研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『東文研ニュース』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


第11回バーミヤーン遺跡保存専門家会議

アーヘン工科大学での講義

 東京文化財研究所と奈良文化財研究所は、UNESCO、そして国内外の研究機関と連携して、アフガニスタンにおける文化遺産の保護事業を長年牽引してきました。とくにバーミヤーン遺跡の保護活動は、ユネスコ文化遺産保存日本信託基金「バーミヤーン遺跡保存事業」を核として、アフガニスタン、そして各国の研究機関が協力して実施されており、また東京文化財研究所の運営費交付金による「西アジア諸国等文化遺産保存修復協力事業」においても最も重点的な事業となっています。
 遺跡の保存と活用の方針を議論するための専門家会議が毎年開催されていますが、本年は、ユネスコとアーヘン工科大学との共催で、12月10日から11日にかけて、アーヘン(ドイツ)で開催されました。アフガニスタン、ドイツ、フランス、イタリアの各国、およびUNESCO、ICOMOS、ICCROM、UNOPS等国際機関から専門家が参加し、日本からは、東京文化財研究所、奈良文化財研究所、武庫川女子大学から専門家が参加しました。会議では、壁画の保存や大仏の破片の保護といった継続的な課題に加えて、谷全体に分布する遺跡の現状、道路や空港整備計画についても報告が行われました。さらに、東京文化財研究所と武庫川女子大学が研究協定を結び実施した博物館施設構想についても本会議で青写真を提示し、観光開発と長期的な遺跡保護の両立にむけて、実践的な議論へと進展しました。

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第10回バーミヤーン遺跡保存専門家会議

「バーミヤーン遺跡保存事業」専門家会議

 東京文化財研究所は、UNESCO、そして国内外の研究機関と連携して、アフガニスタンにおける文化遺産の保護事業を長年牽引してきました。とくにバーミヤーン遺跡の保護活動は、ユネスコ文化遺産保存日本信託基金「バーミヤーン遺跡保存事業」を核として、アフガニスタン、そして各国の研究機関が協力して実施されています。あわせて、このバーミヤーン遺跡の保護活動に関し、各国の専門家間で成果を共有し、保存と活用の方針を議論するための専門家会議を毎年開催しております。本年は、東京文化財研究所とユネスコとの共催で、12月6日から8日にかけて、東京文化財研究所でこの専門家会議を開催しました。
 日本、アフガニスタン、ドイツ、フランス、イタリアの各国、およびUNESCO、ICOMOS、ICCROM等国際機関から専門家が参加しました。壁画の保存や大仏の破片の保護といった継続的な課題に加えて、谷全体に視野を広げ、広域に分布する考古遺跡の調査や景観の保護の問題、博物館や観光面でのインフラ整備に関しても議論しました。

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国際シンポジウム「大仏破壊から10年 世界遺産バーミヤーン遺跡の現状と未来」

シンポジウムにおける討論
シンポジウムにおける討論

 東京文化財研究所文化遺産国際協力センターは、文化遺産保護分野における日本の協力やその方向性を考えるために、アジアの各地域を対象として国際会議を実施しております。本年は、アフガニスタンにおけるバーミヤーン大仏の破壊から10年という節目を迎えることから、日本をはじめ、各国が協力して実施している「バーミヤーン遺跡保存事業」の成果を総括し、またその活動を広く一般に公表すべく、国際シンポジウムを開催しました。シンポジウムは、12月9日(奈良文化財研究所と共催、於東京国立博物館平成館大講堂)、および12月11日(奈良文化財研究所、龍谷大学アジア仏教文化センター・龍谷ミュージアムと共催、於龍谷大学アヴァンティ響都ホール)に開催されました。
  これまでは、破壊された大仏の再建問題や大崖の仏教石窟に関心が集中していましたが、近年の開発にともなう谷全体の遺跡の保護や景観保護についても問題を提起し、バーミヤーン遺跡保護における課題と今後の日本の国際協力について皆さんと考える有意義な機会となりました。

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文化庁「外国人芸術家・文化財専門家招へい事業」による、アフガニスタン情報文化大臣の招へい

東京藝術大学におけるバーミヤーン壁画片の保存修復成果見学

 東京文化財研究所は、文化庁による「外国人芸術家・文化財専門家招へい事業」の枠組みにおいて、アフガニスタン・イスラーム共和国より、サイイド・マフドゥム・ラヒーン情報文化大臣を、12月4日~8日にかけて招へいしました。
 ラヒーン大臣は、12月5日、中川正春文部科学大臣を表敬訪問し、これまでの文化遺産保存に対する日本の協力に感謝の意を述べるとともに、今後の継続的な日本の支援を求めました。6日には、「バーミヤーン遺跡保存事業専門家会議」に参加し、日本および各国が実施するアフガニスタンの文化遺産保護活動の最新の成果に関して意見交換を行ったほか、東京藝術大学が実施したバーミヤーン仏教石窟壁画片の保存修復成果を見学しました。さらに、日本を代表する木造建築遺産である日光東照宮において、日光社寺文化財保存会の協力を得て修理現場を見学しました。
 以上の活動を通じて、ラヒーン大臣から日本が行う文化遺産保存修復協力に対して、きわめて高い評価と賛辞を得ることができました。同大臣の招へいは、未だに内戦が続くアフガニスタンにおける今後の文化面での復興にむけて、日本との協力関係をさらに緊密にする機会となりました。

