研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『東文研ニュース』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


フランス・ギメ美術館と東京文化財研究所との研究協力及び交流に関する覚書の締結

前列左から、中野副所長、ジャック・ジエス館長、亀井所長、清水文化遺産国際協力センター長

 平成22年5月24日、フランス・ギメ美術館と東京文化財研究所の間で、研究協力及び交流に関する覚書が締結されました。覚書は、ギメ美術館と当研究所が、研究者の交流、学術的活動の共同実施、シンポジウムなどの共同開催及び学術資料の交換等を実施することにより、文化遺産の調査・研究、保存修復に関する研究協力及び交流を強化・促進することを目的としています。
 当日はギメ美術館からジャック・ジエス館長及び尾本館長顧問を当研究所にお迎えして署名式が行われ、当研究所職員が同席する中、館長と亀井所長により署名が交わされました。

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東京国立博物館における在外日本古美術品保存修復協力事業の成果展示

展示の樣子

 在外日本古美術品保存修復協力事業の成果の公開を兼ねて、5月11日(火)から23日(日)まで、東京国立博物館の平成館1階企画展示室において「特集陳列 海外の日本美術品の修復」と題し、日本へ里帰りさせて、国内の工房において平成21年度末に修復が完了した作品の展示公開を行いました。
 今回、展示を行った作品は、アシュモリアン美術館(イギリス)所蔵の歌舞放下芸観覧図屏風、ケルン東洋美術館(ドイツ)所蔵の和歌浦蒔絵将棋盤、市立ヴェルケ・メディジチ博物館(チェコ)所蔵の近江八景蒔絵香棚の3件です。この展示は毎年この時期に東京国立博物館の平成館において行っています。この展示を続けてゆくことで、少しでも多くの人に当研究所の国際協力事業の一端を知っていただくことができればと考えています。


フィルモン音帯の調査

フィルモン音帯

 フィルモン音帯とは、戦前の日本で開発された特殊なレコードです。形状は合成樹脂製のエンドレステープ(約13メートル)で、最長で36分間の録音が可能であったといわれています。無形文化遺産部は音帯5本を所蔵しています。音帯には専用の再生機が必要な上に、再生機の現存そのものが極めて少ないので、録音の内容確認すらこれまではかないませんでした。
 昨年度より、早稲田大学演劇博物館(演劇映像学連携研究拠点)と共同でフィルモン音帯の調査を行うことになりました。演劇博物館は再生機を動態保存しているので、音帯の再生音をデジタル化することも計画に含まれています。
 現在、無形文化遺産部と演劇博物館、それに個人蔵の音帯を加えると、延べで100本以上の現存を確認することができました。残念ながら、経年劣化が著しいために、再生が難しいものもも相当数ふくまれていますが、少しでも多くの音帯から再生音が得られるよう、現在、作業を進めているところです。

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厳島神社における外観塗装材料の劣化に関する調査

曝露試験用手板試料の作成
手板試料の設置

 保存修復科学センターでは、「伝統的修復材料及び合成樹脂に関する調査研究」プロジェクトの一環として、厳島神社における外観塗装材料の劣化に関する調査を行っています。厳島神社といえば青い海に浮かぶ鮮やかな朱色の社殿のコントラストの美しさで広く知られていますが、何分海水と接する厳しい環境下に建造物自体が曝されています。そのため、せっかく塗装した朱色の外観塗装材料の黒化現象が比較的短時間で発生したことが関係者の間で問題となってきました。そこで保存修復科学センターでは、この黒化現象の原因追求を実験室レベルで行うとともに、厳島神社工務所の皆さんと共同で、これまで厳島神社の外観塗装材料として用いられてきたと考えられる数々の歴代の外観塗装材料を再現した手板試料を作成し、5月13日に実際の社殿の床上と海面と接す柱に設置しました。これから少なくとも1年間かけて厳島神社の環境の中で曝露試験を行い、外観塗装材料の劣化の様子を観察していくことにします。 この成果を厳島神社社殿の外観塗装を少しでもよりよい状態で保守管理するうえで役立てたいと考えています。


ベトナム・タンロン遺跡保存事業 保存科学専門家ミッション派遣

移設中の気象観測装置
土壌水分センサーの設置作業
研修ワークショップの模様

 ユネスコ日本信託基金によるタンロン遺跡保存事業は、東文研とユネスコ・ハノイ事務所のパートナーシップ協定が4月より発効し、3年度にわたる包括的支援活動がいよいよ始動しました。 5月17日から22日まで、その初ミッションとして、保存科学分野を中心に専門家7名をハノイに派遣しました。今回はまず、発掘された考古学的遺構の保存措置検討のための基礎データ収集を目的に、既設気象観測装置の移転・改良、土壌水分センサーの新設などを行いました。また、出土遺物関係では、本格的保存方法確立までの間、一時的に水浸けされている木材遺物の保管方法に関する検討や、日本とは異なるベトナムの木材種に関する共同研究に向けた現地機関との協議等を実施しました。現場での作業は日越双方が協働して行い、作業の意義を正確かつ詳細に理解してもらうため、若手スタッフ対象の研修ワークショップも開催しました。
 歴史研究や管理計画策定支援といった各分野の事業活動についても、今後順次、実施に移していくこととなります。


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