研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『TOBUNKEN NEWS (東文研ニュース)』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


バガン(ミャンマー)における煉瓦造遺跡の壁画保存に関する調査・研修

煉瓦造遺跡の屋根損傷状況の調査

 1月7日から1月18日までの日程で、ミャンマーのバガン遺跡において壁画の保存修復に関する研修とバガン遺跡群内No.1205寺院の壁画崩落個所の応急処置を行いました。文化庁から受託している文化遺産国際協力拠点交流事業における、最後の調査・研修となりました。
 研修では、蛍光X線分析装置を用いた壁画の顔料分析、UAV(ドローン)による寺院外観の撮影および写真を用いた3Dモデルの作成技術(SfM)に関する講義、壁画修復現場でのディスカッションを行い、ミャンマー文化省考古博物館局のバガン支局およびマンダレー支局の壁画・建築保存修復の専門職員4名の参加がありました。参加者からは、今回の研修内容を他の修復事業にも役立てていきたいとの意見が聞かれ、今後の活用が期待されました。視察を行った修復現場では、過去の研修で指導した修復材料の調整方法が実践されており、研修の効果の一端を実感することができました。また、No.1205寺院の壁画崩落個所についても、平成26年度から継続して行っている応急処置をすべて終えることができました。本事業での調査を通じて、屋根の雨漏りが壁画損傷の大きな原因の一つであることが検証され、その対策を講じることの重要性が再認識されました。今後のバガンでの壁画保存に、本事業での調査・研修成果が活かされていくことを期待しています。

ミャンマーにおける文化遺産保護協力活動(1)

修復材料調整の実習風景(No.1205寺院)

 煉瓦造遺跡の壁画保存に関する研修および調査 6月14日から6月23日の日程で、昨年より継続している壁画の保存修復に関する研修とバガン遺跡群内No.1205寺院の堂内環境調査、屋根損傷状態調査、壁画の崩落個所応急処置を行いました。研修は、ミャンマー文化省考古・国立博物館局(DoA)のバガン支局およびマンダレー支局の壁画修復の専門職員3名を対象に行いました。過去にバガン遺跡群内の寺院壁画に対して行われた修復事例を視察しながら、壁画の損傷の原因やその対処方法について討論を行った後、No.1205寺院において実際に壁画修復時の調査記録方法、修復材料の調整方法等についての実習を行いました。また、平成26年度の調査時に指摘されていた鳥獣や虫による汚損や破壊に対する対策として、シロアリの忌避剤や寺院入口の扉について指導し、DoA職員らと共に設置を行いました。研修生からは、今回の研修内容を他の修復事業にも役立てていきたいとの意見も聞かれ、今後の活用が期待されます。

壁画の保存修復に関するミャンマー人専門家の招へい研修

模擬壁画片を用いた修復実習

 文化庁委託文化遺産国際協力拠点交流事業の一環として、ミャンマー文化省考古・国立博物館局の職員である壁画修復専門家2名を、2015年3月9日から3月13日の期間で日本に招へいしました。研修では壁画の保存修復に関する講義・実習、修復工房の見学、寺院壁画の視察を行い、日本で行われている壁画修復について理解を深めていただきました。
 研修の前半では、日本の壁画(装飾古墳、古墳壁画、寺院の漆喰壁画、板絵など)の歴史、材質・技法的な特徴や修復事例に関する講義、古墳壁画修復に使用される材料・技術についての講義、および模擬壁画片を用いた修復実習を行いました。研修生は新たに知る材料や技術に対して強い関心を抱き、活発に質問を行っていました。また、絵画や書籍等日本の美術作品の修復を行っている修復工房を訪問して実際の修復作業を見学するとともに、修復における基本方針についてもお話を伺いました。研修の後半では京都・奈良を訪問し、法界寺、法隆寺、薬師寺に残る壁画の視察を行い、講義で紹介した壁画を間近に観察しながら壁画修復に関する意見交換を行いました。今後、本研修内容をミャンマーでの壁画修復事業に役立てていただけるよう、協力を続けていきたいと考えています。