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アジャンター壁画の保存修復に関する調査研究事業~第5次ミッション報告

壁画の状態調査(アジャンター第2窟右祠堂)
黒色物質の試験的なクリーニング
(アジャンター第2窟右祠堂右壁)

 東京文化財研究所とインド考古局は、文化庁委託「文化遺産国際協力拠点交流事業」および運営費交付金「西アジア諸国等文化遺産保存修復協力事業」の枠組みのもと、アジャンター壁画の保存修復に関する共同研究を行い、これに必要な知識の共有と技術交流を目指しています。
 アジャンター壁画は、基岩の亀裂からの浸水や、生物被害、人為的損傷に加え、過去の修復に起因する色調変化や彩色層の劣化といった多くの問題を抱えています。なかでも顕著なものとして、コウモリの糞尿による黒色化・白色化、そして壁面に塗布されたニス(シェラック、PVAC)の黄色化・暗色化が挙げられますが、効果的な保存修復手法が確立されていないのが現状です。このような課題に対処するために、今回の第5次ミッション(平成22年11月14日~12月4日)では、第2窟壁画を対象とした試験的なクリーニングを実施しました。昨年度までの科学分析およびドキュメンテーションの蓄積をもとに、インド人保存修復専門家と共同で、適切な保存修復方法の検討作業を行いました。

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アジャンター壁画の保存修復に関する調査研究事業~第4次ミッション報告

アジャンター第2窟における高精細写真撮影
アジャンター第9窟における高精細写真撮影

 東京文化財研究所とインド考古局は、文化庁委託「文化遺産国際協力拠点交流事業」および運営費交付金「西アジア諸国等文化遺産保存修復協力事業」の枠組みのもと、アジャンター壁画の保存修復に関する共同研究を行い、保存修復に関する知識の共有と技術交換を目指しています。
 アジャンター壁画は、基岩の亀裂からの浸水や、生物被害、人為的損傷に加え、過去の修復に起因する色調変化や彩色層の劣化といった多くの問題を抱えています。このような問題に対処するためには、膨大な量の壁画の状態を詳細に把握・分析することが必要ですが、そのための効果的なドキュメンテーション手法は未だ確立されていないのが現状です。
 そこで昨年度より、アジャンター石窟では初の試みとして、高画素デジタルカメラを使用して壁画の状態を高精細写真で記録する作業を開始しています。今回の第4次ミッション(平成22年9月8日~10月2日)では、第2窟および第9窟の壁画を対象に、高精細写真記録および色彩計測をインド人専門家と共同で行いました。得られたデータは今後、インド考古局と協力しながら、適切な壁画保存修復方法の確立にむけた検討の基礎データとして活用していきます。

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トルコ・カッパドキア石窟教会壁画の保存修復に関する基礎調査

ギョレメ国立公園全景
修復されたエル・ナザール教会

 文化遺産国際協力センターでは、「西アジア諸国等文化遺産保存修復協力事業」の一環として、国際的な保存修復支援が予定されているトルコ・カッパドキアに点在する石窟教会壁画の基礎調査を6月19日~29日にかけて行いました。ギョレメ国立公園からチャヴシン、ゼルヴェの谷、オルタヒサル地域一帯を中心に、9世紀~13世紀頃の壁画が残る石窟教会等の遺構約20件を対象に保存状態を調査しました。現地専門家や、ユネスコが招聘した国際保存修復専門家とともに、壁画そのものに加えて、それが描かれた石窟自体の岩盤や地質の問題についても調査を行うと同時に、将来的なモニタリングの方法などについて議論し、今後の保存修復に向けた助言を行いました。

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アジャンター壁画の保存修復に関する調査研究事業~第3次ミッション報告

第2窟における三次元測量
コウモリの排せつ物を起因とする付着物の洗浄作業

 東京文化財研究所とインド考古局は、文化庁委託「文化遺産国際協力拠点交流事業」および運営費交付金「西アジア諸国等文化遺産保存修復協力事業」の枠組みにおいて、アジャンター壁画の保存にむけた共同研究を行っています。
 平成21年11月~12月に派遣された第3次ミッションでは、コウモリの排せつ物による害、過去に用いられたニスの黄化による色調変化や彩色層の亀裂、浮き上がりといった問題の解決に取り組み、インド考古局の専門家とともに壁画の試験的な洗浄を行いました。
 また、壁画の保存にむけたデジタルドキュメンテーションとして、同志社大学と共同研究契約を結び、第2窟、第9窟の現状図面作成を目的とした三次元測量を共同で行いました。
 このような保存修復・計測作業をインド人専門家と共同で行うことで、文化財保存に関する知識の共有、技術交換を行い、人材育成と技術移転を目指しています。

