研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『東文研ニュース』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


寄附金の受入

㈱東京美術倶楽部淺木会長(中央)と亀井所長(右)
㈱東京美術倶楽部三谷社長(左)と亀井所長(中央)

 東京美術商協同組合(中村純理事長)より東京文化財研究所における研究成果の公表(出版事業)の助成を、また、株式会社東京美術倶楽部(三谷忠彦代表取締役社長)より東京文化財研究所における研究事業の助成を目的として、それぞれ寄附金のお申し出があり、11月30日に東京文化財研究所の口座にお 振込みいただきました。
 ご寄附をいただいたことに対して、株式会社東京美術倶楽部淺木正勝代表取締役会長及び三谷忠彦代表取締役社長にそれぞれ、亀井所長から感謝状を贈呈しました。東京美術商協同組合中村純理事長は、御都合により同席できなかったため淺木会長に中村理事長に代わって宛感謝状をお受け取りいただいております。
 当研究所の事業にご理解を賜りご寄附をいただいたことは、当研究所にとって大変ありがたいことであり、今後の研究所の事業に役立てたいと思っております。

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12月施設見学

説明を受ける共立女子大学および、Metropolitan Museum of Artの方々

 共立女子大学家政学部 2名
 共立女子大学において染織品保存修復論・博物館実習などを教えており、見学が今後の学生教育にとって、非常に参考になるため、また、Kristine Kamiyama氏は、Metropolitan Museum of Artにおいて染織品の修復に携わっており、見学が今後の仕事に非常に参考になるため来訪。資料閲覧室、実演記録室、分析科学研究室を見学し、各担当研究員による業務内容の説明を受けました。

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文化財情報資料部研究会の開催―黒田清輝宛、山本芳翠の書簡を読む

明治28年4月5日付、黒田清輝宛山本芳翠書簡より
清国から犬一匹と水仙一鉢を持ち帰った芳翠自身の姿が描かれています。

 当研究所はその創設に深く関わった洋画家、黒田清輝(1866~1924年)宛の書簡を多数所蔵しています。黒田をめぐる人的ネットワークをうかがう重要な資料として、文化財情報資料部では所外の研究者のご協力をあおぎながら、その翻刻と研究を進めていますが、その一環として12月8日の部内研究会では、福井県立美術館の椎野晃史氏に「黒田清輝宛山本芳翠書簡―翻刻と解題」と題して研究発表をしていただきました。
 明治前期を代表する洋画家の山本芳翠(1850~1906年)は、フランス留学中、法律家を志していた黒田に洋画家になることを薦めた人物として知られています。帰国後も自分の経営していた画塾生巧館を黒田に譲り、また黒田の主宰する白馬会に参加するなど、その親交は続きました。当研究所にはそうした日本での交遊のあとを示す、14通の黒田宛芳翠の書簡が残されています。うち9通は明治28(1896)年の消印があり、ともに画家として従軍した日清戦争から帰国した直後の制作活動や、黒田が第4回内国勧業博覧会に出品して裸体画論争を引き起こした《朝妝》についての所感が記されています。なかには清国から帰国したばかりの芳翠自らの姿を描きとめるなど、ほほ笑ましいものもあります。在仏中にパリの社交界を沸かせるほどの快活な性格で知られる芳翠の、帰国後の心性がうかがえる、注目すべき一次資料といえるでしょう。研究会では、ひと回り以上年下ながら洋画界のトップに登り詰めた黒田清輝と芳翠の画壇での立ち位置にも話が及び、その胸中に思いを致すこととなりました。

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第11回無形民俗文化財研究協議会の開催

 12月9日に第11回無形民俗文化財研究協議会が開催され、「無形文化遺産と防災―リスクマネジメントと復興サポート」をテーマに、4名の発表者と2名のコメンテーターによる報告・討議が行われました。
 2011年の東日本大震災をはじめ、近年多発する自然災害により多くの無形文化遺産が被災し、消滅の危機に晒されています。地震や津波、異常気象による豪雨、土砂災害など、大きな災害はいまや全国どこでも起こり得ます。文化財に対する防災意識が高まりつつも、無形文化遺産に関してはほとんど取り上げられていないのが現状です。そこで本協議会では、災害から無形文化遺産を守るためにどのような備えが必要になるのか、また、被災してしまった後にどのようなサポートができるのかについて、課題や取り組みを共有し、協議を行いました。
 第一の事例として岩手から東日本大震災における無形文化遺産の被災状況と復興過程について、第二の事例として愛媛から南海トラフ地震に関する地域災害史の調査や防災・減災体制のためのネットワークの構築についての発表がありました。続いて具体的な事例として、和歌山から仏像の盗難対策として行われた文化財の複製について、最後の事例には祭礼具の補修・復元のために必要な記録の取り方についての報告がありました。その後の総合討議では、阪神淡路大震災を経験した関西地域での取り組みについて、また海外の事例なども踏まえコメントがあり、それらをもとに、ネットワーク形成の必要性やリスクマネジメントに携わる行政的課題について議論されました。
 なお、本協議会の内容は2017年3月に報告書として刊行し、刊行後は無形文化遺産部のwebサイトでも公開する予定です。

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ケルンにおけるワークショップ「漆工品の保存と修復」の開催

応用編における素材見本帖作製実習
応用編における琉球加飾技法実習

 文化遺産国際協力センターは、国際研修事業の一環として本ワークショップを毎年開催しています。海外の美術館や博物館に所蔵されている漆工品はコレクションの重要な一部を構成しており、これらの作品を取扱うための知識や技術が必要とされています。本ワークショップでは、素材や技法の理解を通じて文化財の保存修復に寄与することを目指しています。
 今年度は平成28(2016)年11月30日~12月3日に応用編「漆工品の調査と保存・展示環境」を、12月6日~10日に応用編「呂色上げと加飾技法」をケルン市博物館東洋美術館にて実施しました。いずれも専門性をより追求した内容としてリニューアルし、世界各国より修復技術者が参加しました。前者のワークショップでは漆工品の保存と展示環境に関する講義、そして東洋美術館館長による収蔵庫見学に続き、実習では所蔵作品の調査を行いました。また、木地、漆、下地等の様々な素材に触れながら見本帖を製作しました。後者のワークショップでは沖縄県立芸術大学より琉球漆芸の専門家を講師に迎え、その歴史や技法についての講義のほか、実習では代表的な加飾技法を体験しました。また、漆塗りの最終段階である「呂色上げ」の実習を通じ、漆工品の塗り工程が理解できるように努めました。
 今後も受講生や関係者の意見・要望を採用しつつ、漆工品の保存修復に貢献し得るプログラムを構成し、ワークショップの開催を継続していく予定です。


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