日本美術技術博物館Manggha所蔵の日本絵画作品調査

日本美術技術博物館Manggha、クラコフ(ポーランド)
所蔵作品の調査風景

 日本の古美術品は欧米を中心に海外でも数多く所有されていますが、これらの保存修復の専門家は海外には少なく、適切な処置が行えないため公開に支障を来している作品も多くあります。そこで当研究所では作品の適切な保存・活用を目的として、在外日本古美術品保存修復協力事業を行っています。修復協力への要望が強く、その意義が認められると考えられた日本美術技術博物館Manggha所蔵の作品調査を行いました。
 同館は、クラクフ(ポーランド)に所在する東欧で有数の日本美術品を有する博物館で、アンジェイ・ワイダ監督らの発意による京都クラクフ基金や民間からの募金協力、日本・ポーランド両国政府の援助によって1994年に設立されました。同館のコレクションは美術品収集家のフェリクス・ヤシェンスキ(1861~1929)が収集した作品を中核とし、浮世絵をはじめとする日本絵画、陶磁器、漆芸品、染織品など多岐に渡っています。
 調査は2015年1月13日~23日及び2月3日~6日の2期に分けて行いました。1期目の調査で84点の絵画を調査し、美術史的な作品価値、修復の必要性と緊急性の観点から7点の作品を選出しました。2期目の調査では、その7点の作品について、修復に要する期間や適切な修復方法を検討するための詳細な調査を行いました。
 今後、調査した作品の修復計画を立案し、在外日本古美術品保存修復協力事業において修復を行う予定です。また、調査で得られた情報を同館の学芸員、保存修復担当者と共有し、作品の保存・展示に役立てていただきたいと考えています。

ミャンマーにおける文化遺産保護協力活動(2)

No.1205寺院における作業風景

 煉瓦造遺跡の壁画保存に関する調査および研修
 1月19日から1月26日の日程で、昨年より継続しているバガン遺跡群内No.1205寺院の堂内環境調査、屋根損傷状態調査、壁画の崩落個所応急処置を行いました。特に屋根の調査では雨漏り被害とシロアリ営巣被害の関連性が裏付けられ、今後DoA職員と協力して有効な対策を検討していく予定です。また、バガン考古博物館ではDoAバガン支局及びマンダレー支局の壁画修復の専門職員5名を対象に、壁画修復の調査記録方法についての研修を行いました。ミャンマーでは修復時の調査記録がほとんど行われていないため、研修を通して基礎的な調査記録方法を学び、その重要性を認識してもらいたいと考えています。

ワークショップ「日本の紙本・絹本文化財の保存修復」の開催

基礎編における絵画材料と技法についての講義
応用編における掛軸の応急修理についての実習

 本ワークショップは在外日本古美術品保存修復協力事業の一環として毎年開催されています。本年度は12月3~5日の期間で基礎編「Japanese paper and silk cultural properties」を、8~12日の期間で応用編「Restoration of Japanese hanging scroll」をベルリン国立博物館アジア美術館で行いました。
 基礎編では、文化財の材料としての紙・糊・膠・絵具、書画の制作技法、表具文化、取扱いについての講義、デモンストレーション、実習を行い、海外の修理技術者、学芸員、学生ら20名の参加がありました。
 応用編では装こう修理技術による掛軸の修復に関して、実習を中心にワークショップを行いました。何層もの紙や裂からなる掛軸の構造、掛軸修復のための診断、伝統的な刷毛や刃物の取り扱い、応急修理などについての講義、実習を行い、修理技術者、学芸員ら15名の参加がありました。
 近年、日本の装こう修理技術は海外の文化財修復分野でも注目を集めており、海外の絵画、書籍などにも応用されるようになっています。本ワークショップを通して、装こう修理技術の材料や技術に実際に触れる機会を提供することで、絵画、書籍等の有形文化財と、それらを守り伝えるための和紙制作技術や装こう修理技術への理解を広めてゆきたいと考えています。