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アジャンター壁画の保存修復に関する調査研究事業~第2次ミッション報告

アジャンター石窟第2窟における高精細写真撮影
アジャンター石窟第2窟における高精細写真撮影

 東京文化財研究所とインド考古局は、文化庁委託「文化遺産国際協力拠点交流事業」の枠組みにおいて、アジャンター壁画の保存にむけた共同研究に取り組んでいます。アジャンター壁画は、玄武岩の亀裂を伝って洞窟内に浸入した雨水による害、コウモリの糞尿による害(白色化、黒色化)、人為的な要因による損傷に加え、過去の修復に用いられたシェラック(ワニス)の黄化による色調変化や彩色層の亀裂と浮き上がりといった問題を抱えています。
 平成21年9月に行った第2次ミッションでは、壁画の保存状態を詳細に記録するため、第2窟内部壁画全面を対象とした「高精細デジタル写真記録」、「色彩計測」を行いました。インド人専門家と共同で撮影・計測作業を行うことで、文化財保存におけるデジタルドキュメンテーションに関する知識の共有、技術交換を目指しています。

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アジャンター遺跡の保存修復にむけた専門家会議

「アジャンター遺跡の保存修復にむけた専門家会議」案内

 東京文化財研究所とインド考古局は、平成20年度より文化庁委託事業「文化遺産国際協力拠点交流事業」の枠組みの中で、インド・アジャンター遺跡の保存に向けた共同研究に取り組んでいます。本専門家会議は、アジャンター石窟とその壁画保存に携わる専門家を招き、シルクロード沿いの地域における仏教石窟と壁画の保存という共通の課題に向けて、保存修復を通じた日本の国際貢献を含めて議論を交わすためのものです。
 インド考古局からは、クシャル・シン・ラナ科学部長(文化庁外国人芸術家・文化財専門家招へい事業による)、アジャンター監督官を務めるV.S.ラガヴェンドラ・ラオ氏を招き、インドにおける文化財保存の全体像と、アジャンター遺跡の保存に向けた現状の課題について、それぞれ講演いただきました。また、東京文化財研究所が平成20年2月から3月にかけて派遣した第1次ミッションの報告も合わせて行い、今後の保存修復にむけた意見交換を行いました。

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アジャンター石窟壁画の保存修復に関する調査研究事業-第1次ミッション報告

携帯型蛍光X線分析計を用いた顔料の非破壊分析
彩色の試料採取

 東京文化財研究所は、文化遺産国際協力拠点交流事業「東京文化財研究所とインド考古局との壁画保存に関する拠点交流事業」における第1次ミッションを、平成21年2月12日から3月15日にかけて派遣しました。
 アジャンター石窟には、前期は紀元後1世紀まで、後期は5世紀後半から8世紀頃までに描かれた、貴重な仏教壁画が数多く残されています。しかし壁画を保存する上では、石窟が開鑿されている岩盤の強度の問題、雨水などの浸入、こうもりの糞や油煙に起因すると思われる黒色付着物など、バーミヤーン石窟壁画にも共通する様々な問題が残されています。これらの問題に対処するため、第1次ミッションでは、インド人保存修復家と共同で調査を行い、保存修復材料および技術に関する知識・経験を共有し、人材育成・技術移転を図ることを目指しました。
 具体的な調査内容としては、壁画の保存状態の記録作業(写真撮影、石窟の簡易測量、状態調査)、環境調査のための温湿度計(データロガー)の設置、壁画の編年および技法材料に関する調査(試料採取、赤外線・紫外線写真撮影、携帯型蛍光X線分析計を用いた非破壊分析)、そしてコウモリの糞尿害の調査を実施しました。

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アジャンター石窟壁画の保存修復に向けた調査研究事業に関する合意書の締結

アジャンター石窟外観
合意書調印式(ASI、ニューデリー)

 平成20年11月21日、インド・ニューデリーにおいて、東京文化財研究所とインド考古局(ASI)は、アジャンター石窟壁画の保存に向けた調査研究事業の合意書を締結しました。
 アジャンター石窟には、前期は紀元前1世紀から紀元後2世紀にかけて、後期は5世紀後半から6世紀にかけての貴重な仏教壁画が数多く残されています。しかしながら、岩盤自体の構造的な問題、雨期の大量の冠水による損傷、こうもりの排せつ物や煙によると考えられる黒色付着物などが原因で、劣化が進んだ状態にあります。
 このような問題に対処すべく、東京文化財研究所は、文化庁の委託による「文化遺産国際協力拠点交流事業」の枠組みにおいて、平成20年度から平成22年度にかけて、アジャンター第2窟及び第9窟を対象とした調査を実施します。保存修復のための技術および材料に関する知識、専門的技術、経験をインドと日本の専門家が交換・共有することで、双方の技術と能力の向上を目指します。

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