研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『TOBUNKEN NEWS (東文研ニュース)』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


コンソーシアム諸国国際協力体制調査(オーストラリア)

オーストラリア連邦政府とのインタビュー
ニューサウスウェールズ州政府とのインタビュー

 文化遺産国際協力コンソーシアムの情報収集活動の一環として、今年度は先進国での国際協力体制調査を企画しており、その一つとして1月20日~30日にかけてオーストラリアでの調査を行いました。調査では、文化遺産国際協力に携わる行政組織から研究機関、民間コンサルタントまで、合計14の機関/個人に対してインタビューを行い、同国がどのような体制で文化遺産国際協力の案件生成や事業展開しているのかを調査しました。その結果、経済開発協力との連携や国内の若手育成など、日本と共通する課題をもつ一方で、関係者間の柔軟な情報連携ネットワークや明確な役割分担の存在など、日本との違いも明らかになりました。今後の日本の国際協力体制を考える上で大いに参考となる有益な情報を収集することができました。

国際シンポジウム『私の文化遺産再発見』の開催

ポスター展示の様子
パネリスト

 去る1月18日に、文化庁、朝日新聞社と文化遺産国際協力コンソーシアムの共催で、国際シンポジウム『私の文化遺産再発見』が開催されました。今回は、初の試みとして一般の方々を対象としたシンポジウムを企画し、文化遺産を身近に感じてもらうこと、そしてそのような身近な文化遺産を護るための国際協力活動の存在について知ってもらうことをねらいとしました。招待講演に作家の浅田次郎氏、新しいタイプの遺産の紹介としてドイツの産業遺産活用を手がけるIBA社プロジェクト代表のブリギッテ・ショルツ氏をお招きしたほか、日本が行っている様々な文化遺産国際協力の事例として、トヨタ財団の権修珍氏、東京文化財研究所文化遺産国際協力センター長清水真一より報告を行いました。また、日本の文化遺産国際協力活動を紹介するパネルの展示や、パンフレットの配布も行いました。当日は、400名近くの参加があり、多くの人々へメッセージを伝えることができました。

モンゴルでの文化遺産および国際協力に関する相手国調査の実施について

国立文化遺産センターでの布製品修復作業の様子
文学文化国家センターでのインタビューの様子

 2月26日から3月4日までの間に、文化遺産国際協力コンソーシアムの行う「協力相手国調査」の一環として、モンゴルでの文化遺産保護及び国際協力に関する情報収集を行いました。調査では、モンゴルの文化遺産保護に係わる主要な博物館、機関等あわせて12カ所で、それぞれ2時間から3時間程度のインタビューを行ってきました。モンゴルは1990年にそれまでの社会主義体制から民主主義体制に移行しましたが、その際に文化財行政にも大きな変化がありました。現在は、遊牧文化をはじめとするモンゴルの貴重な有形・無形の文化遺産を次世代に伝えていくための法整備や制度作りがようやく本格化してきたところであり、今後、人材育成や全国に広がる文化財の調査登録作業などが予定されているとのことです。

文化遺産国際協力コンソーシアム研究会「リビング・ヘリテージの国際協力」の開催

研究会の様子
ポスター展示の様子

 1月9日に文化遺産国際協力コンソーシアム研究会「リビング・ヘリテージの国際協力」が開催されました。この研究会は、文化遺産国際協力センターが事務局業務を受託している「文化遺産国際協力コンソーシアム(会長:平山郁夫前東京芸術大学学長)」が主催する研究会で、文化遺産国際協力に関する様々なテーマを取り上げ、検討するための研究会です。第2回目となる今回の研究会では、リビング・ヘリテージ、すなわち「生きた遺産」、「活かされている遺産」という切り口に注目し、100名を超える様々な分野の方にご参加いただきました。基調講演では、ユネスコ・バンコク事務所の文化担当アドバイザー R. エンゲルハルト氏に、リビング・ヘリテージという概念が登場した背景や、遺産を継承する地域の人々をも含めた文化遺産国際協力の重要性、日本の果たすべき役割について講演いただきました。また、事例紹介として昭和女子大学によるベトナムでの学際的な取り組みに関する事例や、三浦恵子氏による東南アジア各地でのリビング・ヘリテージの保全に関する事例紹介をいただきました。パネル・ディスカッションでは、現地で直面する課題や、変わりゆく価値観の中で何をどのように守っていくべきなのか、日本はいったいどのような協力が出来るのか、といった話題について、会場も含めた活発な議論がおこなわれました。文化遺産国際協力コンソーシアムでは、今後も定期的に研究会を開催し、文化遺産国際協力に携わる様々な関係者のネットワーク構築を支援していきます。

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