国際研修「ラテンアメリカにおける紙の保存と修復」の開催

小麦糊準備の実習
裏打ち作業のデモンストレーション

 本研修は、文化財保存修復国際センター(ICCROM)のラテンアメリカ・カリブ海地域における文化遺産の保存プログラム(LATAM)の一環として、当研究所、ICCROM、メキシコ国立人類学歴史機構国立文化財保存修復機関(CNCPC-INAH)の3者協同で開催されました。11月5日から11月30日にかけて CNCPC-INAH で行われ、スペイン、キューバ、コロンビア、エクアドル、ブラジル、ペルー、アルゼンチン、メキシコの8カ国から、文化財修復の専門家9名の参加がありました。
 本研修では、日本の伝統的な紙、接着剤、道具についての基本的な知識と技術を教授し、それらを応用して各国の文化財の保存修復に役立てることを目的としています。研修の前半は、装潢修理技術に用いる材料、道具、技術をテーマに、日本人講師が講義、実習を行いました。本年度の研修では、修復作業時の安全性に直接つながる作業環境の整備、作業準備、道具の手入れ、片づけなどに重点を置いて実習を行いました。後半では、当研究所の事業「国際研修 紙の保存と修復」を修了した後、日本の技術を欧米の文化財修復に応用した経験のあるメキシコ、スペイン、アルゼンチンの講師がその活用事例を紹介し、実習を行いました。日本の装潢修理技術が、各国の文化遺産の保存修復に応用されることを期待して、今後も同様の研修を継続してゆく予定です。

ミャンマーの文化遺産保護に関する現地研修及び調査

バガヤ僧院での研修風景
壁画修復材料の調製に関する実習風景
シュエナンドー僧院の仏壇に用いられたガラスモザイク技法と損傷

 ミャンマー文化省考古・国立博物館局(DoA)をカウンターパートとする、文化庁委託「文化遺産国際協力拠点交流事業」の一環として、6月上旬から中旬にかけて現地研修及び調査を以下の通り実施しました。

 1)歴史的木造建造物保存に関する第2回現地研修
 2日から13日まで、マンダレー市内のDoA支局での座学と近郊のバガヤ僧院での現場実習を行い、DoA本・支局から建築・考古分野の職員8名とTechnological University (Mandalay)の教員・学生4名が参加しました。調査の下図となる略平面図の作成、床面の不陸や柱傾斜の測定、破損状態記録の手法などを実習し、班毎の調査成果を発表して今回研修のまとめとしました。一方、ミャンマーの木造文化財に共通する問題であるシロアリの被害について、専門家による調査を実施し、初歩的な講習も行いました。バガヤ僧院での蟻害は建物の上部にまで及んでおり、有効な対策を検討するため、研修生の協力によるモニタリング調査を開始したところです。
 2)煉瓦造遺跡の壁画保存に関する調査及び研修
 11日から17日まで、昨年より継続しているバガン遺跡群内No.1205寺院の壁画の状態調査や堂内環境調査を行い、壁画の損傷図面を作成しました。壁画の状態は比較的堅牢ですが、雨漏りに伴う壁画の崩落や空洞化、シロアリの営巣など今後の対策が必要な損傷が明らかになりました。また、バガン考古博物館では壁画の保存修復や虫害対策に関する研修を行い、DoAバガン支局の保存専門職員6名が参加しました。接着剤や補填材など修復材料に関する実習や、虫害対策に関する講義・実習については研修生らの要望が高く、今後もより応用的な内容で研修を継続していく予定です。
 3)伝統的漆工芸技術に関する調査
 11日から19日まで、バガン及びマンダレーで調査を行いました。バガンでは、軽工業省傘下の漆芸技術大学及び漆芸博物館の協力のもと、虫害調査とともに同博物館に所蔵される漆工品の構造技法や損傷に関する調査を進めました。その結果、応急的なクリーニングや展示保存環境の改善が必要と分かりました。マンダレーでは、ミャンマー産の漆材料に関する聞き取り調査のほか、漆装飾と併用されるガラスモザイク技法に関する調査を材料店と僧院において行いました。さらに、同地のシュエナンドー僧院でも、虫害調査と併せて、建物内外に施された漆芸技法について目視による観察調査を行いました。同僧院は内外部の殆どに漆装飾が施されていますが、紫外線や雨水等によって漆装飾の損傷が著しく進行していることが分かりました。

