研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『東文研ニュース』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


4月施設見学

実演記録室での説明(4月23日)

 文化庁長官官房政策課独立行政法人支援室 室長他3名

 4月23日、東京文化財研究所の視察のために来訪。企画情報部資料閲覧室、無形文化遺産部実演記録室、保存修復科学センター第2修復実験室、同分析科学研究室及び文化遺産国際協力センター国際資料室を見学し、各担当者が業務内容について説明を行いました。


ギメ美術館理事、ユベール・ギメ氏講演会

講演会の様子

 当研究所は2010年にフランスのギメ美術館と研究協力及び交流に関する覚書を交わしました。ギメ美術館は19世紀から20世紀初頭にかけてエジプト、さらにはインド洋を経て日本に至る諸国を訪れたエミール・ギメが、各国で収集した東洋の宗教に関連する文化財を所蔵、展示する美術館です。日本の仏教美術品も多く収蔵しており、フランスでは有数の東洋美術館となっています。同美術館の理事でエミール・ギメの曾孫にあたるユベール・ギメ氏が来日されるのを機会に、当所にて4月5日に講演会を開催し、「エミール・ギメ ウルトラマリンからギメ美術館へ」と題してお話いただきました。
 エミール・ギメの父親ジャン・バティスト・ギメ(1795-1871)は1826年に人工ウルトラマリンの製造法を発明します。ウルトラマリンはアフガニスタンなどで採取されるラピスラズリを粉砕して作られる青色顔料で、ヨーロッパでは輸入する以外に入手できず、金と等価に売買されるほど高価なものでした。ギメの発明によって科学的に製造されるようになった人工ウルトラマリンは瞬く間に普及し、1855年にはペシネ社という会社が創立され、1850年代には創業当初の100倍の生産量に及んだとされます。エミール・ギメの大旅行と美術品収集の資金はこれを元にしていました。
 人工ウルトラマリンは画家たちの絵画制作にも当然用いられ、ジャン・ドミニック・アングルなどの新古典主義の巨匠の作品にもその使用を認めることができるといいます。
 この講演はこれまで知られていなかったギメ家の歴史の一端が明らかにし、また19世紀ヨーロッパ絵画史におきた材料面での大きな変化についても指摘するものでした。90余名の方々にご参加いただき、盛会のうちに終了しました。


『震災復興と無形文化―現地からの報告と提言』の刊行

第6回無形民俗文化財研究協議会

 2011年12月16日に「震災復興と無形文化」をテーマに行った第6回無形民俗文化財研究協議会の報告書が3月末に刊行されました。協議会では東日本大震災以降の無形文化に関わる現地の状況や課題を、第一線で活動されている方々にご報告・討議いただきました。本報告書は、できるだけ多くの方に現地の状況を知っていただき、情報と課題を共有するために、その全記録をまとめたものです。報告書は協議会参加者全員に配布したほか、全文のPDF版が無形文化遺産部のホームページからダウンロードできるようになっています。
 なお、無形文化遺産部では今年度も引き続き「震災復興と無形文化」をテーマとして、秋頃に研究協議会を開催する予定です。


『文化財の保存環境』出版

東京文化財研究所編『文化財の保存環境』中央公論美術出版社

 平成 21 年 4 月 30 日に公布された「博物館法施行規則の一部を改正する省令」により、大学や短期大学の学芸員養成課程において、資料保存や展示環境に関する内容を扱う科目として「博物館資料保存論」(2 単位)が新設され、今年度より、資格取得のための必修科目となりました。東京文化財研究所では、この科目のためのスタンダードテキストとすべく表題の本を執筆・編集し、中央公論美術出版社より出版しました。本書では、文化財施設や屋外における文化財保存に関する基本的な知識や技術を扱っており、温湿度や空気環境といった自然科学的内容が中心ですが、人文系の学生にもわかりやすく、かつ本質を失わないよう、構成や内容を精査して編集しました。また、本書はすでに学芸員として現場で保存に携わっている方々にとっても実践的で有用なものであると自負しております。上記科目が必修となったことは、資料保存が文化財施設での重要な責務であることを再認識するものであり、長年保存環境研究に取り組んできた我々にとって、そのためのテキストを作成することは、大きな責務であり、また喜びでありました。皆様の学習や実践に役立てて頂ければ幸いです。


国際シンポジウム「江戸の絵師たち」での発表

ナショナル・ギャラリー(ワシントンD.C.)での発表

 2012年は日本より米国に桜が寄贈されてから100周年にあたります。これを記念して、毎年恒例の全米桜祭に合わせて、さまざまな日米交流事業が行われています。ワシントンD.C. のナショナル・ギャラリー、フリーア美術館およびサックラー美術館では、Colorful realm (伊藤若冲:釈迦三尊像・動植綵絵)、Hokusai: 36 views of Mt. Fuji (葛飾北斎:富嶽三十六景)、Masters of Mercy (狩野一信:増上寺蔵五百羅漢像)など大型の日本美術の展覧会が開催されています。これらの展覧会の関連企画として、国際シンポジウム「江戸の絵師たち」The Artist in Edo が4月13・14日にナショナル・ギャラリー視覚芸術高等研究所(CASVA-Center for Advanced Study in the Visual Arts)の主催で行われました。日本および欧米の日本美術史研究者13名による発表があり、江村知子は”Classicism, Subject Matter, and Artistic Status–In the Work of Ogata Kōrin”(「尾形光琳の古典主題について」)と題して発表を行いました。これまでの研究成果を国際的に発表するとともに、世界各国から参加していた研究者との交流を促進し、当所における調査研究活動への理解を深めることにつながりました。なお、本発表内容に基づく報告書は2013年度にCASVAより刊行される予定です。


to page top