情報が得られたことについて評価が高く、将来ネット上での公開希望が多数寄せられました(満足度100%、38名回答)。

研究会「文化財の保存環境を考慮した博物館の省エネ化」の開催

 2008年12月4日に、「文化財の保存環境を考慮した博物館の省エネ化」というテーマで研究会が東京文化財研究所セミナー室に於いて開催されました。このテーマに関しては、保存修復科学センターの連携会議で博物館と文化財研究所が連携して行う研究テーマとして同意され、企画されたものです。ここでは、米国ゲティー保存研究所の前川信氏に「博物館・美術館・図書館・資料館での継続性を考えた環境管理方法」、北九州市立大学の白石靖幸氏に「建築物の総合環境性能評価手法と評価事例の紹介」の講演を頂きました。さらに具体的な取り組みについて九州国立博物館および埼玉県立歴史と民俗の博物館から報告を頂きました。
 参加者は141名であり、活発な討論が行われました。

キトラ古墳天井天文図の取外し終了

天文図取外し作業の様子
天文図を取外し終了後の天井

 東京文化財研究所では文化庁からの受託事業「特別史跡キトラ古墳保存対策等調査業務」の一環としてキトラ古墳壁画の取外し作業を進めています。平成19年7月からは天井天文図の取外しに着手し、平成20年11月末をもって作業が終了しました。天文図は漆喰の状態が場所により異なり、天井に向かっての作業は困難を伴いましたが、技術の改良を重ね、星座ごとなど合計113片の漆喰片として取外しました。この作業の終了をもって、四神や十二支を含め、石室内で現在確認できる図像をすべて取外したことになります。今後は天文図周辺など無地の漆喰の取外しを行っていく予定です。また、取外した漆喰片を組み合わせて天文図を再構成し、将来の展示に向けた作業を進めていきます。

文化財の環境影響に関する日韓共同研究報告会の開催

佛国寺多宝塔における病害調査
日韓共同研究報告会参加者

 保存修復科学センターでは大韓民国・国立文化財研究所(韓文研)保存科学研究室と共同で、文化財における環境汚染の影響と修復技術の開発研究を実施しています。現在は、磨崖仏など屋外環境下にある石造文化財を対象に、劣化原因調査および修復材料・技術の開発評価を行うとともに、年1回、日韓交互で研究報告会を開催しています。
 今年度の研究報告会は、平成20(2008)年11月6日に韓文研講堂にて開催しました。東文研からは、鈴木規夫所長をはじめ6名が参加し、朽津信明・森井順之・山路康弘(別府大学)より石造文化財の保存修復に関する研究成果を発表しました。研究会の前には、慶州・佛国寺多宝塔や感恩寺址三層石塔の修復現場を視察し、修復材料や技法に関して韓国側研究者と議論を行いました。また、大邱・慶北大学博物館を訪問し、大伽耶池山洞古墳群出土品の調査も実施しました。
 今後もこうした共同調査を継続し、日本と韓国の研究交流がより深いものになればと願っています。

to page top