ミャンマー壁画修復専門家の日本招聘研修

研修風景(日本の古墳壁画修復事例の紹介)

 文化庁委託「平成25年度文化遺産国際協力拠点交流事業」の一環として、ミャンマー連邦共和国文科省に所属する壁画修復専門家2名を、2月3日から2月7日の間日本に招聘しました。招聘期間の前半には、壁画修復に関する研修として、日本の絵画書籍を修復する修復工房の見学、日本における壁画修復の事例についての講義や、日本の古墳壁画の修復に使用される材料や技術についての講義と実習を行い、招聘期間の後半には、京都・奈良にある寺院壁画等の視察を行いました。視察中は、講義で紹介した壁画を実際に間近で観察しながら、日本およびミャンマーにおける修復材料や技術について活発な意見交換が行われ、ミャンマー招聘者の壁画修復に対する意欲の高さがうかがわれました。今後も同国の壁画修復家らを招聘し同様の研修を行うことで、壁画修復に関する両国の協力体制をより強固なものにしてゆきたいと考えています。

国際研修「ラテンアメリカにおける紙の保存と修復」の開催

和紙を用いた補修方法についてのデモンストレーション

 ICCROMのLATAMプログラム(ラテンアメリカ・カリブ海地域における文化遺産の保存)の一環として、当研究所、ICCROM、INAH(国立人類学歴史学研究所、メキシコ)の3者協同で国際研修を開催しました。研修はINAHを会場として11月6日から11月22日にかけて行われ、アルゼンチン、ウルグアイ、エクアドル、スペイン、ブラジル、プエルトリコ、ペルー、メキシコの8カ国から、文化財修復の専門家9名の参加がありました。
 本研修では、日本の伝統的な紙、接着剤、道具についての基本的な知識を得るとともに、実際にそれらを使用して補強や補修、裏打ちの実習を行うことで、日本の装潢修理技術への理解を深めることを目的としています。研修の前半は、装潢修理技術に用いる材料、道具、技術をテーマに、日本人講師が講義、実習を行いました。研修後半では、装潢修理技術の研修経験のあるメキシコ、スペイン、アルゼンチンの講師によって、日本の材料、道具、技術が欧米の文化財修復に実際にどのように活用されているかが紹介され、実習を行いました。日本の装潢修理技術が、各国の文化遺産の保存修復に応用されることを期待して、今後も同様の研修を継続してゆく予定です。

ミャンマーの文化遺産保護に関する現地調査

パゴタ No.1205
気象観測装置の設置

 東京文化財研究所が文化庁から受託している「文化遺産保護国際協力拠点交流事業」の一環として、10月23日から11月1日にかけて、ミャンマー連邦共和国にてミャンマーの文化遺産保護に関する調査を行いました。今回のミッションでは、ミャンマーの美術工芸品のうち、寺院の壁画と漆製品に関する調査を行い、ミャンマー文化省考古・国立博物館図書館局の担当職員や、大学職員の方々に同行・対応をいただきました。
 バガンで行った寺院の壁画の調査では、日本とミャンマーとで調査修復を行う予定である仏教遺跡パゴダ、No.1205で堂内の壁画の撮影や損傷状態の調査を行いました。また、壁画の劣化に影響を及ぼす気象条件を知るための環境モニタリングとして、パゴダNo.1205の堂内外に温度湿度データロガーを、ミャンマー文化省考古・国立博物館図書館局バガン支局敷地内に気象観測装置を設置しました。今後、同支局員らと協力しながらデータの回収と解析を行い壁画の修復方針を検討してゆく予定です。
 マンダレーで行った漆製品に関する調査では、現在ミャンマーで製作されている漆製品の技法や材料についての見学や聞き取りを行うために、カマワザ、ガラスモザイク、乾漆や鉄鉢などの工房を訪問しました。また、バガンでは竹工芸材料の原材料調査と漆芸技術大学の付属博物館に収蔵されている古い漆製品の悉皆調査を行いました。今後も同様の調査を継続してゆく予定です。

