研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『TOBUNKEN NEWS (東文研ニュース)』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


インドネシア・プランバナン遺跡復興支援第3次調査―文化庁「文化遺産国際協力拠点交流事業」―

ガルーダ祠堂 解体の始まった頂部の調査
東京文化財研究所とジョグジャカルタ特別州考古遺跡管理事務所のメンバー

 文化遺産国際協力センターでは、2006年5月27日のジャワ中部地震で被災した世界遺産プランバナン遺跡の復興支援事業への協力を行なっています。日本の草の根文化無償の支援によるガルーダ祠堂の足場の架設工事の完了を受けて、2007年10月22日から11月4日にかけて第3次ミッションを派遣しました。今回の調査では、部分解体が始まったガルーダ祠堂を中心に、頂部の被害状況と内部構造の確認、過去の修復に関する文献収集調査および聞き取り調査を行ったほか、ガルーダ祠堂とほぼ同じ構造をもつハンサ祠堂を対象に、構造体の振動特性の究明のための地震動計によるモニタリングを開始しました。これらの調査はジョグジャカルタ特別州考古遺跡管理事務所、ガジャマダ大学との協力を得て実施されました。
 現在は、調査に先だって作成された祠堂各面の幾何補正画像を活用し、各石材の破損状態、補修方法と解体範囲を図示し、修理事業費の積算が可能な水準での設計資料を整える準備を進めています。さらに、祠堂の構造特性に関する解析結果に基づき構造補強方法を検討の上、修理設計案を本年度中に提示していく予定です。

中央アジアにおける文化財保護施策に関する国際会議にむけた現状調査

タシケントでの文化財保護制度に関する聞きとり調査

 文化遺産国際協力センターでは、文化財保護施策に関する国際研究の一環として、本年度は中央アジアを対象とした研究を行っています。9月9日から16日には、中央アジアにおける文化財保護に関する現状調査と、3月に中央アジアで実施を予定しているアジア文化遺産国際会議の準備のため、タシケント(ウズベキスタン)とアルマティ(カザフスタン)を訪れ、現地政府やユネスコの関係者と面会し、情報収集およびニーズアセスメントのための協議を行いました。1991年のソビエト崩壊による独立以降、中央アジアの各国では、制度から保存の現場まで幅広い問題に直面しています。今回の調査では、考古遺跡の保存と管理活用、遺物の保存環境、人材育成など、現地で問題視される具体的な課題が示されるとともに、日本および中央アジア諸国の文化財関連分野の専門家による国際会議を実施し、今後の情報交換や技術移転のため、協力していくことで合意が得られました。

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