研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『TOBUNKEN NEWS (東文研ニュース)』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


特別史跡・キトラ古墳壁画の保存修復

天井作業風景

 東京文化財研究所では文化庁からの受託事業で、「特別史跡キトラ古墳壁画保存修復事業」を行っており、その中で、石室内の定期点検や壁画の取り外しなどを進めています。
 キトラ古墳では、側壁の四神および十二支神をすでに取り外し、天井・星宿図のみが現地に残っています。その天文図で、7月に一部のはく落が確認されました。その後の調査で、はく落の危険性が高い箇所が数十か所にのぼることが明らかとなるなど、著しく悪い状態です。そこで、東京文化財研究所では、落下の危険性が極めて高い部分から順次取り外し作業を進めています。

国宝 高松塚古墳壁画の保存修復

東第一石(男子群像)の表打ち作業
東第二石(青龍)の表打ち除去

 2007年4月から開始した高松塚古墳の石室解体も、6月26日に西第一石(男子群像)が解体され仮設修理施設へ移動したことで、残すは床石のみとなりました。東京文化財研究所では、高松塚古墳壁画の保存に関して、壁画養生・修復、環境・生物調査の分野で寄与しています。
 6月には、7日:東第二石(青龍)、14日:西第二石(白虎)、15日:南壁石、22日:東第一石(東男子群像)、26日:西第一石(西男子群像)の順に解体・移動が行なわれました。壁画養生・修復班では、安全に壁画を移動できるように、石間に被っている漆喰を取り外し、化繊紙を用いた画面の表打ちを行ないました。表打ちは、カビ発生のリスクを低減するように、材料や作業時期を考慮して行いました。また石が搬出される都度、古墳内では、環境・生物調査班が微生物の調査を行ない、壁画周囲の湿度を一定に保つための囲いをとりつけるなどの作業を行ないました。
 仮設修理施設にて受け入れた石材は、写真撮影・サンプリング・クリーニングを行なったうえで修理作業室に移動します。その後、画面表打ちの除去を行ったうえで、壁画面の状態を観察・記録し、これから長い期間をかけて行なう壁画修理に必要な情報収集を行なっています。

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