ミャンマーの文化遺産保護に関する技術的調査:現地調査ミッションの派遣

木造僧院での実測調査
破損が進んだ寺院建築の一例
職人工房(鋳造)の視察
ヤンゴン国立図書館での調査

 東京文化財研究所が文化庁から受託している「文化遺産保護国際貢献事業(専門家交流)」の一環として、1月26日から2月3日にかけて、ミャンマー連邦共和国に専門家調査団を派遣しました。総勢17名からなる今回の調査団は建築・美術工芸・考古の各分野を調査対象とする3班で構成し、このうち建築と美術工芸を東京文化財研究所、考古を奈良文化財研究所がそれぞれ担当しました。この調査は、同国の文化遺産保護に関するわが国からの今後の協力の方向性を明確化することを目的として実施したもので、訪問先の各地ではミャンマー文化省考古・国立博物館図書館局の担当職員の方々に同行・対応をいただきながら、円滑に調査を進めることが出来ました。
 建築班では、バガンの煉瓦造遺跡群とマンダレーなどの木造僧院建築群の双方を対象に、破損状況や保存に影響を及ぼしている要因を確認するとともに、今後の保存修復に向けた課題を特定するため、現地機関関係者や職人への聞き取り調査等も行いました。これにより、本格的な建造物修理事業は久しく実施されておらず、保存状態に関する基本的な記録作成等も十分に行われていないことなどが判明しました。
 美術工芸班では、ヤンゴン、バガン、マンダレーの国立博物館・図書館、寺院、学校、職人工房を訪問し、壁画、金属文化財、漆工芸品、書籍経典を対象に、その修復状況、保存展示環境、保存修復に関わる人材育成について調査・聞き取りを行いました。海外研修等で得た知識をミャンマー国内で還元している様子が伺えましたが、機材資材の不足、体制の不備のために十分な保存修復措置が行われていないことが分かりました。
 このほか、首都ネピドーにおける文化省との協議等を通じて、同国の文化遺産保護体制に関する基本的情報の収集も行いました。いずれの分野においても文化遺産の保存修復に必要な技術・人材等の不足は明らかですが、現地側の向上意欲は高く、共同研究や研修等の事業を通じて技術移転や人材育成を行えば、その支援効果は大きいものと期待されます。

国際研修「ラテンアメリカにおける紙の保存と修復」の開催

補修方法のデモンストレーション
日本の装潢修理技術の活用例の紹介

 本研修は、ICCROMのLATAMプログラム(ラテンアメリカ・カリブ海地域における文化遺産の保存)の一環として、当研究所、ICCROM、INAH(国立人類学歴史学研究所、メキシコ)の3者協同で開催されました。10月17日から10月30日にかけてINAHで行われ、ベネズエラ、キューバ、チリ、エクアドル、ブラジル、ペルー、コロンビア、アルゼンチン、メキシコの9カ国から、文化財修復の専門家12名の参加がありました。
 本研修では、日本の伝統的な紙、接着剤、道具についての基本的な知識を得るとともに、実際にそれらを使用して補強や補修、裏打ちの実習を行うことで、日本の装潢修理技術への理解を深めることを目的としています。研修の前半は、装潢修理技術に用いる材料、道具、技術をテーマに、日本人講師が講義、実習を行いました。研修後半では、装潢修理技術の研修経験のあるメキシコ、スペイン、アルゼンチンの講師によって、日本の材料、道具、技術が欧米の文化財修復に実際にどのように活用されているかが紹介され、実習を行いました。日本の装潢修理技術が、各国の文化遺産の保存修復に応用されることを期待して、今後も同様の研修を継続してゆく予定です。

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